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第2章:パーティーができあがるまで
23話:「洞窟の奥にいたモンスター」
しおりを挟む二人に話しかけてきた声は腹の底から響き渡る怒号に近い声だった
洞窟の最奥は草野球ができるほどの広さがあり
大小さまざまな色や形の異なる岩が転がっていた
二人は声の主を探したが、どこにもいない
洞窟の中ということもあり声が反響して音の出所が
皆目見当がつかなかったのだ
「どこだ、姿を見せろ!!」
大和が鋭い声で叫ぶ
「どこを探している、私はここだ」
だが見つからない
岩の間を進みながら警戒する
そして、赤みがかった岩に手を付くとその岩が動いた気がした
「っ!?」
びっくりしてその岩を見ると
ソフトボールくらいの大きさの目がこちらをギロッと睨んでいた
「なんだ?」
「きゃあ!!」
そこから洞窟全体が揺れはじめ天井が少し崩れた
大和たちは天井から落ちてくる岩に注意しつつ辺りを警戒する
すると先ほど岩だと思っていたものが動き出し
巨体をくねらせ大和たちの正面で対峙した
20メートル以上はあるだろう巨体を左右に揺らし
背中から生える翼を一仰ぎすれば、風圧で顔の形が変わり
硬い鱗に守られた体はダイヤモンドよりも堅そうだった
その姿を見るや否やリナが叫んだ
「フレア・ドラゴン!!」
「ふれあどらごん?なんだそれは??」
「この世界には多くの種族が存在しますが
その中でも強大な力を持つと言われる種族の一つが
龍族なのです」
さらにリナが続ける
「その龍族の中でも特に力の強い龍族は七大龍族と呼ばれ
フレア・ドラゴンは七大龍族の1体なのです!!」
全くこの世界の住人はつくづく七大○○と言うのが好きらしい
それにしてもここでドラゴンに出くわすとは夢にも思わなかった
ドラゴンなんて元の世界からすれば物語にしか登場しない空想の生き物だし
よくRPGでは出てくるけど、実物を見るのは初めてだ
まるで動物園にいるパンダに出会ったような感情が大和を支配した
そう思いながら、大和は目の前の巨大生物をしげしげと観察する
「へえーこれがドラゴンか・・・」
そんなことを呟いているとドラゴンと目が合った
「脆弱なる人間よ、何をしに私の塒まできたのだ
餌にでもなりに来たというのか?」
洞窟全体に響き渡る声にたじろぐリナをよそに
砕けた口調で大和が答える
「この洞窟にモンスターのボスがいるって聞いて
そのボスを退治しにきたんだが、モンスターのボスと言うのはお前か?」
そのあまりにもずけずけとした態度にリナが口を挟む
「ヤマト様、相手はこの世界最強と言われるドラゴンですよ
もう少し言葉に注意して、聞いた方が・・・」
そうリナが言い終わると、ドラゴンが大和の問いに答える
「私はモンスターのボスではない、確かにこの洞窟を塒にはしているが」
「どういうことだ??」
わけがわからないという大和の言葉を無視し
ドラゴンが大和に話しかける
「ともかくこの私の前に姿を見せたからには
私の餌となってもらおう、ちょうど腹も空いていたことだしな」
そう言って大きな口をガバッと開けて
大和を一飲みしようとドラゴンの顔が迫ってきた
「ヤマト様、あぶなっ」
そう言い終わる前に
ドラゴンの口の中に大和が収まり
そのままペロリとドラゴンに食べられてしまった
突然の出来事にリナの思考が停止したが
それを理解した途端、驚愕と焦りの感情がリナを支配する
「ヤマト様・・・そんな・・・そんな・・・」
膝からがくりと崩れ落ち、手を地面に尽き
四つん這いの体勢になるリナ
受け入れたくない現実を否定するかのように
ドラゴンの言葉がそれが現実だということを実感させる
「うーん、あまり肉がついていなかったな・・・
まだ食い足りん・・・」
地に伏した状態のリナにドラゴンの視線が向いているのを
肌で感じた彼女は恐怖に体を震わせる
次は自分が食べられる番だということは想像に難くない
震える体をなんとか、起こし立ち上がるリナ
そして、腰に手を掛けロッドを構えた
「よくも・・・よくもヤマト様を!!」
そう言うのが精一杯だった
ロッドを構えたが、魔法を唱えたところで
ダイヤモンドに匹敵する硬度の鱗には歯が立たない
やるだけ無駄なのである
だがしかし、ロッドを構えていないと
死という恐怖が己を支配してしまう
最後の瞬間まで自分を見失うわけにはいかないのだ
「さて、次は女お前の番だ。
おとなしく私の腹の中に収まれ」
そう言って大和を食べたときのように
口を大きく開けリナを飲み込もうと顔が迫ってくる
もうだめだと思い、目をギュッと瞑るリナ
ドラゴンの口が迫り、彼女の体まであと数十センチと迫った時
突然ドラゴンの動きがピタリと止まった
「うん?」
自分が食べられていないことに疑問を抱くリナ
その理由を確認しようと目を開けると・・・
「ぐっぐああああああ!!!」
そこには悶え苦しむドラゴンの姿があり
巨体をくねらせながら苦しんでいる
そしてしばらく苦しんだのち
ドラゴンが口から何か吐き出した
吐き出したものを確認するまでもなかった
少し頼りないが見慣れた背中がそこにはあった
「やれやれ・・・いきなり人を食べるとは、
礼儀知らずにもほどがあるぞ!!」
大和の姿を確認し、彼が生きているという安心感から
リナの目に大粒の涙が滝のように流れ落ちていた
顔は涙と鼻水とそれ以外の汁でぐちゃぐちゃになっていた
「リナ大丈夫だった、ってなんだその化け物みたいな顔は!!」
リナの顔が瓦解していることに驚きつつもその理由が
自分が生きていたことに対する感情だと悟った大和は
やさしい口調でリナに話しかけた
「ばーか、俺がそう簡単に死ぬかよ」
「ヤ゛マ゛ト゛ザ マ゛あああああ」
嗚咽交じりで泣きじゃくるリナに苦笑いしつつ
(というかドン引きの苦笑い)
ドラゴンに視線を戻す
さきほどの苦しみから解放されたドラゴンは
殺気混じりの視線を大和に向け咆える
「貴様ぁ!私の体に何をした!!」
「体の中でライトニング・ジャベリンを使っただけですが、何か?」
「おのれえええ、人間風情が!!」
再びドラゴンが大和を飲み込もうと
顔を近づけてくるも大和はそれを巧みに躱し
ガラ空きになったドラゴンの横顔に右ストレートを叩き込んだ
ドラゴンの顔が吹き飛び洞窟の壁に激突する
だが硬い鱗に守られているため大したダメージはなかった
「貴様、何者だ!!」
ドラゴンが大和に問いかける
それに対し涼しい顔で大和は返答する
「ただのしがないサラリーマンさ・・・」
大和の言ってることが理解できなかったドラゴンは
次の手を打ってきた
「もはやエサなどいらぬ、消し炭になれ!!」
そう言うとドラゴンは大きく口を開け
その口を大和に向けた、するとドラゴンの口の奥が明るくなり
そこから灼熱の炎が噴き出された
その攻撃が大和に直撃する
「ヤマト様!!」
リナが叫ぶ
だが次の瞬間
「超級魔法(ギガント・マジック) パーフェクション・ブレス・シールド!」
大和が呪文を唱えると青白いドーム状のシールドが
周囲2、3メートルに展開し、迫りくる灼熱の炎から大和を守った
そして、炎は力を失い何事もなかったかのように消え去った
その事に目を見開き驚くドラゴン
「ばっ馬鹿な!!」
そんなやり取りに嫌気が察したのか
大和がふうとため息を吐き出し腰に手を当て
鞘に収まった剣をゆっくりと抜き放つ
「もういいや、大体の強さはわかったし・・・」
ドラゴンを倒そうと抜き放った剣を構えなおしたその時
目を疑うような光景が目の前に広がっていた
「なんだ?」
そこには犬がお座りをした状態のように
四本の足を揃え、大和に向かって頭を垂れるドラゴンの姿があった
なにが起こったのか理解できなかった彼はドラゴンに問いかける
「それは何の真似だ?」
そう言うや否や、ドラゴンが答える
「この瞬間をどれほど長く待ちわびたことか。
長い間お待ち申し上げておりました。我が主」
そう答えたドラゴンに対し
大和が素直なリアクションを取った
「・・・はぁ?」
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