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3話

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《チュートリアル11 マイエリアに行こう!

 内容:マイエリアに行く。

 報酬:300マニー、木の苗木》


「マイエリア?」


 新たなチュートリアルに出てきた【マイエリア】という言葉に疑問符を浮かべていると、女性NPCが補足の説明をしてくれた。


「マイエリアとは、その名の通り自分だけの特別なエリアのことを指し、生産職にとっては生産活動を行うメイン拠点を意味します。基本的なことはおいおいわかってくると思いますので、詳しい詳細は省きますがさっそくマイエリアに向かわれますか?」

「ああ、頼む」

「では、あちらの扉からどうぞ。ちなみにですが、生産ギルドにおけるマイエリアの入り口はここだけとなっておりますので、忘れずに覚えておいてくださいね」

「わかった」


 彼女の案内に従って、指定された扉に手を掛ける。扉は抵抗することもなくゆっくりと開き、次の瞬間俺は別の空間に移動していた。


「ここは、一体?」


 その問いに答える間もなく、チュートリアル11達成の告知が入り、次のチュートリアルが始まる。


《チュートリアル12 木の道具を作って納品しよう!

 内容:木の苗木から木材を手に入れ、木のスコップ・木のクワ・木のピッケルのうちどれか一つを作製し、納品ボックスに納品する。

 報酬:300マニー、種》


 次のチュートリアルの内容を把握したあと、今一度マイエリアを見渡してみる。


「見事に何もないな」


 そう、何もないのだ。広さとしては、学校の体育館二つ分ほどの広さがあるのだが、ものの見事に何もない。


 地面は芝生が覆い茂っており、サッカーグラウンドのような雰囲気はあるものの、それ以外はなにもないため、なんとも殺風景だ。


 唯一その空間に存在しているものといえば、腰を下ろすために用意されていると思しき切り株が一つ、空間の中心にあるだけだ。


 とりあえず、そのまま黙って見ていても仕方ないので、唯一存在する切り株まで歩いていき、前回のチュートリアルの報酬で手に入れた木の苗木を調べてみる。



【木の苗木】:どこにでもある普通の苗木。地面に植えると成長して木材が手に入る。 レア度:コモン



 何とも味気ない情報だが、ここで“きらりん”という効果音と共にインフォメーションが表示される。


《特定条件を満たしました。プレイヤー【スケゾー】は【初級鑑定】を獲得しました》


 ここで初めてのスキルをゲットしたようだ。まだ予想の範疇ではあるが、特定の行動を起こすとそれに準じたスキルが手に入るらしい。


「そういえば、まだ自分のステータスを確認してなかったな。どこで見るんだ?」


 久しぶりのVRMMOの仕様に四苦八苦しながらも、なんとかメニュー画面を開きステータスを確認する。



【名前】:スケゾー

【職業】:生産職

【ステータス】


 HP  30  レベルアップまであと300

 MP  5   レベルアップまであと300

 STR  H-   レベルアップまであと300

 VIT  H-   レベルアップまであと300

 AGI  H-   レベルアップまであと300

 DEX  H+   レベルアップまであと300

 INT  H-   レベルアップまであと300

 MND  H-   レベルアップまであと300

 LUK  H    レベルアップまであと300



【スキル】:初級鑑定Lv1

【称号】:なし



 とまあ、こんな感じのステータスなのだが、どうやらHPとMPだけ実数表記になっていて他は+と-とフラットで段階を表したアルファベット表記になっているらしい。


 ステータスの項目に関しては、HPは体力、MPは魔力、STRは筋力、VITは耐久力、AGIは素早さ、DEXは器用さ、INTは賢さ、MNDは精神力、LUKは幸運という位置付けとなっているようだ。


「ふむふむ、右側の“レベルアップまで”というのはまだわからんが、ステータス自体は四年前にやってた【MOFO】とほぼ同じ感じだな」


 一通りステータスを確認したあと、現在所持しているアイテムの確認をし忘れていることに気付き、その確認も行う。




《所持アイテム一覧》

【携帯食料】

【水】

【パン】




 現在所持しているのは、水と食料のみらしい。


 この【メイク・オア・アドベント・オンライン】は、腹具合のパラメーターがありそのメーターがゼロになると、一時的にステータスが低下するというペナルティーが発生するようだ。


 とりあえず、確認するべきことは確認できたため、【木の苗木】を植えてみることにした。


 マイエリアのおおよそ中央部にある切り株のすぐそばの地面を掘り返し、木の苗木を植え成長するのをしばし待つ。


 一般的に木が成長するまで早くても三年以上は掛かるらしいのだが、いくら現実世界との時間差があるとはいえそれだけの時間待つのは忍びない。


 運営もそれは重々承知しているらしく、木の苗木を植えてから三十秒ほどで成長した。


 どうやってアイテム化するのかいろいろと試した結果、成長した木の幹に触れるという単純な行為だった。そして、手に入れたアイテムの詳細を確認する。




【木材】:どこにでもある普通の木材。様々な用途で使用され、その汎用性は極めて高い。 レア度:コモン




 木材と合わせて木の苗木を複数個手に入れたので、さらに木材を増やすため植えてみたところ、成長するまで数分掛かった。


 どうやら最初ということで、初回だけすぐに成長するような仕様だったらしい。……ち、運営め抜け目ないな。


 しばらくの間、木の苗木を植え木材を増産する作業に没頭することで、一定数の木材を確保することができたため、いよいよ木の道具を作る工程に入る。


 やり方は二通り存在し、一つはメニュー画面から【プロダクト】という項目をタップし、指定された素材を消費することで生産する方法。もう一つは現実世界と同じく、直接手作業で素材を使って作り出すというやり方だ。


「ひとまずは、プロダクトで生産してみるか」


 まずこのゲームの生産がどのようなものか理解するため、プロダクトの生産方法で作ってみることにした。


 木材を消費して【木の柄】というアイテムを生産する。すると全長五十センチほどの先端にT字型の取っ手が付いた木の棒のようなものが出現した。


 その木の柄とさらに木材を組み合わせることで【木のスコップ】が完成する。試しに鑑定してみると、こんな感じだ。



【木のスコップ】:どこにでもあるありふれたスコップ。素材が木のため耐久力はあまりない。 レア度:コモン 耐久度:50 / 50 品質:最低



 新しい項目に【耐久度】と【品質】というものが加わっているが、どういうものなのかはなんとなく理解できる。



《特定条件を満たしました。プレイヤー【スケゾー】は【初級木工】を獲得しました》



 木のスコップを生産したことで、【初級木工】というスキルをゲットできたようだ。それから、追加で【木のクワ】と【木のピッケル】も生産したところで、木材が尽きてしまった。


 ちなみにクワとピッケルも同様に、耐久力が50で品質が最低だった。


 これでチュートリアルで指示されたアイテムは生産できたので、次は納品する作業に移る。


「で、肝心の【納品ボックス】とやらが見当たらんのだが?」


 今遂行中のチュートリアルの情報では、作製した木の道具を【納品ボックス】という場所に納品せよということらしいのだが、それらしいものは見当たらない。


 しばらく四苦八苦しながら調べたところ、どうやら納品ボックスは自分で作るようだ。


 生産できるレシピ一覧の中に【納品ボックス】の名前を見つけたので、詳細を確認した。すると、納品ボックスは木材が六個あれば作製可能との情報を得られた。


「できれば、こういうのは初期設備として設置しておいて欲しかったな……」


 誰にともなく呟いた一言が、マイエリアの空間に空しく響き渡る。何はともあれ、追加で木材を調達しプロダクトで納品ボックスを作製することに成功した。


 あとはこれをどこか適当な場所に設置して使用するだけなのだが、ここにきてどこに設置すべきか迷いが生じてしまう。


「無難に切り株の隣するか? いや、それじゃあありきたり過ぎるだろうか。うーん、悩ましい!」


 たかだか、どこに箱を設置するのかという些細なことなのにも関わらず、十分以上悩み抜いてしまったことをあとになって馬鹿馬鹿しく思ってしまったが、ひとまず切り株のすぐそばに設置するという最初の案を採用した。


 ……なに? なら最初からそこに設置しておけばよかったって? ダッテショウガナイジャナイカ、オレダモノ。


 下らないことに時間を使ってしまった後れを取り戻すべく、さっそく納品ボックスを使い先ほど作った木の道具を納品する。


 納品した品物は、種類・レア度・品質・その他の項目を参考にして自動的に査定され、査定結果によってお金が手に入る仕組みのようだ。


「なになに、スコップが10マニーにクワが20、ピッケルは25か……なんか、しょっぱい気がするんだが」


 査定で表示された合計金額は、締めて55マニーという格安お値段だが、一番最初に作製可能な道具ということと、レア度や品質が最低レベルということもあってこの金額なのだろう。


 もう少し高くてもいいじゃないかと内心で不満に思いながらも、文句を言ったところで金額が変わることはないので、大人しく納品する。


 ウインドウに“納品完了”の文字が表示され、それからすぐにチュートリアルクリアの告知がされた。


「これで種が手に入ったわけか。さっそく調べてみるか」


 新しく手に入ったものは何でも調べてみる、というゲーム好きにとって極々自然な行為を行ってみた結果、分かったことは以下の通りであった。




【種】:何かの種。畑に植えると何かが生えてくる。 レア度:コモン 




「いやいや、もっと具体的な情報はないのか?」


 そのあまりにもあまりな説明に、思わず口をついて出た言葉だった。これでは、この【種】というアイテムがなんなのか、ほとんどわからないじゃないか。


 種の説明文に何とも言えない感情を抱いていると、タイミングを見計らったかのように次のチュートリアルが表示された。



《チュートリアル13 種を育てて収穫しよう!

 内容:クワを使って畑を耕し、種を育てて収穫する。

 報酬:400マニー、砂地》



 どうやら、林業のお次は農業をやらされるらしい。とりあえず、木材を使って再び木のクワを作製し、畑を耕していく。


 場所としては、中心にある切り株から少し離れた所で耕すことにする。


「おお、土の感触がなかなかリアルだな」


 地面にクワを突き立てると、程よい抵抗とともに土が掘り返されていく。しばらく畑を耕し続けていると“これ以上畑にできません”というメッセージが表示された。


 耕した畑の感じとしては、よく見かける一定間隔毎にうねと呼ばれる土を盛り上げた状態のものが、数本出来上がっていた。


 次に出来上がった畑に種を植える作業に移る。指を第一関節ほどの深さまで土に突き入れ、そこに種を植える。


 小さい頃、田舎にある祖父母の家に遊びに行ったとき、よく農作業を手伝わされた記憶が不意に蘇る。


「あの時は、ただ土を弄って遊んでただけだったけど、まさかこの歳で農作業をすることになるとは思わなかったな」


 懐かしい思い出に浸りながら植えた種の様子を窺っていると、まるで早送りの映像を見ているような速さですぐに発芽し、すくすくと成長して収穫ができるようにまでに育った。


 さっそく収穫して詳細を見てみたが、残念ながら得られた情報は【何かの草】という名前だけで他の情報はクエスションマークが表示されるだけだった。


 追加で種も複数個手に入れたので、さらに植えておく。この時なんとなく予想がついていたが、やはり二回目以降は収穫ができるようになるまで一定時間が掛かるようだ。


 そして、チュートリアル13もクリアし報酬のマニーと【砂地】というものを手に入れたのだが、一体これはなんなのだろうか?


「ふむふむ、どうやらマイエリアに設置ができる施設の一つらしいな。設置することで一定時間経過毎に【砂】と【石】が手に入ると……なるほど、早くも木器時代が終わり、石器時代が到来するということか。って木器時代の期間短すぎだろ!?」


 などと一人で突っ込んでいると、次のチュートリアルがやってくる。




《チュートリアル最終 石の道具を作ってみよう!

 内容:石を手に入れ、石のスコップ・石のクワ・石のピッケルのうちどれか一つを作製する。

 報酬:500マニー、ショップ、ハニワんず》




 長かったチュートリアルもいよいよこれで最後らしいが、このチュートリアルをクリアすれば【ショップ】と【ハニワんず】というものが手に入るらしい。


「ショップはいいとして、ハニワんずってなんだよ?」


 まあ、ここで悩んでてもしょうがないし、さっそく石の道具作製に向けまずは【砂地】を設置することにする。


 砂地の設置場所は、マイエリア中心部にある切り株を俯瞰で見た時の東側に設置する。ちなみに今まで配置した設備の位置を見ると、西側に木の苗木の植林場があり、北側に畑があることになる。


 砂地の広さとしては、縦四メートル、横六メートルほどの長方形の形をしている。


 さっそく砂地から砂と石を採取し、石の道具を作るため植林場から木材もいくつか入手していく。


 木の道具を作った時と同じく、木材から【木の柄】を作製し石から【石材】を作製する。その二つを組み合わせることで、石系統の道具を作製することに成功した。



【石のスコップ】:どこにでもあるありふれた石製のスコップ。木製と比べて耐久力と作業効率は向上しているものの、全体的には物足りない。 レア度:コモン 耐久度:80 / 80 品質:最低



 やはり木の道具よりも性能はいいが、それでも幾分かましな部類に入るものであるということが説明文から伝わってくる。


 とりあえず、スコップだけというのも可哀想なのでクワとピッケルも追加で作成し詳細を確認したが、予想通り他の二つもレア度・耐久力・品質が同じだった。


 なにはともあれ、これですべてのチュートリアルが完了したので、よしということにしよう。


「うん、なんだこれ?」


 チュートリアルが終了したことを告知するウインドウを閉じると、地面から湧いたかのように白い煙と共に謎の物体が現れる。


 その形たるや、人を模した人形のような風貌で細長い左右の腕は、それぞれ後頭部と腰部分にあてがわれおり、顔部分の目と口にあたる位置に三つの穴が開いている。


 大きさは四十から五十センチほどで、材質はおそらく土くれを固めて素焼きした土器のようで、まさにその姿は……そう、まさにその姿は――。


「何でここにハニワがあるんだ? まさかこれが【ハニワんず】ってヤツか?」

「そのとおりニワああああああああ!!」

「うわぁあああああ」

「べぶっ」
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