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チュート殿下 82 遂にやって来るXデイ⁉ 1
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遂にやってきた乙女ゲーム『ドキドキ☆恋の王立学園♡貴公子達と愛のエチュード』の開幕の時が!
ぜーんぜんうれしくないけど、気持ちを上げないとやっていられない。
本心では受かりたくなかった半分以上やらせのような試験も、あまりにも簡単すぎて不正解を書けなかった。
実技試験も、5年前にやったことと全く変わらなくて、
「デジャヴ……」
て、口から思わず出ちゃったよ。
死刑会場にカウントダウンの気分だけど、ここで改めて乙女ゲームの内容について思い出す、というか確認しないといけないということで、キールと認識のすり合わせをすることにした。
認識のすり合わせとかいうと、なんかすごいことやってる気がするけど、簡単に言えば、俺が忘れていると思っているところを、キールが読みだして表に出すということ。
人間って生まれてからすべてのことを脳には蓄積しているけど、それをすべて表に出せるようにすると判断することなどが大変なことになってしまうから、そこに表向きの忘却という装置が働く、とかなんとか話しを聞いたことがある気がするけど……。
それが、この世界の人間の脳みそにも採用されているかはわからないが、俺の蓄積していた前世の記憶は、キールの手にかかれば簡単に表に出すことができるようで、特に姉鬼にやらされて何度も周回させられた、この乙女ゲームに関しての記憶は比較的簡単に纏められると言っていた。
攻略本キールに書いてもらおうかな。
この世界によく似た例の乙女ゲームは、それを狙ったのかどうなのか、一枚目のディスクの攻略対象者はそのアミュレット王国の王子様ただ一人という変則的なゲームだった。
たった一人の攻略者は、まぁ簡単に攻略できますって。
だからこの一枚目のディスクは、初めて乙女ゲームをプレイする人のための、チュートリアルディスクって呼ばれていて、その中の攻略対象者の王子様だから、そいつ、アースクエイク殿下のことをチュートリアル殿下、チュート殿下と呼ぶようになったんだよね。公式でも……。
確かにその一枚目では簡単に攻略できるチュート殿下なんだけど、次作の攻略対象者を攻略する上で、カギとなってくるのが一枚目のデータ。
一枚目では攻略対象者ではなく、殿下の周りの人として出てくるイケメンたちを、ハピエンで又は逆ハーで攻略したかったら、一枚目でのチュート殿下との一言一言や、イケメンたちとのやり取りでその難易度が変わってしまうという、つまらない一枚目をやりこまなくてはいけないという、くそゲーだった。
姉鬼からはとにかくすべてのスチルを集めることを第一の命題とされ、自分は受験生だということを免罪符に、面倒臭いことをすべて弟にやらせるという鬼畜ぶり。
それが今役立っていると思えば、耐えたかいもあるというものだが、その当時のことを思い出すと、涙ものだったりするのだ。
嫌な記憶が先立ち、思い出すことにセーブがかかっている俺とは違い、下手な感情も感傷も持たないキールは、冷静に記憶の中の必要事項を整理して書き出していく。
記憶の中のゲーム画面をそのまま動画として出力することもできるらしいが、俺がそれはリアルすぎるから今回は遠慮した。
あまりにも現実がゲームに飲み込まれるようになれば、そんなことも言ってられないようになるかもしれないけどね。
俺のゲーム記憶を改めて確かめた俺たちは、今この時点でゲームと現実の違いが結構あることに気づいた。
一番大きな違いは、一言で言って『俺』
ゲームのチュート殿下とは、何から何まで違うと言える、と言うか……言いたい……。
チュート殿下はとにかく我儘で、そしてバカだった。
姿かたちはよくある乙女ゲームや物語の、ザ・王子様だったが、物語が進行するまで、ただ一人の王位継承者として、ただただ甘やかされた、暴君だった。
きっと次代をバカにすることで、貴族たちが力をつけようとしたということなのか、乙女ゲームだからそこまで考えていないか……とにかく、排除することに罪悪感がもたれないようにするための仕様なのか、顔以外クズだった。
比較材料として、今この世界では伯爵王子と呼ばれすでに異母兄であるとわかっている伯爵子息は、物語の進行で王子とは異母兄であるとわかる、穏やかで人格者であるように描かれていた。
今は俺の側近候補でも何でもないが、ゲーム2作目の攻略対象者達は、初めは仕方なくチュート殿下の近くにいるが、ヒロインの登場によって,自分たちのしなければならないことに気付き、結果害悪でしかないチュート殿下を廃嫡に追い込む旗頭になっていくのだ。
そしてゲームの時と今とでは全く違う人物として、クリフ・マークィス・ゲイル侯爵子息の妹フォスキーア・マルケーゼ・ゲイル侯爵家令嬢がいる。
今は初級学校の半年間クラスメイトであっただけの存在で、前世の記憶で顔は知っているという程度。
しかし、ゲームでは結構大役の俺の婚約者で、いわゆる悪役令嬢枠だった。
そう、俺とヒロインが仲良くなることを良しとせず、テンプレないじめを行い。婚約破棄される役割の彼女。
クズのチュート殿下のどこがよかったのか、その地位に固執したのか、あくまでも政略のための婚約なのだけど、そこら辺の彼女の心の中はゲームでは全く描かれず、ただの悪役令嬢としてゲームの色どり扱いだった。
ゲームの中で、次作の頭で辺境にやられるチュート殿下よりずっと前に、国外追放されるかわいそうな役どころだった。
父親や、兄が全く助けようとしなかったのも、ゲームをしていた時は疑問に思わなかったが、今考えるとテンプレだからでは片づけられない気がする。
彼女のためにも、わざと関わらないようにしてきたところもあったが、ゲームの強制力によってはそうはいってもいられないことになるかもしれない。
ぜーんぜんうれしくないけど、気持ちを上げないとやっていられない。
本心では受かりたくなかった半分以上やらせのような試験も、あまりにも簡単すぎて不正解を書けなかった。
実技試験も、5年前にやったことと全く変わらなくて、
「デジャヴ……」
て、口から思わず出ちゃったよ。
死刑会場にカウントダウンの気分だけど、ここで改めて乙女ゲームの内容について思い出す、というか確認しないといけないということで、キールと認識のすり合わせをすることにした。
認識のすり合わせとかいうと、なんかすごいことやってる気がするけど、簡単に言えば、俺が忘れていると思っているところを、キールが読みだして表に出すということ。
人間って生まれてからすべてのことを脳には蓄積しているけど、それをすべて表に出せるようにすると判断することなどが大変なことになってしまうから、そこに表向きの忘却という装置が働く、とかなんとか話しを聞いたことがある気がするけど……。
それが、この世界の人間の脳みそにも採用されているかはわからないが、俺の蓄積していた前世の記憶は、キールの手にかかれば簡単に表に出すことができるようで、特に姉鬼にやらされて何度も周回させられた、この乙女ゲームに関しての記憶は比較的簡単に纏められると言っていた。
攻略本キールに書いてもらおうかな。
この世界によく似た例の乙女ゲームは、それを狙ったのかどうなのか、一枚目のディスクの攻略対象者はそのアミュレット王国の王子様ただ一人という変則的なゲームだった。
たった一人の攻略者は、まぁ簡単に攻略できますって。
だからこの一枚目のディスクは、初めて乙女ゲームをプレイする人のための、チュートリアルディスクって呼ばれていて、その中の攻略対象者の王子様だから、そいつ、アースクエイク殿下のことをチュートリアル殿下、チュート殿下と呼ぶようになったんだよね。公式でも……。
確かにその一枚目では簡単に攻略できるチュート殿下なんだけど、次作の攻略対象者を攻略する上で、カギとなってくるのが一枚目のデータ。
一枚目では攻略対象者ではなく、殿下の周りの人として出てくるイケメンたちを、ハピエンで又は逆ハーで攻略したかったら、一枚目でのチュート殿下との一言一言や、イケメンたちとのやり取りでその難易度が変わってしまうという、つまらない一枚目をやりこまなくてはいけないという、くそゲーだった。
姉鬼からはとにかくすべてのスチルを集めることを第一の命題とされ、自分は受験生だということを免罪符に、面倒臭いことをすべて弟にやらせるという鬼畜ぶり。
それが今役立っていると思えば、耐えたかいもあるというものだが、その当時のことを思い出すと、涙ものだったりするのだ。
嫌な記憶が先立ち、思い出すことにセーブがかかっている俺とは違い、下手な感情も感傷も持たないキールは、冷静に記憶の中の必要事項を整理して書き出していく。
記憶の中のゲーム画面をそのまま動画として出力することもできるらしいが、俺がそれはリアルすぎるから今回は遠慮した。
あまりにも現実がゲームに飲み込まれるようになれば、そんなことも言ってられないようになるかもしれないけどね。
俺のゲーム記憶を改めて確かめた俺たちは、今この時点でゲームと現実の違いが結構あることに気づいた。
一番大きな違いは、一言で言って『俺』
ゲームのチュート殿下とは、何から何まで違うと言える、と言うか……言いたい……。
チュート殿下はとにかく我儘で、そしてバカだった。
姿かたちはよくある乙女ゲームや物語の、ザ・王子様だったが、物語が進行するまで、ただ一人の王位継承者として、ただただ甘やかされた、暴君だった。
きっと次代をバカにすることで、貴族たちが力をつけようとしたということなのか、乙女ゲームだからそこまで考えていないか……とにかく、排除することに罪悪感がもたれないようにするための仕様なのか、顔以外クズだった。
比較材料として、今この世界では伯爵王子と呼ばれすでに異母兄であるとわかっている伯爵子息は、物語の進行で王子とは異母兄であるとわかる、穏やかで人格者であるように描かれていた。
今は俺の側近候補でも何でもないが、ゲーム2作目の攻略対象者達は、初めは仕方なくチュート殿下の近くにいるが、ヒロインの登場によって,自分たちのしなければならないことに気付き、結果害悪でしかないチュート殿下を廃嫡に追い込む旗頭になっていくのだ。
そしてゲームの時と今とでは全く違う人物として、クリフ・マークィス・ゲイル侯爵子息の妹フォスキーア・マルケーゼ・ゲイル侯爵家令嬢がいる。
今は初級学校の半年間クラスメイトであっただけの存在で、前世の記憶で顔は知っているという程度。
しかし、ゲームでは結構大役の俺の婚約者で、いわゆる悪役令嬢枠だった。
そう、俺とヒロインが仲良くなることを良しとせず、テンプレないじめを行い。婚約破棄される役割の彼女。
クズのチュート殿下のどこがよかったのか、その地位に固執したのか、あくまでも政略のための婚約なのだけど、そこら辺の彼女の心の中はゲームでは全く描かれず、ただの悪役令嬢としてゲームの色どり扱いだった。
ゲームの中で、次作の頭で辺境にやられるチュート殿下よりずっと前に、国外追放されるかわいそうな役どころだった。
父親や、兄が全く助けようとしなかったのも、ゲームをしていた時は疑問に思わなかったが、今考えるとテンプレだからでは片づけられない気がする。
彼女のためにも、わざと関わらないようにしてきたところもあったが、ゲームの強制力によってはそうはいってもいられないことになるかもしれない。
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