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チュート殿下 101 生徒総会 2

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 俺が思考の波にのまれている間に、生徒会長の挨拶は始まっていたようだ。

 目の前できちんと聞くのが初めての異母兄の声は、朧気に残っている国王陛下の声に似ているような気がした。

「……栄えあるこの学園に入園できたことを誇りに思い……生徒の自主自立の要ともなるこの生徒会の一員として、我らのに十分その役目を各々が遂行してくれることを望む。……新入生の諸君にとってこの第一回目の生徒総会で行ってもらう役目の一つ、それは、新たに生徒会の役員として迎える人員について、知ってもらい、君たちの学年の代表としての彼等の手足となって仕えて・・・もらうことだ。誰を生徒会役員として迎えるかについては、これまでの成績と人となりなど様々なことを考慮して、私が・・選び出した精鋭だ。皆からも十分納得してもらえる人員であると自負している。……それでは、名が挙がった者この壇上へ……」

 そういうと、生徒会長伯爵王子は一歩下がり、役員の中で司会をしている……誰か知らん……にその後の進行を任せるようだ。

「……それでは今年度の一学年から生徒会役員として勤めてもらう四名を、発表させてもらう。まず一人目、アピス・ナイト・ブリーズ。壇上へ……」

 名前が上がるとそれまでの水を打ったような静けさであった講堂内に、少し興奮を抑え込んだような幾分配慮した歓声が所々から上がっている。

 いつものようにこの空間を自由に飛び回っているキールがそこかしこから、名前の主に関係がありそうな声を拾って俺の耳元に届けてくる。

『……アピス様って、あの魔法の得意なブリーズ家の……』

『……中級学校でも役員をされていた……』

『……昨年の中級学校の役員といえば後は……』

『……えっ⁉彼なの彼女では無くて⁉』『……君は地方の学校出身かい?』

 最後の方は、この席から大分遠いところのクラスから拾ってきたようで、平民といわれる魔法が得意なものたちも所属しているクラスのようだ。

 確かにアピスは一見するとその髪の長さもあいまって、女の子に見えなくもない。まだ15歳。成長が遅ければそう見えたそしても致し方がない可愛さだ。

 ざわめきが収まるタイミングを待っていたのか、待ちきれないのか司会者からの咳払いが聞こえたことで、また講堂内は静かになった。

「……二人目、トレント・カウント・トルネード。壇上へ……」

 また先程と変わらない喧騒がこの空間を包み込む。

『……彼も同じ中級学校の役員だ……』

『……すでに体が出来上がっている、さすが騎士団長のご子息だ……』

『……文武両道なのか?役員に選ばれるということは?……』

『……どうかな……成績上位に張り出されている所は見たことがないが……伯爵子息だしな……』

 暗に、成績だけで選ばれていないことを彼ら生徒は知っているのだな。

 先ほどよりも幾分早く、今度は咳ばらいを受けることなく、講堂内は静かになった。

「……三人目、フォスキーア・マルケーゼ・ゲイル令嬢。壇上へどうぞ…」

 さすがに女性に対しては、男性である司会者が名を呼びつけっぱなしにはできないようで、尊称を付けたようだ。

 彼女に関しては何も声が上がらなかった、不満があるというわけではなく当たり前すぎて皆頷くばかりだ。

 この世界でも彼女はとても優秀なようだ。あえて教室ではジロジロと姿を見るようなことはしてこなかったが、ゲームのスチルで見た姿と寸分変わりない彼女が居る。凛とした様子で壇上に上がって行く。

 ただ、かなり講堂内の後ろの方から「なんでよぉ!」というような声が聞こえてきた気がしたが、誰かに口でもふさがれたのかそれ以上声は上がらず、そのあとにはバタバタと足音が少し聞こえてきた後、ドアの開閉音がして静かになった。

『……あの女また面白いことしようとしたみたいだぜ』

 キールがわざわざ教えてくれたのは、一番下のクラスの中で『ヒロイン』が大声を上げたとたん、隣に座っていたクラスメイトに口をふさがれて、控えていた学校の職員に素早く渡され、講堂外に連れ出された一連の動きが、まるでお芝居のように澱みのない動きであったことが随分と面白かったということだった。

「……四人目は……」

 そこですぐに声を上げることはせずに司会者がもう一度確認するかのように、異母兄の顔を見た。

 異母兄生徒会長はそれに対して小さく頷き返す。

 俺はその様子を見た瞬間、背筋に何か嫌なものが走ったような気がした。

「……アースクエイク・デューク・テンペスト……殿下……壇上へ……ご登壇ください……」

 その声が講堂内に響いた瞬間、今まで以上に水を打ったような静けさがその場を支配した。


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