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第7話:学院主催の夜会に参加します【後編】

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結局グレイズと3曲踊ったところで、皆の元に戻ってきた。

「あら皆、早速お料理を食べているの?私も食べたいわ。それに、喉も乾いたし」

ダンスを踊ったため、喉もカラカラだ。

「それなら、俺が料理と飲み物を持ってきてやるよ。アンリは座って待っていろ」

グレイズはそう言うと、お料理が並んでいるところへと歩き出した。

「待ってグレイズ、私も一緒に行くわ」

急いでグレイズを追いかける。

「お前、ダンスで疲れているのだろう。待っていればいいのに」

「あら、これくらい平気よ。それに、自分で好きなお料理を選びたいし」

「お前は食いしん坊だな。俺が持ってくるのが待ちきれないのか」

そう言って笑っているグレイズ。こいつ!失礼にも程があるわ。

「ちょっとグレイズ、誰が食いしん坊よ!私はただ、あなた1人に取りに行かせるのは可哀そうだと思っただけよ」

「はいはい、そりゃどうもありがとう。ほら、お前は何が食べたいんだ?取ってやるよ」

文句を言っている間に、お料理の前に来ていた。

「自分で取るからいいわよ!」

グレイズからお皿を奪い取ると、早速お料理を入れていく。どれも美味しそうね。色々な料理をたくさん食べたくて、少しずつ料理を取り分けていく。

「アンリ嬢、このお料理も美味しいんだよ」

「まあ、そうなのですね。ご親切に教えていただき、ありがとうございます。早速頂きますわ」

親切な人が、美味しいお料理を教えてくれたので、早速そのお料理もお皿にいれた。

ん?この声は…

ゆっくり声の方を振り向くと、美しい笑顔を浮かべたエディソン様と目があった。どうして彼がここにいるのだろう…

そう思ったものの、夜会の名物の1つはお料理だと令嬢も言っていた。なるほど、エディソン様も意外と食いしん坊なのね。あれだけ付きまとっていたのに、知らなかったわ。

「アンリ嬢、こっちのサラダは特製のソースが掛かっていて、とても美味しいんだよ。それからマリネも。入れてあげるね」

なぜか私にお料理を入れてくれるエディソン様。

「あの…ありがとうございます。もうお皿がいっぱいになったので、私はこれで失礼いたします」

エディソン様に一礼すると、その場を後にする。

「おい、アンリ。今マッキーノ侯爵令息に話しかけられていなかったか?大丈夫か?」

心配そうに私の元にやって来たのは、グレイズだ。

「ええ…大丈夫よ。ただ私に美味しいお料理を教えてくれただけだから。もしかして私、やっぱり食いしん坊だと思われているのかしら?」

「あぁ…確かにお前、目を輝かせて料理を入れていたもんな…どれだけ食い意地がはっているんだよって、俺ですら少し引いてたくらいだし…」

何ですって!私、そんな風に見えていたの?恥ずかしすぎるわ…

がっくり肩を落とす私に

「気にするな。さあ、食おうぜ。お前の為に、飲み物も持ってきてやったぞ。どうせ後でお替りに行くんだろ?大丈夫だ、誰もお前の食い意地の事なんて気にしていないから」

と、笑いながら暴言を吐くグレイズ。彼なりに慰めてくれているのだが、全然慰めになっていない。そもそもこいつ、私の事を女として見ているのかしら?

ジト目でグレイズを睨む私を、隅に置いてあるイスに座らせた。
もう、こうなったらいっぱい食べてやるんだから!ヤケになった私は、次々と料理を平らげていく。

「おい、アンリ。いくら腹が減っていたからって、飢えた豚みたいに貪るのは止めろ。さすがに令嬢として問題だぞ」

「うるさいわね!グレイズ、食べないなら、私がもらうわよ」

「おい、俺の料理を取るな。全くお前は…」

グレイズに呆れられてしまった。その後も何度もお料理を取りに行き、お腹がはちきれるのではないかと言うほどの料理を堪能した。

「さすがに食べ過ぎたわ…ちょっと夜風に当たって来る…」

「おい、1人でウロウロするな。俺も行く」

私に付いて来たのは、グレイズだ。別に1人でも行けるんだけれど…
そんな思いを抱きながらも、せっかくなので一緒に中庭へとやって来た。夜の貴族学院の中庭は、今日の為にライトアップされていて、とても素敵だ。

「ねえ、グレイズ、もっと奥に行ってみましょう」

「おい、あんまり遠くに行くなよ!」

どんどん奥に行く私に、ブーブー文句を言いながらついてくるグレイズ。文句を言うなら来なくてもいいのに…でも、こうやって私を心配して付いて来てくれる優しいところも、結構好きなのよね…て、何を考えているのかしら?恥ずかしい!


1人で赤くなっていると、誰かの声が聞こえてきた。どうやら男性の声の様だ。こんなところで何をしているのかしら?

声の方に向かうと、そこにはエディソン様とネリア様がいた。

「だから、僕は君とは婚約できないと言っているだろう?」

「どうして?私の何が気に入らないの?ねえ、お願い。私はエディソンが好きなのよ」

必死にネリア様が、エディソン様に縋りついている。これは…まさかの修羅場?

「悪いが、僕には心から愛する女性がいるんだ。僕はその子と婚約しようと思ている。僕が貴族学院を卒業すると同時に、彼女に婚約を申し込むつもりだ。だから、君とは結婚できない。君の両親にも話はしてあるし、了承もしてもらっている。そもそも君は、隣国の第4王子との婚約話が出ているそうじゃないか?君の両親も、王子との婚約を望んでいるみたいだよ」

「確かに第4王子との婚約の話しは出ているけれど、私が好きなのはエディソン、あなたなのよ。お願い、考え直して」

「悪いが君と婚約するつもりはないと言っているだろう。しつこいな!それじゃあ、僕はこれで」

縋りつくネリア様を、冷たい眼差しで突き放すエディソン様。

「待って、エディソン。お願いよ…」

泣き叫ぶネリア様を置いて、エディソン様はスタスタと歩いて行ってしまった。

あまりにも衝撃的な光景に、私はただ立ち尽くす事しかできなかった。
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