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2部【アース大陸横断編】 第1章 「目指せドグロブニク 漫遊編」

65話:「ベルゼバブ出陣」

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リリスを見送ったベルゼバブは玉座の間の中央までゆっくりと歩き出す。
優雅に歩を進める姿はまるで一流のモデルがウォーキングをしているかのようだ。

一歩一歩しなやかで色気を纏った長い脚を交互に前に出し進んでいく。
そして、中央までたどり着くと「ふう」と一つ息を吐き出す。

「さて、メフィスト様が戻られるまで暇だわ。 何か暇を潰すものはないかしら?」

実際彼女が行うべき業務は全て彼女の部下達が代行しているため
彼女のするべき仕事はほとんどないのだ。

部下たちに任せている業務の一部を自分でやればいい話だが
彼女の性格からしてわざわざ暇を潰すために仕事はしたくないのだ。
それに彼女の部下たちから仕事を奪う結果になってしまうため
部下たちの忠誠を無下にしてしまう行為はしたくないと思っているのだ。

あちらを立てればこちらが立たずな状況に考えを巡らせていると
見計らったかのようにメフィスト達が帰還したのであった。
主の気配を察知したベルゼバブはすぐさま所定の位置に付き
跪き平伏の姿勢で主を出迎えた。

「おかえりなさいませ、メフィスト様、グレモリー統括師団長」

ベルゼバブの凛とした涼やかな声色に満足したのか
その言葉に頷きながら答える。

「ただいまベルゼ、僕がいなくて寂しかったかい?」

これは彼が帰ってきたときに必ずかけてくる言葉だ。
だからこそベルゼバブはいつもと同じ答えを返す。

「そのお言葉は師団長に向けていただきたい。
 わたくし如きにそのようなお言葉は勿体なきお言葉でございます」

メフィスト自身もその答えを予想していたからか特に気に留めることもなく
玉座に腰掛けひじ掛けに腕を乗せ顔を手で支えるとベルゼに問いかける。

「何か変わったことはなかったかい?」
「はい、実はリリスが報告のため一時戻ってきたのですが・・・・」

ベルゼはリリスが報告してきた内容をメフィストに正確に伝える。
すると柔らかな微笑みを浮かべながら嬉しそうに話し出す。

「そうか、ヤマトの奴もうそんなところまで進んだんだね」
「メフィスト様このままでは勇者がビルド大陸へと進出してしまいます。
 ここは何か手立てを講じた方がよろしいのではないのでしょうか?」

と進言したのはグレモリーの言葉だ。

「うーん、僕としては最初の大陸くらい何事もなく渡らせてあげたいんだけど?
 最初から全力を出しちゃったら可哀そうじゃん」

少し子供じみた言い方だがこれは彼の心からの言葉だった。
最初のうちから難しい難関を設けてしまうとクリアできる者がおらず
後々手持ち無沙汰になってしまう。

だからこそ最初のうちは誰でもクリアできる難易度に設定しておき
頃合いを見計らって徐々に難しくしていけばいいと考えていた。

「何を言われます! 相手は我々の宿敵である信託の勇者なのです。
 我々が遅れを取ることはありませんが相手を調子づけるのはいかがなものかと?」

「じゃあどうすればいいのさ?」

その問いを待っていましたと言わんばかりにグレモリーがベルゼに目配せをする。
そして、それに頷き彼女が提案する。

「メフィスト様、及ばずながらわたくしが勇者の実力を確かめて参りたいと思いますが
 いかがでございましょう?」

しばしの沈黙ののちメフィストが答える。

「そうだね、ベルゼなら仮に殺されそうになっても逃げることはできると思うし
 うん、いいんじゃないの?」

「これはこれは手厳しい物言いでございますね
 勇者如きこの第2部隊隊長であるベルゼバブが血祭りに上げて御覧に入れますわ!!」

自身に満ちた表情でベルゼが高らかに宣言する。
それを見届けたメフィストは姿勢を正すと改めて彼女に命令した。

「ヴェルゼビュート・ベルゼバブ、メフィスト軍直轄第2部隊隊長として
 勇者の討伐の任を申し付ける。 我ら魔族の恐ろしさをたっぷりと味合わせてやれ」

「はっ! このベルゼバブ命に代えましても
 この務め果たして御覧に入れますわ!!」

この瞬間メフィスト陣営の幹部の一人、ベルゼバブが勇者討伐に参戦が決まった。
ヴェルゼビュート・ベルゼバブ、果たして彼女の実力や如何に!?
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