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第2章:パーティーができあがるまで
21話:「最初の目的地」
しおりを挟むジェスタの町を出ると
荷馬車が通れるほどの幅がある街道がまっすぐに伸びていた。
どうやらこの街道を辿っていけば、旧王都であるフランプールにたどり着くようだ。
ただ街道と言ってもコンクリートで固められたものではなく
土で出来た道というだけの
最低限馬車が通行するのに支障はない程度の道だった。
ジェスタの町を出発してすぐに大和はリナに問いかけた
「旧王都までどれくらいかかるんだ?」
「そうですね、馬車だと3日くらいですが
私たちは歩きなので7日から10日くらいかかるかと思いますよ?」
ジェスタの町では馬車を借りることができなかったため
歩きで旧王都を目指すこととなったのだ
大和としては時間はさほど問題ではなかったが
大体の到着時間を把握しておきたかったためリナに聞いたのだ
「ジェスタの町と旧王都とのちょうど中間地点の場所に
小さい村落があったはずですのでまずはそこを目指しましょう」
ということで二人はその小さい村落を目指すことにし街道を進んでいく。
整備された道とは言え、当然のことながらモンスターは出るらしい
しばらく歩いていると右手の林からモンスターと思しき影が現れた
「ヤマト様、す、スライムです!!」
リナが慌てた様子で大和に叫ぶ
それに対し、興味がないといった様子で
大和はリナに返事をした
どうやらリナはジェスタの町から出たことはなかったため
モンスターとの戦闘はほとんど経験したことがなかったのだ
どおりでヴァルボロスの時に腰を抜かしていたわけだ。
腰に下げていた70センチほどの長さのロッドを手に取ると
スライムに対して戦闘態勢を取るリナ
「リナさ、今のお前のレベルってどれくらいなの?」
突然質問されたからかそれともモンスターと対峙しているからか
珍しく真剣な焦った様子で彼女は答えた
「れべる?なんですかそれ?」
「はぁ?」
どうやらレベルという概念を知らなかったようで
思わず間抜けな声を上げてしまった
「仕方ない、ライブラリーコンファーメイション!」
大和がリナに対して、呪文を使うと
彼女の現在のステータス情報がモニターに映し出される
リナのステータスは以下のように表示された
レベル:14
HP 869
MP 1040
攻撃力 60
防御力 70
素早さ 65
魔力 100
技力 50
というものだった
対して同じようにスライムにも
ライブラリーコンファーメイションかけステータスを確認する
レベル:6
HP 450
MP 300
攻撃力 35
防御力 30
素早さ 25
魔力 47
技力 20
とモニターに表示された
リナの方がステータスでは有利だが
戦いというのは何が起こるかわからないため
突然の事態に注意つつここはリナ一人で戦わせることにした
リナは助けてくれと懇願していたが
この程度の相手を倒せないようなら
足手まといになるから今すぐジェスタに帰れと言ったら
不満げな表情だったが一応は納得した様だった
リナに指示を出しつつ、10分以上かかって
ようやくスライムを一人で倒したリナ
かなりの死闘だったがのか、その場にへたり込んでしまう
その後アイテムボックスから取り出した水を差し出すと
ぐびぐびとあまり女の子には相応しくない飲み方で水を飲み干す
「ぷはあああ、生き返りましたーー」
まるでサラリーマンが一仕事したあとの
ビールを飲むような感じだったため、思わず吹いてしまった
「おいおい、たかがスライムだろ?全くこれじゃあ先が思いやられる・・・」
「だってしょうがないじゃないですか!初めての戦闘だったわけですし」
まあ俺の手を借りなかっただけでも良しとするかと思った大和は
へたり込んでいるリナに手を出し、その手を握ったリナを引っ張って立たせる
立たせた後も手を離さなかったため開いている方の手で彼女の頭をコツンと小突いた
「さあ、どんどん進むぞ」
「もうちょっと休ませてくれてもいいじゃないですか?」
「何言ってんだ、次のモンスターもお前一人で戦ってもらうからな」
「ええーーーー!!」
当然だ、大和はすでにレベルがカンストしているため
戦ったところでせいぜいドロップアイテムとお金しか手に入らない
このままリナと共に魔王城に向かうのであれば
弱い仲間を強くするために集中的に戦わせるのは
RPGにおいては基本中の基本だった
その後スライム5匹と遭遇し、全てリナに戦わせた
そのお陰もあってかリナのレベルが14から16に上がっていた
そんなことをしていると夕方になっていた
夜に行動するのは危険と判断した大和は
テントを二つ張って今日はそこで野宿をすることにした
「夜這いするんじゃねえぞ、死にたくなかったらな?」と
リナに釘を刺したのは言うまでもないことだろう
翌日朝早くに目覚めた大和は顔を洗い朝食の支度を始める
その後すぐにリナがもう一つのテントから出てくる
眠たい目を擦りながらペコっとお辞儀し
「ヤマト様、おはようございます」と言ってきたので
挨拶を返し、これで顔を洗えと言って水袋を渡した
その動作が可愛かったがそれは口に出さず心の中にしまっておいた
大和が用意した朝食を食べ、テントをしまい
出発の準備が整ったので再び歩き出す
その後の2日間、リナにモンスターの相手をさせ
日が暮れたらテントを張って野宿というのが続いた
リナがいろいろと言いたいことがあった様だが
「文句があるなら帰ってもいいぞ?」という言葉を言うと
納得はしてくれた、不満げな顔は相変わらずだったが・・・
そしてついに目的だった小さい村落に到着した
そこは本当に小さな集落で最低限の家が立ち並ぶだけの村だった
その中でも一際大きな(といっても普通の家よりは小さいサイズだが)家に行き
「旅の者ですが一晩泊めていただけないでしょうか?」とお願いしてみた
その家は予想していた通り、村長の家だったらしく
村長も快く二人を歓迎してくれた
村長は60代前半で背はリナよりも小さく145センチほどで
頭頂部がなく白髪のもみ上げが特徴的な温厚そうな人だった
「改めて、自己紹介させていただきますじゃ」
「この村で長を務めております、ベルガという者ですじゃ」
「俺はジェスタの町から来た、小橋大和と言います」
「同じくジェスタの町で神官を務めておりますリナ・シェーラです」
二人は村長に簡単な自己紹介をする
もちろん大和は自分が勇者であることを伏せた
だがベルガが予想に反した言葉を発した
「あなた様がかのご神託の勇者様ですな?」
「どどどどうしてそれを!?誰から聞いたのですか?」
ベルガの話では、ジェスタの町に勇者が降臨したことは
周辺の国々ではすでに伝わっており
こんな小さな村落ですらその情報は回ってしまっているとのことだった
「誰がそんなことを・・・」
ベルガは悪びれもせずに答えた
「どうやらジェスタの神殿が、各諸国に触れ回っているそうですじゃ」
「それを聞いた商人や国々を旅する者の手によって情報がさらに広がったようですじゃ」
「あのじじい神官!!」という心の声を押し殺し
バイゼルに対しての怒りを抑え込んでいるとベルガが話出す
「勇者様、お願いでございますじゃ」
「あなた様のお力でこの村を救ってくだされ!」
そう言うとベルガは土下座し大和に懇願する
突然のベルガの行動にびっくりした二人は
とりあえず頭を上げてもらうようお願いした
そして、改めてなにがあったのか聞いてみた
「実は1か月ほど前からモンスターの活動が活発になり
この村はモンスターの襲撃を受けるようになったのですじゃ」
「原因を突き止めたのですが、我々ではその原因を排除できずに
途方に暮れておりましたのじゃ」
大和はベルガに問いかける
「その原因とは?」
「どうやらモンスターたちを束ねるボスがいるらしいのですじゃ」
「ですから勇者様、お願いします。そのボスを倒していただけませんでしょうか?」
その言葉を聞いて大和は心の中でため息を付いた
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