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3部【ビルド大陸上陸編】 第1章 「勇者ってこんなに人気者?」
114話:「新天地、ビルド大陸」
しおりを挟む「見えたぞーーー!!」
その場にいる全員に聞こえるほどの大音量で男が叫んだ。
そこは船上、船の上だ。
見渡す限りの大海原、時折船に着弾する波が飛沫を上げる。
空にはウミネコの群れが飛翔し、その中の一羽が船の見張り台に腰かけるようにとまる。
大和たち一行は新たにマチルダとフレイヤを仲間に加え6人パーティーを結成し
新大陸ビルド大陸に向け出航した。
船旅は何事もなく順調に進みドグロブニクを出航してから4日後
ようやくビルド大陸がその姿を現した。
そこで話は戻るが先ほどの男の叫びはかの大陸を視認したことの報告だった。
「うおえええええぇぇぇぇぇぇ」
船縁に立ち、先ほどからえずいている赤髪の美女に近づくとその安否を確認する。
「大丈夫かフレイヤ?」
「は、はい・・・・・・だいじょうb―――うっ!」
とてもじゃないが大丈夫だとは言い難い彼女が、再び船縁から胃の中の物を吐き出す。
彼女の行為に顔を顰めつつも少しでも症状改善を手助けするつもりで背中をさする。
今まで変身術を学んでこなかった彼女にとって船旅というのは初めての体験であったため
予想以上に揺れる船に煽られ極度の船酔い状態が続いてしまい、もはや現在彼女がいる船縁は
彼女の定位置と言っても過言ではないほど終始船酔いと格闘する羽目になってしまっていた。
ちなみに余談だが、ビルド大陸到着後に「もう二度と船など乗るものか!」と嘆いていたそうだ。
一方他の4人はというと純粋に船旅を楽しんだり、他の仲間と他愛ない話をしたり
磯の香りを纏う風を感じながら椅子に腰かけたりなど、思い思いの過ごし方をしていた。
フレイヤを介抱していたちょうどその時、船員の男がビルド大陸発見の大声を上げたのだ。
申し訳ないといった風に大和はフレイヤに一言断ってからその場を離れ船首まで駆けていった。
そこには水平線目一杯に広がる広大な大地が続いておりその全容は船の上からでは
全て網羅できないほど巨大な様相を呈する。
吹き付ける潮風をその身に浴びながら眼前に現れた新たな大陸の出現に
否が応でも心が滾る。
それはかつての世界で幾度となくプレイしてきたロールプレイングゲームを彷彿とさせ
新天地に期待と興奮の色を隠せない。
大和が内心、無邪気な少年のようにはしゃいでいると、いつからそこにいたのか
リナ、エルノア、マーリン、マチルダ、そして死にかけのフレイヤがいた。
「いよいよビルド大陸ですねヤマト様」
「どんなところか楽しみです」
「風が強いですのん。 帽子が飛びそうですのん」
「私もアース大陸以外の大陸は初めてなので、年甲斐もなくわくわくします」
「船なんか嫌いだ、船なんか嫌いだ、船なんか嫌いだ、船なんか嫌いだ」
それぞれリナ、エルノア、マーリン、マチルダ、フレイヤの順で
各々の感想を口にする。 一部妙な事を口走っている者もいたがここはそっとしておこう。
大和はこれから冒険を共にする仲間に視線を向けると『ニカッ』という擬音が似合う
笑顔を顔に張り付けながら高らかに宣言する。
「こういう時なんて言ったらいいかわかんないけどさ。
新しい未知の物に挑戦する事ってすげぇことだなって思うんだ。
まあ、結局何が言いたいのかっていうとだな。 冒険ってすげえ楽しいよなっ!!」
少年のように顔をキラキラと輝かせながら恥ずかしいセリフを宣う大和に
一同は呆れたような彼の新たな一面が見れて喜んでいるような反応を見せながら
大和の言葉に全員が頷いた。
目の前に見える新天地その名も【ビルド大陸】、勇者大和の新たな冒険が始まった瞬間であった。
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