上 下
12 / 60
secret sleep3⚘意識しすぎて、近づけない。

2

しおりを挟む


 え、女子と男子が廊下にいっぱいいる…。
 同じ学年の子や先輩、
 しかも普通科だけじゃなくて違う科の子達まで…。

「そーそー、黒髪がキラキラ耀ようくんで」

「銀髪がしゅんくん」
「春と書いてしゅんと読むなんて珍しいよね」

「うんうん、3人ともウチの彼氏にしたい!!」

「おい、欲張りすぎ笑」
 女子達がそう盛り上がる中、男子達も話し始める。

「金髪の美青みおちゃん、名前だけにちょー美人!!」

「茶髪に赤リボンのあかりちゃんも可愛くね?」

「おい、あかり、褒められてんぞ」
 廊下側から2列目の一番前に座るそらくんの前に立ったしゅんくんが笑いながら言う。

「えー!? 私!? ないない!!」
 廊下の窓側でそらくんの隣の席のあかりちゃんは右手を横に振りながら否定する。

 すると、そらくんの後ろの席の耀ようくんがあかりちゃんを見て気づく。
「あ、髪のリボン、ほどけかけてる」

「え、ほんと?」

「結び直してあげようか?」

「うん、お願い」

 耀ようくんは席から立ち上がると、
 あかりちゃんに近づいていき、
 髪の赤リボンをキュッと結び直す。

「出来たよ。これで大丈夫だね」

「あ、あ、ありがと」
 あかりちゃんが顔を赤らめながらお礼を言うと、
 耀ようくんは自分の席に戻っていく。

 え、え!?
 ま、待って、あかりちゃん、耀ようくんのこと…えぇ!?
 そらくんの初登校の日、一番に話しかけてたし、幼馴染だから、てっきりそらくんに好意があるんじゃないかなって思ってたけど違ったんだ…。

そらくん達、彼女とか好きな子いるのかな~?」
「彼女はいないっぽいよ」
「マジで!? でもさすがに好きな子はいるんじゃない?」
 廊下で女子達がそう話し終えると、

「コラ! お前達、何やってる!!」
 阿久津あくつ先生の怒鳴り声が響く。

「やば、行こ」

 パタパタッ。
 女子も男子も一斉に教室に走って戻っていく。

「よーし、じゃあ、朝のHRホームルーム始めるぞ」
 望月もちづき先生が教室に入って来た。

「もっちーは注意しねぇのかよ笑」
 クラスの男子が笑いながら言うと、しゅんくんは戻って来て私の前の席に座る。

 そらくん、好きな子はいるのかな?
 分からないけど、聞く勇気もないけど、
 もしいるんだとしたらそれは、

「あ、そら、寝始めた」
 耀ようくんがそう言うと、

 真ん中の列で耀ようくんの隣の席に座る美青みおちゃんは満面の笑みを浮かべる。
「このタイミングで寝るとか。そららしい」

 ふと窓の外を見ると、薄っすらとボサ頭の私が映った。

 ――――うん。
 絶対に私じゃない。



「なんか距離、遠くね?」
 昼休み。1階奥の空き教室で右膝を立てて座ったそらくんが言った。

 私は外に出しているネックレスを右手でぎゅっと掴む。

 ドックン、ドックン、ドックン。

 ふたりきりなだけで、もう胸が騒がしい。
 い、意識しすぎて、近づけない……。
 お、落ち着いて私。

「わ、私に構わず寝て」
「終わりのチャイム鳴ったら、ちゃんと起こすから」

「悪いけど俺、眠れそうにないわ」

「あ、朝のHRホームルームで寝てたもんね?」

「違げぇよ」
 そらくんはそう言って立ち上がると、私に近づいてくる。
 そして私の隣に座ると、

 しゅるっ。
 私の制服のリボンをほどいた。

 その瞬間、時が止まったかのように思えた。

 そらくんは私のグレーチェックの膝かけを奪う。

「あっ…」

 私が声を出すと、
 宙《そら》くんは膝かけで私の体をふわりと包み込んで、前から抱き締めた。

 ネックレスが宙《そら》くんの胸に当たって…。

「え、え、そらく…」

「あー、ほんと、お前捕まえてねぇと俺が無理だわ」
「眠れねぇわ」
「今朝も自転車にかれそうになるし」

「で、でもそらくんが助けてくれた」

「あぁ。だからこのまま寝る」

 えぇ!?

「はっ、何驚いてんの?」
「昔もこんなふうに寝てただろ」

 なっ、なっ…。

「ね、寝てないよ」
「それに義妹ぎまい役だから助けてくれるんでしょ?」

 あ、スネた言い方になっちゃった……。

「お前まで変な噂信じてんじゃねぇよ」
「役で俺がリボンほどくと思う?」

 そらくんの甘い吐息が耳にかかる。
「…言っとくけど、俺、義妹ぎまい役になったつもりねぇから」

「っ…」

「チャイム鳴ったら、ちゃんと起こせよ」
 そらくんはそう言うと、私を抱き締めたまま両目を閉じる。

 体中が熱い。
 このままじゃ私の心臓が持たない。
 だから、早くチャイム、鳴って。

 ……え?
 そらくんに頭撫でられ…。

 そらくん、まだ寝てない!?

 ど、どうしよう。
 撫でられるの、心地よくて…うとうとしてきちゃった…。

 眠らせないで…欲しい…のに……。

 私は両目を静かに閉じた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄を突き付けてきた貴方なんか助けたくないのですが

夢呼
恋愛
エリーゼ・ミレー侯爵令嬢はこの国の第三王子レオナルドと婚約関係にあったが、当の二人は犬猿の仲。 ある日、とうとうエリーゼはレオナルドから婚約破棄を突き付けられる。 「婚約破棄上等!」 エリーゼは喜んで受け入れるが、その翌日、レオナルドは行方をくらました! 殿下は一体どこに?! ・・・どういうわけか、レオナルドはエリーゼのもとにいた。驚くべき姿で。 殿下、どうして私があなたなんか助けなきゃいけないんですか? 本当に迷惑なんですけど。 ※世界観は非常×2にゆるいです。  

【完結】イケメンゴリマッチョに「貴女は前世からの運命の人です!」と突然抱きしめられました。

猫石
恋愛
昔、滅びたアルカルディア王国には、宝石姫と呼ばれる大変美しい白金の髪にサファイアの瞳のけなげで可憐で物静かな姫と、王国最強の黒衣の聖騎士といわれる漆黒の髪に深紅の瞳の朴訥ですが照れ屋で凛々しい騎士がいました。 二人は心から愛しあい、結婚と永遠の愛を誓い、互いの両親はもちろん、国民からもほほえましく温かく見守られていました。 しかし、二人の結婚式の日、同盟国のうち2つが、魔王を復活させアルカルディア国を滅ぼしてしまったのです。 これからの幸せを願っていた二人は、美しい婚礼衣装に身を包んだまま永遠の愛をお互いに誓い、共に命を落としました。 で、私がその運命の相手?! しかもあなたがお姫様?! そんなこと言われても困ります!? 人違いです、私じゃないですぅぅ!! ★よくある転生のお話です ★完結しています(約13000文字) ★ものすごくゆるゆるふわっふわなお気楽能天気設定なので、突っ込み入れないでください ★あまり考えずに書いているので、気にしないでください ★ほかの作品と温度差があると思いますが、えぇそうです、その通りです。 ★誤字脱字誤変換、もう本当にごめんなさい!!! これでも!これでも! 10回は見直しをしているのです! もう、直し方を教えてください! ★ほかの小説をちゃんとかけ? そうですね、でもちょっと疲れてたんです……溺愛に程遠かったり、スローライフと程遠かったり…… ☆小説家になろう様にも投稿しています

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜

●やきいもほくほく●
恋愛
「フランソワーズ・ベルナール、貴様との婚約は破棄させてもらう」 パーティーの場で、シュバリタイア王国の王太子……セドリック・ノル・シュバリタイアの声が響く。 その隣にはフランソワーズの義理の妹、マドレーヌが立っていた。 (さて……ここまでは物語通りかしら) フランソワーズ・ベルナールは前世で読んだ小説の悪役令嬢だった。 そして『聖女』として悪魔の宝玉を抑えて国を守っていたのだが……。 (これですべてが思い通りに終わると思っているんでしょうが……甘いのよ) マドレーヌに貶められて罪に問われたフランソワーズは国外への逃亡を決意する。 しかし逃亡しようとしたフランソワーズの前に現れたのは隣国、フェーブル王国の王太子ステファンだった。 彼はある事情からフランソワーズの『聖女』としての力を欲していた。 フェーブル王国で、国を救った救世主として持ち上げられ、ステファンから溺愛されるフランソワーズは幸せな日々を過ごす。 一方、フランソワーズを追い出したシュバリタイア王国は破滅へと向かう──。

逃げたヒロインと逃げられなかった王子様

わらびもち
恋愛
夜会で腕に浮気相手をぶら下げて婚約破棄を宣言した婚約者。 そんなことすればどういう結果になるか、分かるでしょう? 今更「助けてくれ」と言われても知りませんよ。

魔力を持つ人間は30歳までに結婚しないといけないらしい

ここりす
恋愛
魔力を持つ人間には不思議なことが起こる。恋に落ちにくいのだ。 それにより魔力持ちの人口減少が近年の問題となっている。 魔力によって発展してきた国は対策のために、30歳までに結婚しない場合は『伴侶システム』という魔力の相性が判定できる施設を立ち上げ魔力持ちを強制的にお見合いさせることにした。 結婚願望がない私はついに29歳になり仕方なく登録すると、そこには私の苦手な幼なじみが判定されたらしい。 幼なじみは容姿端麗で魔力も国内最強クラスなのに彼も結婚していないのは性格に難があるからだ。 結婚願望がなくなった原因の幼なじみと『伴侶システム』で過去最高の相性と判定され、国から全力で私たちの結婚が囲われることになってしまった。 特別に結婚するまで共同生活を提供されるが、お互いすれ違う生活と逃げられない結婚への不安に悩まされる。 そんなある日、彼は同僚に連れられ帰宅すると、なんと私に恋に落ちる魔法にかかり別人のような彼から溺愛され生活が一変する。 彼にかかった魔法は3か月解けないらしく、戸惑いながらも一緒に生活していくうちにどんどん惹かれてしまう自分がいる。 「魔法がかかっているから、私のことが好きなんだ」切ない思いに胸が締め付けられながらも、彼の魔法が解けるまでの共同生活を楽しむことにした。

強面男子だって恋をする。

BL
高校二年生の宮脇 大樹(みやわき だいき)は、自他ともに認める強面を持つ。 そのため不良のレッテルを貼られ、今まで彼女どころか友達と呼べる存在すらいなかった。 ある日、そんな自分を唯一良くしてくれている姉の頼みで、姉が好きなBLゲームのグッズを一緒に買いに行くことに。 目当てのものを買えた二人だが、その帰り道に事故にあってしまい、姉が好きなBLゲームの世界に転生してしまった!? 姉は大樹にそのゲームの舞台である男子校に通ってほしいと頼み込む。 前世と同じく強面を携えた彼と、曲者揃いの男子たちの恋路はいかに…!? (主人公総受け/学パロ/転生もの/キャラ多(メインキャラだけで23人)) とにかくキャラクターが多いです 全年齢です。 本編(総受けルート)が終わった後にそれぞれのキャラクターとのストーリーを書いていこうと考えています。 自分のために作った作品なので、少しそうはならんやろ、的な表現もあるとは思いますが暖かい目でお願いします。

旦那様はチョロい方でした

白野佑奈
恋愛
転生先はすでに何年も前にハーレムエンドしたゲームの中。 そしてモブの私に紹介されたのは、ヒロインに惚れまくりの攻略者の一人。 ええ…嫌なんですけど。 嫌々一緒になった二人だけど、意外と旦那様は話せばわかる方…というか、いつの間にか溺愛って色々チョロすぎません? ※完結しましたので、他サイトにも掲載しております

処理中です...