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チュート殿下 84 遂にやって来たXデイ⁉ 1

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 俺の心の中を映し出すような青空の元、遂にやって来ました王立学園に入学式!

 ぜーんぜん晴れ渡っていないよ、俺の心の中は。

 この世界はご存知の通り、日本のゲームがにじみ出ている世界だからか、神様が手を抜いたのか、時間や季節、10進法、60進法、その他もろもろ、日本のそれをそのままパクッて使われている、と思われる。

 あまりにも自然すぎてスルーしてきたところがあるが、結構この世界では重要である精霊契約の行われる夏至の日とか、一年の日数365日やうるう年に当たる4年に一回一日多い年とか……。

 月もそのまま一月二月三月……。名前は英語の発音なのにね。

 ただ、学校の入園月が、秋入学の九月なのがちょっと違うところかな。

 だから、今は一年の内でも晴天率が高い秋の青空の季節なのです。

 起こされる前から目が覚めてしまった。

 今日は入園式しかないために早朝から学校に行く必要はないのに。

 しかし、夢見が悪かったんだよね。

 ゲームのオープニングから、入園式が始まる前に起こるイベントを、ヒロイン目線で見せられました!

 顔はいい二次元のアースクエイク殿下が、こっちに向かって笑顔を見せた瞬間、大汗かいて目が覚めました!

 なんだろう……あの背筋が凍るような寒さは……。

 結局それからは眠れなかったので、キールと今日起こりそうなことについて検証をやり直した。

 冒険者として活動するときには俺の保護者兼パートナーとしてずっと実体化をして一緒に居てくれたキールであるが、学園に入学するに当たっては、初級学校の時と同じく侍従としてリフルが就くことになっている。

 キールの雰囲気は俺よりもよっぽど王族のようだからね。

 ゲームの中では俺も寮に入っていたから、徒歩で入園式会場の講堂まで歩いているときに、きょろきょろと周りを見ながら歩いてきたヒロインがぶつかってくる、という王道な始まり方。

 だけど、俺は寮に入らないから、講堂には馬車横付けで入場することになるんだけどね。

 どうするんだろう?

「前世の記憶を持ってる電波系お花畑ヒロインだったら、馬車に特攻かけてくるかもしれないよ?」

「アークには常時結界魔法をかけているから、隕石がっ降ってきたところで怪我一つつかないぞ」

 真面目な顔をしてキールが冗談ぶっ込んでくるから、より一層面白かった。 
 
「イヤ、冗談じゃないぞ」

「……だったら、別に離宮に居る必要ないってこと?それが知られたら寮に入らないといけなくならない?……聞かなかったことにする」

 何でも俺自身にこの離宮と同じぐらいものすごい結界魔法が常時発動で掛かっているらしい。

 まるで移動要塞のようだね、冗談でなく……。

 そんな驚きもありつつ、時間は流れて、学園に向かう時間になった。

 今日の入園式までに基本入寮を済ませなければならないことになっているため、生徒については馬車等の利用はないが、今日の入園式に出席する生徒の父兄が交通手段として馬車を利用するので、今日の学園周辺は馬車渋滞が起こるらしい。

 俺はとにかく、最後の最後で学園に行くことになっていた。

 馬車ではなく瞬間移動を使えれば随分と楽なのだけれど、これは表立って使えるものでもないし、面倒くさいが学園に通うのには馬車を使うしかないのだ。

 今までも何度か夜の散歩や、敵情視察に中級学校や王立学園の方にもお邪魔したことがあるから、目をつぶってもジャンプできるのだけどね。

 久しぶりに俺と一緒に馬車に乗ったリフルはとてもうれしそうだ。

 俺の住まいである離宮は、同じ王城内でも学校がある地区とは、王城の中心を挟んで全く逆の位置にある。

 神殿に行くときにもそうであったが、中心部を横断することができないから、大きく迂回する必要がある。

 離宮からは一度この王城を囲むように造られている大きな濠を渡って、王城の外の濠沿いの道をぐるりと周り、学園に入るための専用の橋を渡って、また王城内にある学園に通うことになるのだ。

 この馬車にもしっかりと結界魔法は張られているので、襲撃があっても大丈夫になっている。

 これからは馬車でほぼ決められた道を決まった時間に通学することになるから、狙われるならこの時だろう。

 離宮ほどではないが、王城を巡る大きな濠の内側にはそれなりの結界が張られているし、魔法も使えない(事になっている)。

 それぞれの学校も関係者以外は入れないように警備が成されている。

 だから、これから濠の外側の一本道を通う時には、一番気を付けないといけないのだが、さすがに初日から何かされることは無いと思いたい。リフルの楽しそうな気分を壊したくはないしね。

 実体化はしていないがもちろんキールは同じ空間に居る。

 最近は一人の人間感覚で過ごすことが多かったから、俺の中と外を好きに行ったり来たりしているのはまた少し変な感じがする。

 それが、本当の姿というか、キールは俺のスキルだから、実体化できることが可笑しいことなのだけどね。
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