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第3章 「皇帝の陰謀と動き出す闇」

143話「大和、突然兄を名乗る」

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 俺は白いフード付きの外套を纏った人物と女性冒険者二人が人通りの少ない裏路地へと入っていくのを視認する。
 面倒事に巻き込まれたくはなかったが、なんとなく白フードが気になったので珍しく首を突っ込んでみることにした。
 路地に入るとそこは建物と建物の隙間ができたような路地だったがそれでも幅が3メートルほどもある路地だった。
 俺は先に行った三人を追いかけるべく歩調を早め駆け足で進んでいく。
 路地は多少薄暗く人気もないため少々気味が悪かったが迷っていては助けられるものも助けられないと思い足に力を入れた。
 分かれ道が幾つかあったが気配で三人の後を追いかける。 大丈夫こっちで合っているはずだ。
 しばらく進んで行くとどうやら袋小路になっているようでその先に道はなかった。
 だがしかし、どうやら俺の選択は正しかったようで、目的の三人がそこにいた。
 どうやら白フードが逃げ場がなく女性冒険者に詰め寄られていよいよ年貢の納め時かというシチュエーションになっているので
ここは突如現れた正義の味方風に颯爽と登場するか?

 「ここにいたのだな、探したぞ」

 すみません、日和りました。 向こうの世界で一般人だった俺がそんなことできる訳ないじゃないですか!!
 小学生の時に桃太郎の劇の発表会で犬役で出た時も終始棒読みだったこの俺がですよ?
 そんないきなり「ちょっと待ったあーーーー!!」とか、ないわーーーーー!!
 と、とにかくここは知り合いを装ってシレっとこの場から退散するとしよう。

 「こんなところまで来たら迷子になるではないか、早く帰るぞ」

 俺は白フードと女性冒険者の間に入り、「失礼」と女性冒険者に一言断ってから
白フードの背中に手を当てると元の大通りに戻るように促す。
 だが残念なことにそれでうまくいくほど世の中そんなに甘くないわけで―――。

 「待ちな!!」

 そう呼び止められるとさりげなく白フードを後ろに庇いながら女性冒険者の方に振り向く。
 そして、いつもの営業スマイルを顔に張り付けできるだけ相手を刺激しないように口を開く。

 「なにか用かな?」

 「あんた誰だい?」
 「あたいらは今取り込み中なんだ、痛い目に会いたくなかったらとっとと消えな!」

 邪魔が入ったことで機嫌を損ねたのだろう、鋭い目つきで二人が俺を睨んでくる。
 白フードから不安そうな吐息が漏れる。 先ほど背中に触れた時にわかったのだが
どうやら白フードは若い女の子らしい。
 一人で不安だったのだろう俺の背中の服を掴む手が小刻みに震えていた。
 俺はこの子を助けなければならないと判断し女性冒険者に相対する。

 「申し訳ないが、この子は俺の妹だ。 どこの誰だか知らん奴に大事な妹を渡すか。
 どうしてもって言うんなら、どうなっても知らんぞ・・・・・・」

 そう相手に言い放つと少しばかり殺気の籠った鋭い視線を向ける。
 一端に冒険者をやっているのかその視線で俺が只者ではないことを肌で感じた二人が腰に下げていた剣を抜き放った。
 
 「けっ、上等じゃねえかやってやんよ!!」
 「負けたらお兄さんも一緒にいただくとしようかね!!」

 そう言うと彼女たちは左右に別れ二方向から攻撃を仕掛けてきた。
 俺は素早く白フードの彼女の背後に回り込むと彼女の背後から腰に手を回すとそのまま彼女を抱える形で後ろに飛んだ。
 その直後、女性冒険者の攻撃が俺が先ほどまでいた場所で空を切った。

 「なっ!」
 「躱しやがった!?」
 
 自分たちの攻撃が躱されることが予想外だったのか目を見開き驚愕の表情をこちらに向けてくる。
 俺は白フードの彼女が怪我がないかと尋ねようとすると急に「あぁん」と悩まし気な声を出したので問いかけた。

 「どうした? どこか怪我でもしたのか?」
 「そ、その・・・・・・手が・・・・・・」
 「手?」

 俺は自分の手に視線を向けると瞬時に彼女の言いたいことを理解する。
 故意ではないがいつのまにか腰に回したはずの手が彼女の膨らみを鷲掴んでいたのだ。
 その見事なまでのそれは指に吸い付き服の上からでもわかるほどの絶大なる存在感を持っていた。
 そのまま指に力を入れれば至福の時を満喫できるが状況が状況だけにここは欲望に抗い素早く手を離す。
 
 「すっすまない、いっ妹よ。 てて手が滑った」
 「んぅ~」

 白フードの彼女が恥ずかしさのあまり声にならない声を出していると女性冒険者が悪態を付く。

 「てめぇら兄妹のくせにいちゃついてんじゃねぇよ!!」
 「この現実世界充実野郎がああああ!!」

 この世界にはリア充という言葉がないからなのかリアルを現実と訳して表現しているようだ。
 あんたらが襲ってきたからこの状況になっているんですがね?
 そんなことを考えていると女性冒険者たちは俺めがけて突進してきた。
 何となくだが目に血の涙が流れていたのは俺の妄想ではないだろう。
 だが俺とて彼女を助けなければならんのだ“兄として”―――。

 「終わりだ」

 俺は腰に下げた剣に手を当てるとそのまま踏み込む。
 そして刀で居合切りをするかのようにそのまま剣を振り抜いた。
 両者しばらくそのまま固まっていたが俺が血の付いていない剣を振ってから剣を鞘に納める。
 まるでそれがスイッチだったかのように女性冒険者の着ていた服が切り刻まれ二人とも全裸になってしまった。
 (あっあれ? ちょちょっとやりすぎたかも・・・・・・)
 どうやら少々力み過ぎたため彼女たちの着ていたもの全てを切り刻んでしまったようだ。
 全裸になった彼女たちが自分の大事な部分を隠しながら「きゃああ」と悲鳴を上げその場にへたり込む。
 俺はその状態の彼女たちを素通りして俺の妹(仮)のそばまで行くと肩に手をやりながら宣言する。

 「二度と俺の妹に近づくんじゃない、わかったな!」

 俺は彼女に大通りに戻るよう手で促すと彼女は先に進み始めた。
 一方俺はというと全裸で伏している彼女たちに近寄るとその体を舐めまわすように観察する。
 べっ別に眼福とかそう言うんじゃないんだからね!! ないんだからね!!!!
 大事なことなので二回心で叫びましたと一人コントみたいなことをやっていると
目の端に涙を溜めた彼女たちが弱々しく睨みつける。
 そして、自分の身体を抱きながら問いかけてくる。

 「なっなんだよ! あたいらをどうしようって言うのさ・・・・・・」
 「まっまさか・・・・・・ぽっ・・・・・・」

 どうやらこのあと俺が二人に何かすると勘違いしているが俺にその気は全くない。
 確かにスタイル抜群で顔も美人の二人だが会って間もないのにそんなことをする気は起きない。
 ましてやさっきまで戦っていた相手なのだから尚更である。
 俺は腰に下げたポーチから薄手の布を二枚取り出すと二人に投げつけた。
 二人がそれを見てぽかんとした表情になるが、俺は構わず二人にこう言い放った。

 「そのままじゃ風邪引くだろ、お前らみたいな美人二人に風邪を引かせたとあっちゃ
男の名折れってもんだ。 それに―――」

 俺は一旦言葉を切って彼女たちと同じ目線に立つ。
 近づいてきた俺に頬を紅色に染めた二人に止めの一撃をお見舞いする。

 「いいものも見せてもらったしな」

 俺は二人の身体に目をやりながら太々しい笑いを浮かべて二人を見やる。
 その言葉を聞いた瞬間一気に二人の顔がリンゴのように真っ赤に染まった。
 俺は彼女たちに「じゃあな美人のお二人さん」と背を向けて手を振りながらその場を後にした。
 去り際に何かが倒れる音が聞こえたがこれ以上彼女たちと関わりたくなかったため気にすることなくそのまま裏路地を戻っていった。
 その音の正体は言うまでもなく彼の最後の一言に失神してしまった女性冒険者だった。
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