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第4話
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「そろそろ終わったかしら? 」
才華と雫のやり取りを黙って見ていた、雫と同時にこの空間にきた女性が口を開いた。
その女性は雫に負けず劣らずの美少女で、茶髪を腰まで伸ばしている。
かといって手入れが行き届いていないというわけではなく、とても綺麗な茶髪だ。
それが女性の清楚な雰囲気と相まって、お嬢様と言った雰囲気を醸し出している。
「ああうん。終わったけど。ん? その制服……確か聖ブリュンヒルデ学院のものだよな? 超お嬢様学校の。」
「ええそうよ。よく知っているわね。いえ、でも知っているのは当たり前なのかしら? 鬼才、霧ヶ峰 才華さん。」
「へ~ 俺の事知っているんだ。ふ~ん。」
才華はまじまじと女性を見つめて、あ!っとなった。
「あ! 思い出した。なにかしらのパーティにいたな。確か名前は蘭上 美鈴(らんじょう みすず)だったか? 」
「ええ、そうよ。私は蘭上 美鈴。久しぶりね。才華さん。」
美鈴はニコリと花の咲くような笑顔を浮かべた。才華もそれに合わせるように笑顔を浮かべる。
「久しぶりって言っても、俺たち話した事ないだろ。俺はいつも隅っこにいたし、蘭上は親父さんと挨拶まわりしてたよな? 」
「美鈴でいいわ。そうね。でもあなたの事は知っていたわ。私と同年代なのに、すごい人がいるってね。それにしても、あなたはその……どうして私の名前を知っていたの? 」
美鈴は両手をモジモジとさせ、上目使いで才華を見つめた。
その目にはどこか期待のようなものが宿っている。
才華はそれにこれって言っていいのかな? と誰にも聞こえないように呟き、やっぱりダメかと頷いた。
「い、いやそのほらパーティで一際、綺麗だったらさ。自然とな。(お金持ちの名前は全て覚えているんだ。なんてこと口が裂けても言えないな。)」
才華は頭をポリポリと掻く。
才華は5年前に鬼才と呼ばれていた頃、開発やそれらの事に加えて、お金を稼ぐ事に”ハマっていた”。
そんな才華は効率よくお金を集めるために、スポンサーになるかもしれない企業の役員の名前から、日本全国の名家に至るまで、全て覚えた。
その中で蘭上 美鈴は才華の記憶に強く残っていたのだ。
『蘭上グループ』
日本を代表する大企業だ。あらゆる分野に手を出し、成功を収めていて、蘭上という名前を聞くだけで中小企業は頭が上がらなくなるという。
蘭上 美鈴はその蘭上グループの創始者、蘭上 源三郎の孫だ。
超の上に更に超がつくような、お嬢様。それが蘭上 美鈴だ。
そんなビックな名前だから覚えていたという、結構失礼な才華だが、才華を美鈴は目を潤めて見つめる。
「ありがとう。色々なお世辞は言われてきたけど貴方に言われると、とても嬉しいわ。」
「いや、お世辞では無いんだけど。」
「それなら尚更嬉しいわ。貴方にそう思われていたなんて、このわけの分からない空間に来た価値があるというものよ。」
「そう言われると照れるな。」
「……お二人さん。イチャイチャしているところ悪いですけど、そろそろここについて話しませんか? 」
雫は口をへの字に曲げて、才華と美鈴の会話に割り込む。
不機嫌ということがありありと分かるが才華はなんでそんなに怒っているんだ? と思いながら、顎に手を当てる。
「確かにな。この空間について話したほうがいいか。なあ、聞きたいんだけど、ここに来る前に何かなかったか? 」
「私は、授業を受けている時に突然、教室に魔法陣みたいなのが広がって、気づいてたらここにいたわ。」
「私は、車に乗っていた時に…… あとは雫さんと大体同じよ。」
才華はふむふむと頷き、下に向けていた視線を美鈴に向ける。
「美鈴、もしかしてだけどここに来る前、近くに大きな学校が無かったか? 具体的に言えば、大きい時計台が目立つ学校。」
「それって……! 」
雫が口に手を当て、驚きの声を上げるが、才華は気にせずにジッと美鈴を見つめた。
美鈴は真剣な顔付きになった才華を見て、これは重要な事なのねと思いながら答える。
「ええ、あったわ。それがどうしたの? 」
「そうか分かった、ありがとう。ふぅ まだ色々とわからない事があるけど、これだけは確かな事がある。聞くか? 」
才華は顎に当てていた手を離し、雫と美鈴に尋ねた。
雫と美鈴はゴクリと喉を鳴らして、頷く。
それを見た才華は目を鋭くし、先ほどまでのふざけた雰囲気が嘘のようなキリっとした顔を作った。
「俺たちは、俺と雫の学校、東應高校を中心として、才能の高い順にここに連れてこられた。」
「「っ!? 」」
雫と美鈴は才華の言葉を聞いて、目を見開いた。
雫はその才華の推測に疑問を抱いたのか、質問する。
「ねえちょっと聞いていい? 」
才華は雫の質問に答えず、上を見上げた。
その才華は顔に、ビッショリと冷や汗をかいている。
雫は一体なんだ? と才華の視線を辿って、上を見た。その雫の動作につられて、美鈴も上を向く。
そして、2人とも才華と同じく冷や汗を掻き、顔を真っ青にさせた。
何故なら、巨大な目がジッと才華達を見つめていたのだ。
才華と雫のやり取りを黙って見ていた、雫と同時にこの空間にきた女性が口を開いた。
その女性は雫に負けず劣らずの美少女で、茶髪を腰まで伸ばしている。
かといって手入れが行き届いていないというわけではなく、とても綺麗な茶髪だ。
それが女性の清楚な雰囲気と相まって、お嬢様と言った雰囲気を醸し出している。
「ああうん。終わったけど。ん? その制服……確か聖ブリュンヒルデ学院のものだよな? 超お嬢様学校の。」
「ええそうよ。よく知っているわね。いえ、でも知っているのは当たり前なのかしら? 鬼才、霧ヶ峰 才華さん。」
「へ~ 俺の事知っているんだ。ふ~ん。」
才華はまじまじと女性を見つめて、あ!っとなった。
「あ! 思い出した。なにかしらのパーティにいたな。確か名前は蘭上 美鈴(らんじょう みすず)だったか? 」
「ええ、そうよ。私は蘭上 美鈴。久しぶりね。才華さん。」
美鈴はニコリと花の咲くような笑顔を浮かべた。才華もそれに合わせるように笑顔を浮かべる。
「久しぶりって言っても、俺たち話した事ないだろ。俺はいつも隅っこにいたし、蘭上は親父さんと挨拶まわりしてたよな? 」
「美鈴でいいわ。そうね。でもあなたの事は知っていたわ。私と同年代なのに、すごい人がいるってね。それにしても、あなたはその……どうして私の名前を知っていたの? 」
美鈴は両手をモジモジとさせ、上目使いで才華を見つめた。
その目にはどこか期待のようなものが宿っている。
才華はそれにこれって言っていいのかな? と誰にも聞こえないように呟き、やっぱりダメかと頷いた。
「い、いやそのほらパーティで一際、綺麗だったらさ。自然とな。(お金持ちの名前は全て覚えているんだ。なんてこと口が裂けても言えないな。)」
才華は頭をポリポリと掻く。
才華は5年前に鬼才と呼ばれていた頃、開発やそれらの事に加えて、お金を稼ぐ事に”ハマっていた”。
そんな才華は効率よくお金を集めるために、スポンサーになるかもしれない企業の役員の名前から、日本全国の名家に至るまで、全て覚えた。
その中で蘭上 美鈴は才華の記憶に強く残っていたのだ。
『蘭上グループ』
日本を代表する大企業だ。あらゆる分野に手を出し、成功を収めていて、蘭上という名前を聞くだけで中小企業は頭が上がらなくなるという。
蘭上 美鈴はその蘭上グループの創始者、蘭上 源三郎の孫だ。
超の上に更に超がつくような、お嬢様。それが蘭上 美鈴だ。
そんなビックな名前だから覚えていたという、結構失礼な才華だが、才華を美鈴は目を潤めて見つめる。
「ありがとう。色々なお世辞は言われてきたけど貴方に言われると、とても嬉しいわ。」
「いや、お世辞では無いんだけど。」
「それなら尚更嬉しいわ。貴方にそう思われていたなんて、このわけの分からない空間に来た価値があるというものよ。」
「そう言われると照れるな。」
「……お二人さん。イチャイチャしているところ悪いですけど、そろそろここについて話しませんか? 」
雫は口をへの字に曲げて、才華と美鈴の会話に割り込む。
不機嫌ということがありありと分かるが才華はなんでそんなに怒っているんだ? と思いながら、顎に手を当てる。
「確かにな。この空間について話したほうがいいか。なあ、聞きたいんだけど、ここに来る前に何かなかったか? 」
「私は、授業を受けている時に突然、教室に魔法陣みたいなのが広がって、気づいてたらここにいたわ。」
「私は、車に乗っていた時に…… あとは雫さんと大体同じよ。」
才華はふむふむと頷き、下に向けていた視線を美鈴に向ける。
「美鈴、もしかしてだけどここに来る前、近くに大きな学校が無かったか? 具体的に言えば、大きい時計台が目立つ学校。」
「それって……! 」
雫が口に手を当て、驚きの声を上げるが、才華は気にせずにジッと美鈴を見つめた。
美鈴は真剣な顔付きになった才華を見て、これは重要な事なのねと思いながら答える。
「ええ、あったわ。それがどうしたの? 」
「そうか分かった、ありがとう。ふぅ まだ色々とわからない事があるけど、これだけは確かな事がある。聞くか? 」
才華は顎に当てていた手を離し、雫と美鈴に尋ねた。
雫と美鈴はゴクリと喉を鳴らして、頷く。
それを見た才華は目を鋭くし、先ほどまでのふざけた雰囲気が嘘のようなキリっとした顔を作った。
「俺たちは、俺と雫の学校、東應高校を中心として、才能の高い順にここに連れてこられた。」
「「っ!? 」」
雫と美鈴は才華の言葉を聞いて、目を見開いた。
雫はその才華の推測に疑問を抱いたのか、質問する。
「ねえちょっと聞いていい? 」
才華は雫の質問に答えず、上を見上げた。
その才華は顔に、ビッショリと冷や汗をかいている。
雫は一体なんだ? と才華の視線を辿って、上を見た。その雫の動作につられて、美鈴も上を向く。
そして、2人とも才華と同じく冷や汗を掻き、顔を真っ青にさせた。
何故なら、巨大な目がジッと才華達を見つめていたのだ。
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