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第2章:パーティーができあがるまで

38話:「エルノアの戦い方講座」

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次の目的地が決まった俺たちは今、観光がてらにフランプールの街を歩き回り
立ち並ぶ出店を見物しながら1時間ほど時間を過ごした。


その後宿を引き払い、ジェスタの町に戻るためフランプールの正面門に移動した。
フランプールではいろいろな出来事があったが、今となってはこれでよかったのだと思う。


ここである疑問が頭の中に過ったので、その疑問を当人にぶつけてみる。


「エルノアさんってさレベルはどれくらいなの?」


「ヤマト様、いい加減私のことはさん付けではなく、
呼び捨てにしてくださいませ。」


そう言いながら、上目遣いでこちらを見つめてくる

(だからその目は反則だってば!!)


「じゃあエルノア、お前の今のステータスを確認してもいいか?」


「もちろんでございます。」


そう言うと大和はライブラリーコンファーメイションを使い
彼女のステータスを確認したところ



職業:レンジャー(初級職)


レベル:15


HP 1367
MP 704
攻撃力 80
防御力 75
素早さ 103
魔力 67
技力 93


といったステータスが表示される

レンジャー、大和がプレイしていたオンラインゲーム
【タワー・ファイナル】において最初に選択できる初級職の一つで
体力と素早さに優れており、同じ初級職の盗賊と比べると
隠密おんみつ能力や偵察能力は劣るものの、土属性の魔法に
接近戦や中距離系のスキルも習得できるため
前衛後衛どちらでも位置取りができる万能性に富んだ職業だ。


「へえー、エルノアってレンジャーだったのか・・・」


意外な職業と言った感じに大和が感嘆の声を出す。


「エルフは基本的に森に住んでおりますので
森を行き来するという意味でもレンジャーを選択するのが
一番効率が良いのです。」


そう言って人差し指を一本立て、目を瞑りながら講釈こうしゃくを垂れる。


「これなら前も後ろも任せられそうだな。」


その後、ついでということでリナのステータスも確認してみると



職業:神官(初級職)


レベル:25


HP 2067
MP 1589
攻撃力 123
防御力 140
素早さ 113
魔力 213
技力 102

という具合だ。


「へえー結構レベル上がってるな。一人で戦わせてた甲斐があったな」


そう言って満足そうに頷いた大和に不満の声が一人の少女から発せられる。


「全部私に無理矢理押し付けて来たくせにぃ~。
あの時はホントに死ぬかと思ったんですからね!!」


そう言いながら両腕をバタバタとさせ不満を漏らすリナ
それに反論するかのように話しかける。


「俺がやっても意味ないし、逆にそのお陰で強くなれたんだから
感謝されこそすれ非難されるいわれはない!!」


スパっとリナの不満を一刀両断した大和
そんなやり取りをしているとエルノアが難しい顔をしている。
それに気づいた大和はすかさず問いかける。

「どうした?なにかあったか?」


「いえ、その・・・」


言い辛いことなのだろうか、奥歯にモノがはさまったような様子の彼女に
構わないから話してみろと促す。


「仕方ないことだとは思っておりますがリナ様の方が
【れべる】というのが高いのですね・・・」


「? まあ、そうだな」


彼女がどういう心境でその言葉を口にしたのか
思案していると彼女が意を決したように口を開く。


「ヤマト様、お願いしたきことがございます。」


「なんだい?」


「一日でも早くヤマト様のお役に立つようになるため
その【れべる】とやらを上げて強くなりたいのです!」


そう言い放った彼女の目は真剣そのもので
大和に対する純粋な忠誠心が垣間見れた。


「わかった、じゃあちょっとモンスターと戦ってみよう」


そう大和が言うと三人はフランプールの正面門を出て進み始めた。


フランプールから歩いて30分ほどの距離の場所に
鬱蒼うっそうと木々が覆い茂る場所があり、見たままを表現するなら
【林】という表現が妥当な場所にたどり着く。


「じゃあここでちょっとモンスターと戦ってみよう。」


周囲を見渡すと、所々にスライムやゴブリンと言った
低級のモンスターが何をするわけでもなくその場を行ったり来たりしていた。

大和は一匹のスライムをターゲットに指定し、そのスライムを倒してみてと
エルノアに指示を出す。


それを受け、エルノアはスライムに向かって飛び出したが
勢いあまってぷにぷにした体のスライムに激突し、スライムの体に
彼女がめり込む光景が目に映し出された。


「はあ~いきなり突っ込むやつがあるか・・・」


片手を頭に乗せながらため息をついた大和は
目を回すエルノアに駆け寄り、ケガががないことを確認すると
脇の下に手を入れ、起こしてやる。

それから、軽く彼女の頭をコツンと小突くと
戦いの基礎を抗議し始める。


「いいか、まず敵を見つけたら迂闊うかつに近づかずに間合いをはかるんだ
そして、敵の死角に回り込んで攻撃したり、遠距離系の魔法やスキルを使って倒すんだ
敵が反撃してきたり逆に遠距離攻撃を仕掛けてきたら、回避しつつ一旦距離を取る。
まあモンスターの強さや状況によって変わってくるけど、基本的にはヒットアンドアウェーがセオリーかな」


と言う風に数多くのRPGで培ってきた知識を総動員して
戦いの基本をエルノアに教える大和であったが当の本人は
頭の上でクエスチョンマークが浮かんだようにぽかんとした表情で首を傾げる始末


これは・・・だめだな・・・


口で説明してもダメなら手本を見せればいい
まさに【百聞は一見にしかず】だ!!


「リナ、手本を見せてやれ」


俺がやってもいいのだが、俺の場合強すぎて逆に手本にならない。
ここはレベルが近いリナにやってもらおうじゃないか。
これもまた修行だ、修行!

そういう思惑があるとは夢にも思わないリナが
あからさまに面倒臭いといった表情をこちらに向けてきたが
早くやれという意味合いで手をシッシッとやると
しぶしぶといった感じで、腰のロッドを手に
エルノアがぶつかったスライムへと歩を進める。


「ふっ!」


先ほど俺が説明した内容の通り、距離を取りつつ隙ができたら攻撃し
相手が反撃してきたら無理をせず避けて体勢を立て直すといった戦法で
リナが手慣れたようにスライムを容易くほふった。


その一部始終をくまなく観察していたエルノアは
リナがスライムを倒すと同時に感嘆の声を上げる。


「へぇ~、リナ様って結構お強かったのですね
ただヤマト様に殴られてるだけの人かと思ってましたよ。」


おいおいそれはいくら何でもひどすぎだろという心の声を呟きながら
今度はエルノアがやってみろと彼女にやらせてみた。


最初こそは手間取ってはいたものの、何事も慣れが肝心で
戦闘を重ねるたびに戦いの勘が付いてきたのか
最後には敵の動きを先読みし、動きに合わせてカウンターを取れるまでになっていた。


結局リナにも適当なモンスターと戦わせ二人に戦いの経験を積ませた。
それから遅めの昼食を三人で取り、今度は二人一緒にモンスターと戦わせ
日が暮れるまでひたすらモンスターと戦わせ続けた。

そのお陰もあってリナはレベル26、エルノアは18にレベルアップしていた。

フランプールに戻ってもよかったが野宿にも慣れておくため
今夜はそこでテントを張って寝ることにした。

当然のように二人が大和と同じテントで寝ようとしたが
無理矢理もう一つのテントに二人を押し込みそこから出てくるなとだけ言い残し
彼も自分のテントに入り、仰向けに地面に体を預けるとそっと目を閉じた。


翌日目が覚めると、もはやお約束と言っていいほどの展開で
二人が大和の両隣で寝ていたのでそれを叩き起こした。

騒がしい朝になってしまったが、とりあえず顔を洗い
眠気を吹き飛ばすしているとテントから二人が目を細めながら
まだ眠いといわんばかりにのそのそと出てきた。

彼女たちも顔を洗い、朝の身支度を済ませると
朝食の準備にとりかかる。

リナもエルノアも料理は人並み程度にはできるようで
二人で協力して、野菜たっぷりのスープを作った。

褐色かっしょく色の少し硬めのパンを主食に
彼女たちが作ったスープと一緒に空腹の腹を満たした。


一息つくと、テントをしまい出発の準備をする。


「とりあえず戦い方は昨日学んだから今日はニルベルンさんの手紙を
バイゼルさんに届けに行こう。」


出来れば昨日のうちにテレポートで届けたかったのだが
パーティーとしての戦い方を覚えていくことを優先した結果が
昨日のモンスターとの戦闘だったのだがエルノアがあまり戦闘慣れしていなかったため
ほとんどエルノアの戦い方講座みたいなものになってしまった。

(ソロではなくパーティーとしての戦い方か・・・今後の課題だな)


そう考えていると、出発の準備ができたようで
二人の視線が自分に集まっていることに気付く。


「ヤマト様、準備できました。」
「いつでもオッケーです。」


無邪気に向けてくる二人の輝かしい笑顔を見ながら
大和はジェスタに目的地を設定したテレポートの呪文を唱えるのであった。
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