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secret sleep5⚘世界は違わねぇ。
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*
そして5月20日から23日まで中間テストが行われ……、
「テスト全員返したな」
5月28日の6限目。1年A組の教壇で阿久津先生が言った。
しぃぃん、と室内が静まり返る。
「25点以下は赤点となる」
「ではワーストを発表する」
ドキン、ドキン。
ついに最後の教科、保健体育のテストが……。
今までの教科はぜんぶ赤点から間逃れたけど、大丈夫…だよね?
「ワーストは黒沢、26点」
「え? 以下ってことは?」
男子の一人が尋ねると、
「セーフってことだよ!」
「キャー! さっすが宙くん!」
女子達の歓声が上がる。
「うおー、体育祭だー!」
男子達は雄叫びを上げた。
「チッ」
阿久津先生は嫌な顔をする。
「宙、もっと取れたよね?」
「他のみんなが名前呼ばれるの避ける為にわざとやったでしょ?」
後ろの席から、にこっと笑いながら耀くんが尋ねる。
「は?」
「そんな訳ねぇだろ」
宙くんは机に伏せ寝しながら答えた。
*
「あっつ~、午前中の体育祭リハ終わったね~」
翌日の昼前。ピンクグレーのジャージを着たあかりちゃんが言った。
私と美青ちゃんも同じ格好をしている。
「あかり、100メートル走、ばっちりじゃん」
美青ちゃんが声を掛けた。
「美青、二人三脚の練習出来なかったんだよね?」
「うん、宙がサボッて笑」
「宙、応援団とリレーもあるし」
「あー、あかりと同じで一人の種目が良かった。クジで決まったから仕方ないけどね」
「でも大丈夫、前に何度か練習したから」
「雪乃は午後、宙とリレー頑張って」
「あ、うん」
「それで、あかり、明日告るの?」
美青ちゃんが尋ねる。
「え、何いきなり!?」
「あかり、耀のこと好きでしょ」
美青ちゃんは、さらりと言う。
「え!? バレバレ!?」
「うん」
「あー、うーん、告るのはまだいいかな」
「そういう美青はどうなの? 宙に言うの?」
「いや、違うから」
美青ちゃんは否定する。
「え!? 違うの!?」
「みんな噂してるよ。美青は宙だって」
「あはは…私、偽者の姫だからさ」
「え? 偽者の姫?」
あかりちゃんが尋ねる。
「そんなことないよ」
「美青ちゃんは本物の姫だよ」
私がそう言うと美青ちゃんは驚く。
「え、え、どういうこと?」
あかりちゃんはパニックになる。
「あ、姫っていうのは美人って意味だよ」
私が説明すると、美青ちゃんが口を開く。
「とにかく今のナシね」
「え、偽者の美人ってこと?」
「なら、間違いだよ。美青は美人だよ」
美青ちゃんは眉毛を下げて笑う。
「あはは、あかり、ありがと」
「てか、雪乃はどうなの? 宙に言わないの?」
美青ちゃんに聞かれ、驚く。
「え!?」
「バレバレだから」
私は宙くんのことが好き。
だけど、琉くんの姫になるって約束してて、
記憶もまだぜんぶ思い出してない。
そんな状態で告白なんて出来る訳ない。
私は眉を下げて笑う。
「私はそもそも世界が違うから無理だよ」
あ、宙くんと目が合って…。
今の宙くんに聞かれちゃった…?
*
「ご、午後も体育祭のリハだね」
昼休み。空き部屋でジャージ姿の私は右膝を立てて隣に座る宙くんに話しかけた。
「あぁ」
き、気まずい…。
さっきの聞かれちゃったかもしれないし……。
「本番、髪結ぶのか?」
「あ、うん、暑いし結ぶかも」
「やめとけ」
「あ、うん…」
ポニーテールは似合わないしね…。
「雪乃、俺にだけ見せて」
私は驚く。
予想外の言葉にドキドキが止まらない。
「わ、分かった」
そして5月20日から23日まで中間テストが行われ……、
「テスト全員返したな」
5月28日の6限目。1年A組の教壇で阿久津先生が言った。
しぃぃん、と室内が静まり返る。
「25点以下は赤点となる」
「ではワーストを発表する」
ドキン、ドキン。
ついに最後の教科、保健体育のテストが……。
今までの教科はぜんぶ赤点から間逃れたけど、大丈夫…だよね?
「ワーストは黒沢、26点」
「え? 以下ってことは?」
男子の一人が尋ねると、
「セーフってことだよ!」
「キャー! さっすが宙くん!」
女子達の歓声が上がる。
「うおー、体育祭だー!」
男子達は雄叫びを上げた。
「チッ」
阿久津先生は嫌な顔をする。
「宙、もっと取れたよね?」
「他のみんなが名前呼ばれるの避ける為にわざとやったでしょ?」
後ろの席から、にこっと笑いながら耀くんが尋ねる。
「は?」
「そんな訳ねぇだろ」
宙くんは机に伏せ寝しながら答えた。
*
「あっつ~、午前中の体育祭リハ終わったね~」
翌日の昼前。ピンクグレーのジャージを着たあかりちゃんが言った。
私と美青ちゃんも同じ格好をしている。
「あかり、100メートル走、ばっちりじゃん」
美青ちゃんが声を掛けた。
「美青、二人三脚の練習出来なかったんだよね?」
「うん、宙がサボッて笑」
「宙、応援団とリレーもあるし」
「あー、あかりと同じで一人の種目が良かった。クジで決まったから仕方ないけどね」
「でも大丈夫、前に何度か練習したから」
「雪乃は午後、宙とリレー頑張って」
「あ、うん」
「それで、あかり、明日告るの?」
美青ちゃんが尋ねる。
「え、何いきなり!?」
「あかり、耀のこと好きでしょ」
美青ちゃんは、さらりと言う。
「え!? バレバレ!?」
「うん」
「あー、うーん、告るのはまだいいかな」
「そういう美青はどうなの? 宙に言うの?」
「いや、違うから」
美青ちゃんは否定する。
「え!? 違うの!?」
「みんな噂してるよ。美青は宙だって」
「あはは…私、偽者の姫だからさ」
「え? 偽者の姫?」
あかりちゃんが尋ねる。
「そんなことないよ」
「美青ちゃんは本物の姫だよ」
私がそう言うと美青ちゃんは驚く。
「え、え、どういうこと?」
あかりちゃんはパニックになる。
「あ、姫っていうのは美人って意味だよ」
私が説明すると、美青ちゃんが口を開く。
「とにかく今のナシね」
「え、偽者の美人ってこと?」
「なら、間違いだよ。美青は美人だよ」
美青ちゃんは眉毛を下げて笑う。
「あはは、あかり、ありがと」
「てか、雪乃はどうなの? 宙に言わないの?」
美青ちゃんに聞かれ、驚く。
「え!?」
「バレバレだから」
私は宙くんのことが好き。
だけど、琉くんの姫になるって約束してて、
記憶もまだぜんぶ思い出してない。
そんな状態で告白なんて出来る訳ない。
私は眉を下げて笑う。
「私はそもそも世界が違うから無理だよ」
あ、宙くんと目が合って…。
今の宙くんに聞かれちゃった…?
*
「ご、午後も体育祭のリハだね」
昼休み。空き部屋でジャージ姿の私は右膝を立てて隣に座る宙くんに話しかけた。
「あぁ」
き、気まずい…。
さっきの聞かれちゃったかもしれないし……。
「本番、髪結ぶのか?」
「あ、うん、暑いし結ぶかも」
「やめとけ」
「あ、うん…」
ポニーテールは似合わないしね…。
「雪乃、俺にだけ見せて」
私は驚く。
予想外の言葉にドキドキが止まらない。
「わ、分かった」
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