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冒険編
面倒事の予感
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翌日になると、俺とフィエラは準備を済ませて朝から冒険者ギルドへと来ていた。
ミネルバにある冒険者ギルドは他のところに比べると白い壁で作られたシンプルな作りをしており、窓とかも開けてあるため開放感のある場所だった。
(海風が入ってきて気持ちいいな)
そんな感想を抱きながら中に入ると、中もとても賑わっており、依頼掲示板には多くの冒険者が集まっていた。
「雰囲気も悪くないな」
「ん。前みたいに絡んでくる人いなさそう」
フィエラの言う通り、アドニーアにあった冒険者ギルドとは違い、昼間から酒を飲んでいるような人たちもおらず、皆んなが真剣に依頼を選んでいるように見えた。
俺たちはそんな冒険者たちが集まっている依頼掲示板の前を横切ると、そのまま受付へと向う。
「すみません」
「はい。どうされましたか?」
「この街にあるダンジョンに潜りたいので、許可をお願いします」
「かしこまりました。どちらのダンジョンをご希望でしょうか」
ミネルバには2つのダンジョンが存在しており、一つはCランクダンジョンでもう一つがAランクダンジョンだ。
Cランクダンジョンは門を出てから少し歩いたところにあり、中は草原系の作りとなっている。
出てくるのは牛型の魔物や鳥型の魔物で、深さは20階層となっている。
次にAランクダンジョンだが、こちらは船に乗っていく必要がある。というのも、このAランクダンジョンの入り口は少し特殊で、海底にあるのだ。
入り口周辺は結界魔法で覆われているため中に海水は存在しないが、その結界を通るには冒険者ギルドの許可がいる。
そして、中は洞窟のような作りとなっており、水場が多くて出てくる魔物は水でできた魚系の魔物や巨大なイカなど海に生きる生物がほとんどだ。
階層は30階層とヴァレンタイン公爵領の氷雪の偽造に比べて浅めだが、その分広さはかなり広い作りとなっている。
「Aランクダンジョンでお願いします」
「かしこまりました。Aランクダンジョン『海底の棲家』ですね。ギルドカードのご提示をお願いします」
俺とフィエラは指示された通りギルドカードをテーブルに置くと、それを受け取った女性は驚いた顔をしてカードと俺たちを見比べる。
「え、Sランク冒険者ですか。その若さで…」
確かに俺らの年齢でSランクになった者は過去にもほとんどいないため、彼女が驚くのも無理はなかった。
「ありがとうございます。それより、手続きをお願いしてもいいですか?」
「あ。そ、そうでしたね。すみませんでした」
女性はすぐに気を取りなおすと、ダンジョンの許可を登録する専用の魔道具にギルドカードを翳す。
「これで終わりました。では、ダンジョンにいく方法についてご説明しますね。
Aランクダンジョン『海底の棲家』に行く方法は、ここから少し歩いたところにある港から出ている船のみとなります。
行きの船は朝の9時に一本と昼の12時に一本。帰りは午後13時の一本と16時の一本のみです。街の中心に時計台があるので、そちらで時間を確認していただくと分かりやすいと思います。
また、ダンジョンの結界内には宿屋や露店もございますので、数日間ダンジョンに潜る場合でも心配はございません。
ただ、宿泊料や商品のお値段が通常よりも高くなっておりますので、そこだけお気をつけください」
「わかりました。ありがとうございます」
「いえいえ。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
これまで丁寧に説明してくれた受付の女性にお礼を伝えると、俺らは時間を確認するために街の中心にある時計台へと向かう。
街の中心というだけあって多くの人が集まっており少し歩きづらさはあったが、時計台は高い位置にあるため少し離れた場所からでも時間を確認することができた。
「あれだな。今が10時半くらいだから、12時のに乗るとしたらあと一時間半か」
「出発までまだ時間ある。どうする?」
「そうだなぁ」
俺は何をして時間を潰そうかと考えていると、そういえばここ数日で、買い溜めしていた食料がかなり減っていたことを思い出した。
「食料を買いに行こう」
「食料?」
「あぁ。どっかのアホが遠慮無しに食べまくったから、ほとんどなくなっていたのを思い出した」
どっかのアホとは言わずもがなシュヴィーナのことであり、フィエラもそれを察して珍しく少しだけ楽しそうに笑った。
「なら、またたくさん買っておかないと」
「たくさん?」
「シュヴィにはまた会う気がする」
(まじかよ)
フィエラの言葉を聞いて、俺は心の中でそう呟く。彼女の勘はよく当たるため、またシュヴィーナに会う可能性があると思うと精神的な疲れが襲ってくる。
「ふふ。だからたくさん買っておかないとね」
フィエラはそう言うと、くるりと振り返って屋台の方へと歩いていく。
俺は「はぁ」と一つため息を吐くと、気持ち少し重くなった足を動かして彼女の後をついて行くのであった。
買い物を終えた俺たちは、いよいよダンジョンに向かうため船乗り場へと来ていた。
「Aランクダンジョン!海底の棲家行きの乗船チケットはこちらで販売しております!まだお時間はありますので、慌てずしっかりとお並びください!」
冒険者ギルドの職員と思わしき人が乗船チケットについて大きな声で説明しており、俺たちはそのチケットを買うために列へと並ぶため歩いていく。
そして列に並んで少しすると、突然男が横から割り込んできた。
「…おい」
「あぁ?なんだガキ?」
俺がその男に声をかけると、男は振り返って睨みつけながら俺のことを見てくる。
「俺らが最初に並んでいたんだが?なに堂々と横入りしてんだ?」
「横入りだぁ?お前らみたいなガキがAランクダンジョンに入れるわけないだろ。並ぶだけ無駄だからさっさと帰れや」
男はそう言って一向に列から抜けようとせず、俺のことを睨み続ける。
すると、こいつの仲間らしき3人の女性が寄ってきて男へと声をかける。
「リグル。何しているのかしら?」
「揉め事?」
「早く行こうよー」
「あぁ。メリダ、ヘレン、ジゼル。このガキが俺に横入りだっていちゃもんつけてきやがってよ」
「あら、そうなのね。坊や、ここはあなたみたいな子供がくるような場所じゃないわよ?早く帰ったほうがいいわ」
そう声をかけてきたのはメリダと呼ばれていた魔法使いの女性で、赤い髪が特徴的な人だった。
「時間の無駄。あなたたちは帰るべき」
無表情で帰るように促してきたのはヘレンという弓を背負った緑色の髪をした女性で、雰囲気が少しフィエラに似ているように感じられた。
「そうそう。あたし達は時間の無駄を嫌うからね。だから順番、あたし達に譲ってくれるよね?」
傲慢な態度で聞いてくるのはジゼルと呼ばれていた黒髪の女性で、腰に刺した短剣と軽装備なところを見るに斥候といったところか。
俺がどう対処しようかと考えていた時、男がフィエラのことを見て口笛を鳴らした。
「ひゅ~。お前めっちゃ可愛いな。そんな男なんか捨てて俺のパーティーに来ないか?俺たちはAランクパーティーなんだ。実力だって金だってあるんだぜ?どうだ?もちろんくるよな?」
(Aランクなんだって、これからいくのがAランクダンジョンなんだから当たり前だろ)
俺がそんな事を考えていると、リグルと呼ばれていた男は舌舐めずりをして下心見え見えの表情でフィエラに近づき、肩を組もうと腕を伸ばす。
しかし、フィエラはその腕を容赦なく叩き落とすと、汚物でも見るような冷ややかな視線でリグルのことを睨みつけた。
「触らないで。私はあなた何かに興味はない。それにエルの方が圧倒的に強いから雑魚は黙ってて」
まさか自分が拒絶されると思っていなかったのか、男は少しだけ間抜けな顔をしていた。そして、周囲にいた他の冒険者達もあっさり振られたリグルをみてクスクスと笑っている。
そんな周囲の反応とフィエラの態度に怒ったリグルは、顔を真っ赤にして怒鳴りつけてくる。
「くそガキが!調子に乗るなよ!」
リグルが感情のままにフィエラを殴ろうとした時、騒ぎを聞きつけたギルド職員が駆け寄ってくる。
「何事ですか!」
職員は周りから事情を聞き出すと、リグル達にしっかりと最後尾から並ぶように声をかけ、それでも文句を言う彼らにランクの降格をチラつかせると、彼らは渋々最後尾へと並び直した。
しかし、リグルは去り際も最後まで俺たちを睨むことはやめようとせず、俺はなんだか面倒事が起こりそうな予感がするのであった。
ミネルバにある冒険者ギルドは他のところに比べると白い壁で作られたシンプルな作りをしており、窓とかも開けてあるため開放感のある場所だった。
(海風が入ってきて気持ちいいな)
そんな感想を抱きながら中に入ると、中もとても賑わっており、依頼掲示板には多くの冒険者が集まっていた。
「雰囲気も悪くないな」
「ん。前みたいに絡んでくる人いなさそう」
フィエラの言う通り、アドニーアにあった冒険者ギルドとは違い、昼間から酒を飲んでいるような人たちもおらず、皆んなが真剣に依頼を選んでいるように見えた。
俺たちはそんな冒険者たちが集まっている依頼掲示板の前を横切ると、そのまま受付へと向う。
「すみません」
「はい。どうされましたか?」
「この街にあるダンジョンに潜りたいので、許可をお願いします」
「かしこまりました。どちらのダンジョンをご希望でしょうか」
ミネルバには2つのダンジョンが存在しており、一つはCランクダンジョンでもう一つがAランクダンジョンだ。
Cランクダンジョンは門を出てから少し歩いたところにあり、中は草原系の作りとなっている。
出てくるのは牛型の魔物や鳥型の魔物で、深さは20階層となっている。
次にAランクダンジョンだが、こちらは船に乗っていく必要がある。というのも、このAランクダンジョンの入り口は少し特殊で、海底にあるのだ。
入り口周辺は結界魔法で覆われているため中に海水は存在しないが、その結界を通るには冒険者ギルドの許可がいる。
そして、中は洞窟のような作りとなっており、水場が多くて出てくる魔物は水でできた魚系の魔物や巨大なイカなど海に生きる生物がほとんどだ。
階層は30階層とヴァレンタイン公爵領の氷雪の偽造に比べて浅めだが、その分広さはかなり広い作りとなっている。
「Aランクダンジョンでお願いします」
「かしこまりました。Aランクダンジョン『海底の棲家』ですね。ギルドカードのご提示をお願いします」
俺とフィエラは指示された通りギルドカードをテーブルに置くと、それを受け取った女性は驚いた顔をしてカードと俺たちを見比べる。
「え、Sランク冒険者ですか。その若さで…」
確かに俺らの年齢でSランクになった者は過去にもほとんどいないため、彼女が驚くのも無理はなかった。
「ありがとうございます。それより、手続きをお願いしてもいいですか?」
「あ。そ、そうでしたね。すみませんでした」
女性はすぐに気を取りなおすと、ダンジョンの許可を登録する専用の魔道具にギルドカードを翳す。
「これで終わりました。では、ダンジョンにいく方法についてご説明しますね。
Aランクダンジョン『海底の棲家』に行く方法は、ここから少し歩いたところにある港から出ている船のみとなります。
行きの船は朝の9時に一本と昼の12時に一本。帰りは午後13時の一本と16時の一本のみです。街の中心に時計台があるので、そちらで時間を確認していただくと分かりやすいと思います。
また、ダンジョンの結界内には宿屋や露店もございますので、数日間ダンジョンに潜る場合でも心配はございません。
ただ、宿泊料や商品のお値段が通常よりも高くなっておりますので、そこだけお気をつけください」
「わかりました。ありがとうございます」
「いえいえ。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
これまで丁寧に説明してくれた受付の女性にお礼を伝えると、俺らは時間を確認するために街の中心にある時計台へと向かう。
街の中心というだけあって多くの人が集まっており少し歩きづらさはあったが、時計台は高い位置にあるため少し離れた場所からでも時間を確認することができた。
「あれだな。今が10時半くらいだから、12時のに乗るとしたらあと一時間半か」
「出発までまだ時間ある。どうする?」
「そうだなぁ」
俺は何をして時間を潰そうかと考えていると、そういえばここ数日で、買い溜めしていた食料がかなり減っていたことを思い出した。
「食料を買いに行こう」
「食料?」
「あぁ。どっかのアホが遠慮無しに食べまくったから、ほとんどなくなっていたのを思い出した」
どっかのアホとは言わずもがなシュヴィーナのことであり、フィエラもそれを察して珍しく少しだけ楽しそうに笑った。
「なら、またたくさん買っておかないと」
「たくさん?」
「シュヴィにはまた会う気がする」
(まじかよ)
フィエラの言葉を聞いて、俺は心の中でそう呟く。彼女の勘はよく当たるため、またシュヴィーナに会う可能性があると思うと精神的な疲れが襲ってくる。
「ふふ。だからたくさん買っておかないとね」
フィエラはそう言うと、くるりと振り返って屋台の方へと歩いていく。
俺は「はぁ」と一つため息を吐くと、気持ち少し重くなった足を動かして彼女の後をついて行くのであった。
買い物を終えた俺たちは、いよいよダンジョンに向かうため船乗り場へと来ていた。
「Aランクダンジョン!海底の棲家行きの乗船チケットはこちらで販売しております!まだお時間はありますので、慌てずしっかりとお並びください!」
冒険者ギルドの職員と思わしき人が乗船チケットについて大きな声で説明しており、俺たちはそのチケットを買うために列へと並ぶため歩いていく。
そして列に並んで少しすると、突然男が横から割り込んできた。
「…おい」
「あぁ?なんだガキ?」
俺がその男に声をかけると、男は振り返って睨みつけながら俺のことを見てくる。
「俺らが最初に並んでいたんだが?なに堂々と横入りしてんだ?」
「横入りだぁ?お前らみたいなガキがAランクダンジョンに入れるわけないだろ。並ぶだけ無駄だからさっさと帰れや」
男はそう言って一向に列から抜けようとせず、俺のことを睨み続ける。
すると、こいつの仲間らしき3人の女性が寄ってきて男へと声をかける。
「リグル。何しているのかしら?」
「揉め事?」
「早く行こうよー」
「あぁ。メリダ、ヘレン、ジゼル。このガキが俺に横入りだっていちゃもんつけてきやがってよ」
「あら、そうなのね。坊や、ここはあなたみたいな子供がくるような場所じゃないわよ?早く帰ったほうがいいわ」
そう声をかけてきたのはメリダと呼ばれていた魔法使いの女性で、赤い髪が特徴的な人だった。
「時間の無駄。あなたたちは帰るべき」
無表情で帰るように促してきたのはヘレンという弓を背負った緑色の髪をした女性で、雰囲気が少しフィエラに似ているように感じられた。
「そうそう。あたし達は時間の無駄を嫌うからね。だから順番、あたし達に譲ってくれるよね?」
傲慢な態度で聞いてくるのはジゼルと呼ばれていた黒髪の女性で、腰に刺した短剣と軽装備なところを見るに斥候といったところか。
俺がどう対処しようかと考えていた時、男がフィエラのことを見て口笛を鳴らした。
「ひゅ~。お前めっちゃ可愛いな。そんな男なんか捨てて俺のパーティーに来ないか?俺たちはAランクパーティーなんだ。実力だって金だってあるんだぜ?どうだ?もちろんくるよな?」
(Aランクなんだって、これからいくのがAランクダンジョンなんだから当たり前だろ)
俺がそんな事を考えていると、リグルと呼ばれていた男は舌舐めずりをして下心見え見えの表情でフィエラに近づき、肩を組もうと腕を伸ばす。
しかし、フィエラはその腕を容赦なく叩き落とすと、汚物でも見るような冷ややかな視線でリグルのことを睨みつけた。
「触らないで。私はあなた何かに興味はない。それにエルの方が圧倒的に強いから雑魚は黙ってて」
まさか自分が拒絶されると思っていなかったのか、男は少しだけ間抜けな顔をしていた。そして、周囲にいた他の冒険者達もあっさり振られたリグルをみてクスクスと笑っている。
そんな周囲の反応とフィエラの態度に怒ったリグルは、顔を真っ赤にして怒鳴りつけてくる。
「くそガキが!調子に乗るなよ!」
リグルが感情のままにフィエラを殴ろうとした時、騒ぎを聞きつけたギルド職員が駆け寄ってくる。
「何事ですか!」
職員は周りから事情を聞き出すと、リグル達にしっかりと最後尾から並ぶように声をかけ、それでも文句を言う彼らにランクの降格をチラつかせると、彼らは渋々最後尾へと並び直した。
しかし、リグルは去り際も最後まで俺たちを睨むことはやめようとせず、俺はなんだか面倒事が起こりそうな予感がするのであった。
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