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第6話:学院主催の夜会に参加します【前編】

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エディソン様を諦めてから、4ヶ月が過ぎた。私の気持ちはすっかり落ち着き、今はなぜかグレイズが若干気になっている。そう、若干よ!そして早いもので、3年生も2ヶ月後には卒業する。

もちろんエディソン様もだ。きっと卒業と同時に、ネリア様と婚約するのだろうと思っている。この国の貴族は、17~23歳くらいに結婚するのが一般的だ。そのため、貴族学院を卒業する15歳を節目に、婚約を発表する貴族も多い。もちろん、在学中に婚約する貴族もいる。

何はともあれ、後2ヶ月でエディソン様も卒業だ。卒業すれば、もうほとんど会う事もなくなるだろう。

そして今日は、これから貴族界で生きていく3年生の為に、学院主催の夜会が開かれることになっている。この夜会で、貴族間の絆を深めるという狙いもあるのだ。ちなみに私たち1・2年も強制参加だ。在校生以外にも、両親や婚約者なども参加が認められている。

去年はエディソン様を追い掛け回していて、夜会を楽しむ余裕はなかったが、今回はゆっくり楽しむ予定だ。

貴族学院が終わると急いで家に帰り、夜会の支度をする。今日のドレスは、私の瞳の色に合わせ、ピンク色のドレスにしたのだ。私はこの国では珍しい、ピンク色の瞳をしている。ちなみに髪は水色だ。

ドレスに着替え終わると、お兄様と一緒に馬車に乗り込む。ちなみに両親は、後で来ることになっている。今回の夜会はパートナーがいる人は、パートナーと来ることが決まりなのだが、生憎私たち兄妹にはパートナーガいない。その為、兄妹での入場なのだ。

もちろん、1人で入場する人たちもたくさんいる。

「今年もお兄様と入場するのね…お兄様、気になる令嬢とかはいなのですか?もう15歳なのですから、そろそろ婚約を考えた方が…」

「うるさいな!お前がエディソン様を追い回していたせいで、俺はそれどころじゃなかったんだよ!」

すぐに人のせいにするのだから。こんな性格じゃあ、嫁の来てはないわね…

会場に着くと、仕方なくお兄様と入場をする。あぁ、来年はパートナーと一緒に出席したいわ…できればグレイズと…て、どうしてそこでグレイズの名前が出てくるのよ。最近の私、完全におかしいわ。

1人パニックになっている時だった。

「アンリ、やっと来たか。待っていたんだぞ。ほら、クラスの皆もこっちにいるから、お前も来い」

ギャーーー、グレイズだわ!どうしてこのタイミングで現れるのよ。それにしても、今日のグレイズ、髪もしっかりセットされていて、カッコいいわね…て、また変な事を考えてしまったわ。とにかく、落ち着かなきゃ!

私の手を掴み、皆の元に連れて行ってくれたグレイズ。既にクラスメートの大半が来ていた。

「アンリ、知っている?貴族学院主催の夜会は、王宮の料理人がお料理を作っているのよ。だから、とても美味しいの。夜会の名物の1つなのよ。後で取りに行きましょう」

「まあ、そうなの?それは知らなかったわ。王宮の料理人が作った料理なんて、そうそう食べられないものね。沢山食べないと!」

そうか、夜会の楽しみの一つに、お料理と言うものがあったわね。せっかくだから、美味しいお料理を堪能しないと。

皆で話をしているうちに、学院長先生の挨拶で夜会が始まった。ふとホールに目をやると、エディソン様が令嬢たちに囲まれていた。相変わらず人気ね。正直もうエディソン様を見ても、何とも思わなくなった。

あんなに大好きだと思っていたのに、意外と忘れるときは早いものね。

「おい、アンリ、大丈夫か?俺たちもたまには一緒に踊ろうぜ」

私がエディソン様を見ていたからか、心配してくれたグレイズがダンスに誘ってくれた。

「ええ、いいわよ。踊りましょう」

グレイズの手を取り、ホールの真ん中まで来ると、音楽に合わせて踊り出す。

「グレイズ、あなた意外にダンスが上手なのね。踊りやすいわ」

「そういうアンリだって、それなりに上手じゃないか。こうやって公の場で、お前と踊るのは初めてだな。子供の頃は、よく遊んで踊っていたけれど」

言われてみればそうね。私は8歳から領地に行っていたし、王都に戻って来てからは、ずっとエディソン様を追いかけていた。

「グレイズ、エディソン様の事とかクラスの事とか、色々ありがとう。あなたには感謝しているのよ。あなたのお陰で、毎日楽しく過ごせているし。それにエディソン様の事も、忘れられたわ…」

「そうか…でも、俺は何もしていないよ。マッキーノ侯爵令息の件も、お前が自分で踏ん切りをつけて前に進んだんだし。アンリ、その…本当にもうマッキーノ侯爵令息の事、何とも思っていないのか?さっきだって見つめていた様だし…」

「ええ、思っていないわ。さっき見ていたのは、相変わらず令嬢たちに囲まれているなって思って見ていたの。あんなに好きだと思っていたのに、意外とあっさりと忘れられたから、案外にそこまで好きじゃなかったのかもしれないわね…」

きっとエディソン様の事をこんなに早く忘れられたのは、グレイズのお陰だろう。グレイズがいなかったら私は、まだ引きずっていたかもしれない…

「それなら良かった。アンリ、今日はマッキーノ侯爵令息の事を忘れ、目いっぱい楽しもうぜ。せっかくだから、もう一曲踊るぞ」

「ええ、もちろんよ」

私の大切な幼馴染、グレイズ。いつも私に寄り添ってくれる、大切な人…
私、きっとグレイズが好きなのだろう。もし可能なら、このままずっとグレイズと一緒にいられたらいいのにな…
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