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第14話:今更そんな事を言われましても…

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執事が言っている意味がよくわからず、ついグレイズと目を見合わせた。

「アンリの家にマッキーノ侯爵と令息が来ているとは、どういうことだ?」

「それは私にも…とにかく、早くお戻りくださいとの事です」

一体何の用かしら?とにかく一度戻らないと…

「グレイズ、私は一度家に帰るわ。それじゃあね」

そう言って帰ろうとしたのだが…

「待て、俺も一緒に行く。なんだか嫌な予感がする…」

嫌な予感?もしかして、今更私が付きまとっていた時の事を蒸し返し、苦情を言いに来たのかしら…まさかね…

「アンリ、何をボーっとしているんだ。行くぞ」

グレイズに手を掴まれ、そのまま馬車に乗り込む。一体どんな話をされるのかしら…なんだか気が重いわ。でも、グレイズも一緒だし、まあ何とかなるか。

屋敷に着くと、お兄様が待っていた。

「アンリ、遅いぞ!すぐに客間に向かえ。グレイズ、送ってきてくれたのか。ありがとう」

お兄様が外で待っているだなんて、よほど重要な話なのだろう。急いで客間へと向かう。

「お待たせして申し訳ございませんでした」

客間に入ると、確かにマッキーノ侯爵とエディソン様、さらに両親も待っていた。急いで開いている席に、グレイズと一緒に座る。なぜか私の腰に手を回し、ぴったりとグレイズがくっついている。一体どうしたのかしら?

「マッキーノ侯爵殿、エディソン殿、ご覧の通り、アンリとグレイズはこの様に仲睦まじく過ごしております。それにエディソン殿は、ずっとアンリを嫌い避けていらしたではありませんか?確かにアンリの行動は、目に余るものがございました。その点に関しては、お詫び申し上げます。ですので、どうかお引き取り願えませんでしょうか」

お父様が訳の分からない事を言って、マッキーノ侯爵とエディソン様に頭を下げている。ただ1つわかった事は、私の行動をお詫びし、どうか許してやって欲しいと言っているみたいだ。ここは私も謝っておいた方がよさそうね。

「マッキーノ侯爵様、エディソン様、1年半もの間、自分の身分もわきまえずエディソン様に付きまとってしまい、申し訳ございませんでした。私はこの通り、グレイズと婚約いたしました。ですので、もう二度とあなた様にご迷惑をお掛けするつもりはございませんからご安心ください」

スッと立ち上がり、私も2人に頭を下げた。

「アンリ嬢、今日は君のかつての行いを戒めるために、伯爵家にお邪魔した訳ではないのだよ。実はアンリ嬢には、エディソンの妻として、我がマッキーノ侯爵家へ輿入れして欲しいと思ってね…」

えっ?今なんて言った?私がエディソン様の妻として、輿入れしてきて欲しい?一体この人は何を言っているのだろう。訳が分からず、エディソン様の方を見ると、なぜかにこやかな表情でこっちを見ていた。

「あの…おっしゃっている意味がよく分からないのですが。私は先日、ダニルーディン伯爵家の嫡男、グレイズと婚約いたしました。ですので、その様なお話はお受けできません。申し訳ございません」

「コラ、アンリ。勝手に話しを進めるな!申し訳ございません、マッキーノ侯爵。ただ…今アンリが申し上げた通り、娘は既にグレイズと婚約し、皆にも報告済みです。ですので、どうか…」

「その事は分かっている。ダニルーディン伯爵家には、通常の5倍、いいや、10倍の慰謝料を支払おうと思っている。グレイズ殿、後ほどお宅にも伺わせてもらうよ」

この人は何を言っているの?慰謝料を支払えばいいと言うものでもないわ。それに、私はずっと、エディソン様に嫌われていたのよ!それなのに、どうして?まさか、今まで散々エディソン様に付きまとって来たのに、あっさりとグレイズと婚約したことが気に入らないのかしら?でも、わざわざそんな嫌がらせをする必要もないし…

「マッキーノ侯爵令息様、1つお伺いしたい事がございます。アンリがあなた様に付きまとっていた1年半、明らかにアンリをあしらい、嫌っておりましたよね。それなのに、どうしてアンリと結婚したいとお考えなのですか?」

グレイズも私と同じ疑問を抱いたのか、エディソン様に問いかけている。

「僕はずっと、アンリ嬢が好きだったんだ。初めて会った6年前からずっとね…2年前、君が貴族学院に入学してきた時は、嬉しくてたまらなかった。すぐに君を僕のものにしようと思ったのだが、君があまりにも僕に夢中になるから、少し様子を見ていたんだ。それなのに君は、急に僕の元に来なくなったと思ったら、グレイズと婚約してしまうなんてね…でも、僕はずっと君が好きだったんだ。だから、このまま諦めるなんて出来ないよ」

この人は何を言っているの?6年前に会っている?ずっと好きだった?

「あの…申し訳ございません。6年前にエディソン様にお会いした記憶がなくて…それに、エディソン様は間違いなく、私をあしらっておられました。それなのに、好きだったと言われても…」

エディソン様は私の事を、明らかに嫌っていた。私が一生懸命入れた刺繍も受け取ってくれなかったし、ダンスだってほとんど断られていた。それに、私が令嬢たちから暴言を受けても、笑顔で聞き流していたし…はっきり言って、愛されている要素は1ミリもない。

「僕はね、君のコロコロ変わる顔を見るのが好きだったんだ。嬉しそうに僕の元に飛んできたと思ったら、僕に断られると露骨に悲しそうな顔をする姿とか。それに僕の為に、一生懸命努力してくれる姿も好きでね。ずっと僕の事を考えていて欲しくて、あえて冷たくしていたんだ。でも…ちょっとやりすぎたみたいだね。ごめんね、これからは、いっぱい甘やかしてあげるから。それから6年前に僕たちは、丘の上で何度も会っているよ」

この人は何を言っているのだろう…私が悲しむ顔を見て喜んでいたって事?ヤダ…気持ち悪い…

それに6年前に丘の上で会っているですって…もしかして…
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