黒龍帝のファンタジア

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黒龍帝VS混成部隊②

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「ほら、お返しだ! 桐谷流 体術 一の型 龍牙! 」

 恭介が放った龍牙は黒炎の竜巻となって、混成部隊を襲う。このまま行けば混成部隊は燃やし尽くされてしまうだろう。しかし、混成部隊の顔に危機感はない。むしろ、安心しきった顔だ。恭介はそれを疑問に思いながらも、黒炎の勢いを強めた。

 これで終わりだ。そう、呟こうとしたところで、恭介は目を見開き声を荒らげた。

「なにっ!? 」

 なんと、恭介が放った龍牙が真っ二つに割れ、混成部隊を避けるように地面に着弾したのだ。まるで台風のような突風が吹き荒れる中、恭介はこの原因を作ったであろう者に目を向ける。ルオスだ。

 恭介は龍牙が真っ二つに割れる直前、ルオスから魔力が噴き出したのを感じたのだが、なにをしたんだと目を細める。恐らく魔法。だが、一体どんな魔法なのか恭介には分からない。魔法知識がないので当然だ。

 これは恭介が前に言っていた、魔神ザーヴァスが不親切な点の1つ、肝心な情報がない、だ。魔法なんて聞くからに危険なものの情報がない。これは例えるならば、マイナーアイドルのライブに突然叩き込まれるようなものだ。どんな対応をして良いか全然分からない。い、いえーいしか言えない。そして結局周りの雰囲気に流され、沈するのだ。

 話が逸れたが、それは兎も角、ガウェインが行ったものや、女性が放った矢などは効果が目に見えて分かるのでなんとかなったが、さすがにルオスのものは恭介には推測する事は不可能だ。極めて危険な状態と言って良いだろう。恭介は肝心な情報をくれないザーヴァスにファ○クと心の中で中指を立てながら口を開いた。

「ちょっと吸血鬼さんよ。なにをしたのかは知りませんが、人の熱いラブコールを横から邪魔するなんて野暮じゃないですかね。」
「なにを言っておる。こんな良い女を放っておいて、他の女にラブコールを送るなんてそっちこそ野暮じゃろうが。思わず、手が出てしもうた。」
「じゃあ今度は、あなたにラブコールでも送りましょうかね。燃え尽きても知らないけど。」

 恭介はバサっと1つ羽ばたいて着地すると、腰を落とし龍牙の構えを取った。しかし、ルオスは構えている恭介など気にせずに首を横に振る。

「残念じゃが、先約があるんじゃよ。貴様を倒したあと、飲む約束をしているんでな! 」

 そう言い切ったルオスは勢いよく腕を広げ、目を大きく開いた。血のように真っ赤な目と縦に割れた瞳孔がクッキリ見えて、どこかうすら寒い印象を抱かせる。だが、恭介はその目を見ながらも、別のものでその印象を抱いていた。

(マジかよ、目が光ってやがる。)

 『目が光っている』のだ。もともと血のように赤かった目が、それを少し薄めたような光を放っている。今から何かしようとしているのは明白だ。ならば今すぐにでも攻撃を加えて止めたり、なんなら昏倒させるべきなんだろうが、恭介は動かない。いや、動けない。

「な、なん‥‥だ、これ。体が‥‥」

 手を、足を動かそうとするが、ピクリとも動かない。声だけはなんとか出せるが、それも途切れ途切れだ。現状全く動けないと言っても良いだろう。そんな恭介を見て、チャンスだと思ったのか、矢と魔法の雨が降り注ぐ。

(チッ! 殺られるかぁぁぁ!! )

 恭介は体に纏っていた龍気を高め、黒炎で周囲一帯へと無差別に攻撃を仕掛ける。

 ゴウッ! と噴き出した炎は、恭介に迫っていた矢と魔法の雨を燃やし尽くし、まだ足りぬとばかりに勢いよく広がっていく。草は枯れて、灰にされ、地面はひび割れる。生命力を奪い尽くされたのだろう。土はボロボロと崩れ、死の大地になってしまった。

 それを見た混成部隊の面々は言葉を失い、唖然としてしまいそうなのをなんとか保ち、未だに炎を身を守るように解き放ち続けている恭介を囲み、なんとか隙をついて攻撃しようとする。

 しかし、どこにも隙はない。鉄壁の防御だ。ジオは手の上で双剣を回しながらぼやく。

「ったく、黒龍帝様は便利な龍気を持っているな。どこにも隙がねぇよ。」
「ええそうね。矢を射っても届く前に燃え尽きるわ。魔法だって、生命力を奪う特性と、黒炎としてのもともとの威力を合わせてこれも同じく燃え尽きるわね。はぁ~ 本当優秀な一族よね黒龍って。」
「ルオス様の魅了の魔眼を受けながらも、ここまで出来るとは驚きだ。我々の攻撃は届かない、だが役目は果たした。」
「ルオス様の本領発揮である! 」

 うむ、と頷いたガウェインを燃え盛る黒炎の中で見て、ジオ達の会話を聞いて、恭介はこの体が動かないのは吸血鬼の仕業かと心の中で呟く。

(あの吸血鬼め。魅了の魔眼? 名前からしてだいたいどんなのか想像がつくが、体を動けなくするって‥‥厄介な。龍気がなければジ・エンドしてたところだぜ。危ない危ない。)

 恭介は少しずつ、体が動くようになっているのを感じながら、ルオスへと目を向けた。ルオスは先程と変わらずに手を大きく広げていたが、違うところが1点だけあった。それはルオスを中心として魔法陣が出来上がっていたのだ。それはいつの間に描かれたのか、ルオスの目と同じく薄っすらと赤く輝いている。

恭介は歯噛みする。

(役目は果たしたってそういうことか! 俺の動きを止めている魅了の魔眼もそのあと動けなくなった俺に攻撃してきたのも時間稼ぎ‥‥! やられた! これほどまでの時間稼ぎをするという事は切り札、しかも俺を倒すことが出来ると確信しているものに違いない。これは俺も半殺しとか手加減とか考えている場合じゃないかもしれないな。下手したらこっちが殺られかねない。)

 恭介が”手加減なし”で戦うと決めていると、ルオスが口を開いた。犬歯が長く伸びており、光っている目と相まってザ・吸血鬼といった見た目になっている。キラリと犬歯を光らせてルオスは大声を発する。
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