104 / 216
冒険編
プロポーズ
しおりを挟む
シュヴィーナの父親であるペイルと一緒に現れたライアンと呼ばれた男は、突然シュヴィーナの前に膝をつくと彼女の手を取り、その手にキスをする。
そして、驚いた様子のシュヴィーナに下から覗き込むように笑顔で何かを検討してほしいと言い始めた。
「あの、ライアン様。あのお話とはいったい?」
「おや?まだ聞いていなかったのかい?父上もここに来ていると聞いたから、てっきりあの話をしに来たのかと思ったよ」
「ライアン。その話はまだしていない。それに、いくら親戚だからといっていきなり人様の家に入るのはよくないだろう」
「父上!これは失礼いたしました」
ライアンに父上と呼ばれているのはケイリーで、彼はどうやらケイリーの息子であり、この国の王子ということになるようだ。
(なんかめんどくさそうだな)
俺は最大限に気配を消してじっと様子を見ていると、ライアンが何やら一世一代の覚悟を決めたような表情へと変わり、シュヴィーナの方へと目を向ける。
「シュヴィーナ。まだ話を聞いていないのなら改めて言うよ。実は君の両親や僕の両親にはもう話しているんだが、どうか僕と結婚してくれないだろうか!」
「…え?」
(おぉ、プロポーズだ)
まさか目の前で人のプロポーズを見せられるとは思ってもいなかったので、俺は思わず驚いてしまった。
ライアンの年齢がいくつなのかは分からないが、エルフは長命種であり、だいたい500年ほど生きる。そのため結婚に対してはあまり年齢差を気にしない人たちが多いのだ。
もちろん幼すぎればあれだが、その時は相手がある程度大人になるまで待つのは割とよくあることだし、シュヴィーナももう直ぐ14になるはずなので、あと数年後には結婚しても問題は無いだろう。
プロポーズをされた当のシュヴィーナは、突然のことに戸惑っているのか、驚いた表情のまま動かなくなってしまった。
「突然のことでシュヴィーナが驚いているのもわかる。だが僕は本気なんだ!幼い頃から君のことを見ていて、君がこの国を出て旅に行ってしまったあの日、僕はいつも近くにいた君がいなくなった事で自分の気持ちに気がついた。
僕たちには確かに歳の差があるし、それに従兄という関係ではあるけれど、僕は君が好きなんだ!君が大人になるまではもちろん待つ。だがら、大人になったら僕と結婚してもらえないだろうか!」
ライアンの熱烈なプロポーズに対して、ケイリーは何故か頭を抱えており、シュヴィーナの両親は彼女がどう返事をするのか様子を見ているようだった。
そして、シュヴィーナは…
「いや、あの…」
どう返事をしたら良いのか戸惑いながら、何故か俺の方をチラッと見てくる。
もちろん彼女の正面にいるライアンがそんな彼女の視線の動きに気づかないはずもなく、彼もそれに合わせて俺の方を見るわけで…
(なんでこっちを見るんだよ)
「…君は誰かな」
すると、ようやく俺たちの存在に気がついた彼は、まるで俺のことを親の仇でも見るように睨んできた。
「フィエラ、聞かれてるぞ」
「ん。私はフィエラ。シュヴィーナとパーティーを組んでる」
俺に話を振られたフィエラは、素直に名前を名乗ると、シュヴィーナとの関係も簡単に説明した。
「そうか。フィエラさんだね。それで?もう1人の君は?」
ライアンはフィエラが名乗っている間も彼女の方へと視線を向けることは無く、ずっと俺のことを睨んでいた。
「…俺はエイル。フィエラと同じだ」
「そうか。なら、シュヴィーナとの関係は?」
「同じだと言っただろ。パーティーを組んでいるだけだ」
「彼が言っていることは本当かい?シュヴィーナ」
ライアンは俺の言葉を聞くと、次は確認のためシュヴィーナへと問いかける。
「ほ、本当よ。彼とは何も無いわ」
シュヴィーナは口ではそう言うが、少し残念そうな表情で俺のことを見ると、今度は床の方へと視線を向ける。
「なら、今ここで返事を…」
「ライアン、そこまでだ。今は重要な話をしている最中なのだ。すまないがその話はまた今度にしてくれ」
すると、この様子をずっと静観していたケイリーが返事を急かそうとするライアンの言葉を遮り、この話を終わらせようとする。
「父上…わかりました。シュヴィーナ、返事はまた今度聞きにくるよ。今日はこれで失礼するね。急に来てすまなかった」
ライアンはそう言うと、ずっと握っていたシュヴィーナの手を離し、その場から立ち上がって扉の方へと向かっていき、何事もなかったかのように家から出て行った。
(はぁ。やっぱりめんどうだ)
しかし、俺はそんな彼が最後にこちらを見た瞬間を見逃さず、その瞳に明確な敵意が込められていたことにも気がついていた。
「あの王子、エルに嫉妬してる」
「知ってるよ。全く、俺にその気は無いのに本当に迷惑だな。しかも、ああいうやつが一番タチが悪いから余計に最悪だ。いっそどこかの馬鹿王子みたいに欲望に素直な方がやりやすかったのにな」
俺にはシュヴィーナに対して恋愛感情なんてものは無いし、素直にただパーティーを組んでいるだけだと説明したのに、どうやらあの男は俺のことを恋敵だとでも思ったようだ。
しかもファルメルの馬鹿王子とは違い、ライアンは冷静に動くタイプのようで、見た感じシュヴィーナに対する愛情もかなり重いもののように見えた。
そういうやつは表立って何かをしてくることはまず無いため、すぐに片付けることも難しいので本当に面倒なのだ。
「はぁ、むしろ結婚したいなら勝手にしてくれれば良いんだよ。なんで俺が巻き込まれるんだ」
「仕方ない。シュヴィにも選ぶ権利はあるし、彼女にも感情はあるから」
フィエラと小声で話をしながら、俺はこの国に来たことを少し後悔し始めるが、とりあえず手を出されてから始末すれば良いかと判断し、ケイリーたちの方へと意識を向ける。
「シュヴィーナ、ライアンが言っていたことは確かに事実だが気にすることはないぞ。
お前はまだ子供なのだから、好いた相手ができたらその人と結ばれるのが一番良いさ。
それがライアンであるならあいつとでも良いし、他に出来たのならその人と結ばれるよう頑張るのも良い。
お前の人生だ。お前の好きなように生きなさい。お前の両親もきっと同じ気持ちだ」
「ケイリーさん…」
シュヴィーナはケイリーのことを一度見ると、次に自分の両親へと目をやる。
すると、2人も彼女に向かって頷いたり微笑んだりしており、彼らもシュヴィーナの好きなようにして良いと言っているようだった。
そんな彼らを見て俺は…
(なんだこの状況)
思わず冷めた感情で彼らの様子を眺めていた。
確かにシュヴィーナの人生なので好きにしてもらうのは良い事だし、それを周りが認めるのもすごく良いことだと思う。
だが、それに全く関係無いはずの俺がライアンに敵視され、しかも先ほどまでヒュドラという国にとって大事な話をしていたにも関わらず、いつの間にかシュヴィーナの人生についての話になっているこの状況に思わず呆れてしまう。
「あの、シュヴィーナの今後の話は後にしてもらって、とりあえずヒュドラについての話を終わらせませんか?」
俺がそう言うと、ケイリーたちはすっかりヒュドラのことを忘れていたのか、言われて思い出したかのように一つ咳払いをする。
「すまない。それで、どこまで話しただろうか?」
「俺がヒュドラを倒しに行くってところまでです。そこであの男が入ってきたんですよ。
てか、面倒なんでもう良いですよね?あなたたちでは倒せないでしょうし、それにさっきも言った通り俺だけで倒せればあなたたちに被害は無いわけで、任せてもらえますよね?」
ライアンのせいで機嫌が悪くなった俺は、傲慢な態度で強引に話を決めにいく。
「それは些か我々を舐めすぎというものではないかね?君がどれだけ強いのかは知らないが、ヒュドラを君だけで倒すのはやはり無理だ」
「チッ。めんどくせぇ」
俺はシュヴィーナの家のみを結界魔法で何重にも覆い外に魔力が漏れ出ないようにすると、この部屋の中だけを俺の濃密な魔力で一気に満たす。
「くっ?!な、何というか魔力の密度だ!」
「こ、呼吸が…」
ケイリーはあまりの魔力の濃さに大量の冷や汗を流し、ペイルは片膝を付いて息苦しそうにする。
「エイルさん、そこまでです。あなたの強さは十分に理解しました。なのでその魔力を抑えてください」
しかし、セシルは俺の魔力を受けても平然とした様子で立っており、俺に魔力を抑えるよう言ってくる。
「…わかりました。セシルさんに免じてこれ以上はやめておきましょう」
俺が魔力を抑えると、ケイリーは大きく息を吐き、ペイルはシュヴィーナに背中を摩られながらゆっくりと呼吸を整える。
「エイルさん。先ほども申しましたが、あなたが強いことは理解しました。
おそらくエルフの戦士たちが束になって挑んだとしても、彼らに勝ち目は無い。
それに、ヒュドラの討伐に同行させたとしても足手まといになるだけでしょう」
「どうでしょうね。もしその戦士の中にセシルさんがいたら、今の俺では勝てないかもしれませんよ?」
「ふふ。私はただの母親なので戦闘には参加しませんよ?ですが、この子を害するというのなら全力でお相手することになりますが」
俺とセシルはしばらく黙って視線を合わせた後、どちらからとも無く視線を外し、セシルがヒュドラの討伐についての話をする。
「ヒュドラの件ですが、さすがにすぐに許可を出すことはできません。ケイリーさんも他の人と話す必要があるでしょうし、しばらく待ってもらえますか?」
「いいですよ。なら、討伐はしませんが偵察くらいは許してくれますよね?そこが妥協点です」
「わかりました。偵察については許可しましょう。いいですね、ケイリーさん?」
「あ、あぁ」
「ありがとうございます」
その後、俺たちはいつ偵察に行くかなどを話し合ったあと、この国にいる間はシュヴィーナの家に泊まって良いということで、その日は夕食を食べたあと与えられた部屋で休むのであった。
そして、驚いた様子のシュヴィーナに下から覗き込むように笑顔で何かを検討してほしいと言い始めた。
「あの、ライアン様。あのお話とはいったい?」
「おや?まだ聞いていなかったのかい?父上もここに来ていると聞いたから、てっきりあの話をしに来たのかと思ったよ」
「ライアン。その話はまだしていない。それに、いくら親戚だからといっていきなり人様の家に入るのはよくないだろう」
「父上!これは失礼いたしました」
ライアンに父上と呼ばれているのはケイリーで、彼はどうやらケイリーの息子であり、この国の王子ということになるようだ。
(なんかめんどくさそうだな)
俺は最大限に気配を消してじっと様子を見ていると、ライアンが何やら一世一代の覚悟を決めたような表情へと変わり、シュヴィーナの方へと目を向ける。
「シュヴィーナ。まだ話を聞いていないのなら改めて言うよ。実は君の両親や僕の両親にはもう話しているんだが、どうか僕と結婚してくれないだろうか!」
「…え?」
(おぉ、プロポーズだ)
まさか目の前で人のプロポーズを見せられるとは思ってもいなかったので、俺は思わず驚いてしまった。
ライアンの年齢がいくつなのかは分からないが、エルフは長命種であり、だいたい500年ほど生きる。そのため結婚に対してはあまり年齢差を気にしない人たちが多いのだ。
もちろん幼すぎればあれだが、その時は相手がある程度大人になるまで待つのは割とよくあることだし、シュヴィーナももう直ぐ14になるはずなので、あと数年後には結婚しても問題は無いだろう。
プロポーズをされた当のシュヴィーナは、突然のことに戸惑っているのか、驚いた表情のまま動かなくなってしまった。
「突然のことでシュヴィーナが驚いているのもわかる。だが僕は本気なんだ!幼い頃から君のことを見ていて、君がこの国を出て旅に行ってしまったあの日、僕はいつも近くにいた君がいなくなった事で自分の気持ちに気がついた。
僕たちには確かに歳の差があるし、それに従兄という関係ではあるけれど、僕は君が好きなんだ!君が大人になるまではもちろん待つ。だがら、大人になったら僕と結婚してもらえないだろうか!」
ライアンの熱烈なプロポーズに対して、ケイリーは何故か頭を抱えており、シュヴィーナの両親は彼女がどう返事をするのか様子を見ているようだった。
そして、シュヴィーナは…
「いや、あの…」
どう返事をしたら良いのか戸惑いながら、何故か俺の方をチラッと見てくる。
もちろん彼女の正面にいるライアンがそんな彼女の視線の動きに気づかないはずもなく、彼もそれに合わせて俺の方を見るわけで…
(なんでこっちを見るんだよ)
「…君は誰かな」
すると、ようやく俺たちの存在に気がついた彼は、まるで俺のことを親の仇でも見るように睨んできた。
「フィエラ、聞かれてるぞ」
「ん。私はフィエラ。シュヴィーナとパーティーを組んでる」
俺に話を振られたフィエラは、素直に名前を名乗ると、シュヴィーナとの関係も簡単に説明した。
「そうか。フィエラさんだね。それで?もう1人の君は?」
ライアンはフィエラが名乗っている間も彼女の方へと視線を向けることは無く、ずっと俺のことを睨んでいた。
「…俺はエイル。フィエラと同じだ」
「そうか。なら、シュヴィーナとの関係は?」
「同じだと言っただろ。パーティーを組んでいるだけだ」
「彼が言っていることは本当かい?シュヴィーナ」
ライアンは俺の言葉を聞くと、次は確認のためシュヴィーナへと問いかける。
「ほ、本当よ。彼とは何も無いわ」
シュヴィーナは口ではそう言うが、少し残念そうな表情で俺のことを見ると、今度は床の方へと視線を向ける。
「なら、今ここで返事を…」
「ライアン、そこまでだ。今は重要な話をしている最中なのだ。すまないがその話はまた今度にしてくれ」
すると、この様子をずっと静観していたケイリーが返事を急かそうとするライアンの言葉を遮り、この話を終わらせようとする。
「父上…わかりました。シュヴィーナ、返事はまた今度聞きにくるよ。今日はこれで失礼するね。急に来てすまなかった」
ライアンはそう言うと、ずっと握っていたシュヴィーナの手を離し、その場から立ち上がって扉の方へと向かっていき、何事もなかったかのように家から出て行った。
(はぁ。やっぱりめんどうだ)
しかし、俺はそんな彼が最後にこちらを見た瞬間を見逃さず、その瞳に明確な敵意が込められていたことにも気がついていた。
「あの王子、エルに嫉妬してる」
「知ってるよ。全く、俺にその気は無いのに本当に迷惑だな。しかも、ああいうやつが一番タチが悪いから余計に最悪だ。いっそどこかの馬鹿王子みたいに欲望に素直な方がやりやすかったのにな」
俺にはシュヴィーナに対して恋愛感情なんてものは無いし、素直にただパーティーを組んでいるだけだと説明したのに、どうやらあの男は俺のことを恋敵だとでも思ったようだ。
しかもファルメルの馬鹿王子とは違い、ライアンは冷静に動くタイプのようで、見た感じシュヴィーナに対する愛情もかなり重いもののように見えた。
そういうやつは表立って何かをしてくることはまず無いため、すぐに片付けることも難しいので本当に面倒なのだ。
「はぁ、むしろ結婚したいなら勝手にしてくれれば良いんだよ。なんで俺が巻き込まれるんだ」
「仕方ない。シュヴィにも選ぶ権利はあるし、彼女にも感情はあるから」
フィエラと小声で話をしながら、俺はこの国に来たことを少し後悔し始めるが、とりあえず手を出されてから始末すれば良いかと判断し、ケイリーたちの方へと意識を向ける。
「シュヴィーナ、ライアンが言っていたことは確かに事実だが気にすることはないぞ。
お前はまだ子供なのだから、好いた相手ができたらその人と結ばれるのが一番良いさ。
それがライアンであるならあいつとでも良いし、他に出来たのならその人と結ばれるよう頑張るのも良い。
お前の人生だ。お前の好きなように生きなさい。お前の両親もきっと同じ気持ちだ」
「ケイリーさん…」
シュヴィーナはケイリーのことを一度見ると、次に自分の両親へと目をやる。
すると、2人も彼女に向かって頷いたり微笑んだりしており、彼らもシュヴィーナの好きなようにして良いと言っているようだった。
そんな彼らを見て俺は…
(なんだこの状況)
思わず冷めた感情で彼らの様子を眺めていた。
確かにシュヴィーナの人生なので好きにしてもらうのは良い事だし、それを周りが認めるのもすごく良いことだと思う。
だが、それに全く関係無いはずの俺がライアンに敵視され、しかも先ほどまでヒュドラという国にとって大事な話をしていたにも関わらず、いつの間にかシュヴィーナの人生についての話になっているこの状況に思わず呆れてしまう。
「あの、シュヴィーナの今後の話は後にしてもらって、とりあえずヒュドラについての話を終わらせませんか?」
俺がそう言うと、ケイリーたちはすっかりヒュドラのことを忘れていたのか、言われて思い出したかのように一つ咳払いをする。
「すまない。それで、どこまで話しただろうか?」
「俺がヒュドラを倒しに行くってところまでです。そこであの男が入ってきたんですよ。
てか、面倒なんでもう良いですよね?あなたたちでは倒せないでしょうし、それにさっきも言った通り俺だけで倒せればあなたたちに被害は無いわけで、任せてもらえますよね?」
ライアンのせいで機嫌が悪くなった俺は、傲慢な態度で強引に話を決めにいく。
「それは些か我々を舐めすぎというものではないかね?君がどれだけ強いのかは知らないが、ヒュドラを君だけで倒すのはやはり無理だ」
「チッ。めんどくせぇ」
俺はシュヴィーナの家のみを結界魔法で何重にも覆い外に魔力が漏れ出ないようにすると、この部屋の中だけを俺の濃密な魔力で一気に満たす。
「くっ?!な、何というか魔力の密度だ!」
「こ、呼吸が…」
ケイリーはあまりの魔力の濃さに大量の冷や汗を流し、ペイルは片膝を付いて息苦しそうにする。
「エイルさん、そこまでです。あなたの強さは十分に理解しました。なのでその魔力を抑えてください」
しかし、セシルは俺の魔力を受けても平然とした様子で立っており、俺に魔力を抑えるよう言ってくる。
「…わかりました。セシルさんに免じてこれ以上はやめておきましょう」
俺が魔力を抑えると、ケイリーは大きく息を吐き、ペイルはシュヴィーナに背中を摩られながらゆっくりと呼吸を整える。
「エイルさん。先ほども申しましたが、あなたが強いことは理解しました。
おそらくエルフの戦士たちが束になって挑んだとしても、彼らに勝ち目は無い。
それに、ヒュドラの討伐に同行させたとしても足手まといになるだけでしょう」
「どうでしょうね。もしその戦士の中にセシルさんがいたら、今の俺では勝てないかもしれませんよ?」
「ふふ。私はただの母親なので戦闘には参加しませんよ?ですが、この子を害するというのなら全力でお相手することになりますが」
俺とセシルはしばらく黙って視線を合わせた後、どちらからとも無く視線を外し、セシルがヒュドラの討伐についての話をする。
「ヒュドラの件ですが、さすがにすぐに許可を出すことはできません。ケイリーさんも他の人と話す必要があるでしょうし、しばらく待ってもらえますか?」
「いいですよ。なら、討伐はしませんが偵察くらいは許してくれますよね?そこが妥協点です」
「わかりました。偵察については許可しましょう。いいですね、ケイリーさん?」
「あ、あぁ」
「ありがとうございます」
その後、俺たちはいつ偵察に行くかなどを話し合ったあと、この国にいる間はシュヴィーナの家に泊まって良いということで、その日は夕食を食べたあと与えられた部屋で休むのであった。
0
お気に入りに追加
246
あなたにおすすめの小説
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
私が豚令嬢ですけど、なにか? ~豚のように太った侯爵令嬢に転生しましたが、ダイエットに成功して絶世の美少女になりました~
米津
ファンタジー
侯爵令嬢、フローラ・メイ・フォーブズの体はぶくぶくに太っており、その醜い見た目から豚令嬢と呼ばれていた。
そんな彼女は第一王子の誕生日会で盛大にやらかし、羞恥のあまり首吊自殺を図ったのだが……。
あまりにも首の肉が厚かったために自殺できず、さらには死にかけたことで前世の記憶を取り戻した。
そして、
「ダイエットだ! 太った体など許せん!」
フローラの前世は太った体が嫌いな男だった。
必死にダイエットした結果、豚令嬢から精霊のように美しい少女へと変身を遂げた。
最初は誰も彼女が豚令嬢だとは気づかず……。
フローラの今と昔のギャップに周囲は驚く。
さらに、当人は自分の顔が美少女だと自覚せず、無意識にあらゆる人を魅了していく。
男も女も大人も子供も関係なしに、人々は彼女の魅力に惹かれていく。
裏切られ献身男は図らずも悪役貴族へと~わがまま令息に転生した男はもう他人の喰い物にならない~
こまの ととと
ファンタジー
男はただひたすら病弱な彼女の為に生きて、その全てを賭けて献身の限りを尽くしながらもその人生を不本意な形で終える事となった。
気づいたら見知らぬお坊ちゃまへと成り代わっていた男は、もう他人の為に生きる事をやめて己の道を進むと決める。
果たして彼は孤高の道を突き進めるのか?
それとも、再び誰かを愛せるようになるのか?
転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~
ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉
攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。
私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。
美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~!
【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避
【2章】王国発展・vs.ヒロイン
【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。
※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。
※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差)
ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/
Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/
※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる