49 / 186
チュート殿下 34 見世物になるのは決定事項⁉
しおりを挟む
「離宮を出るまでは、これかぶる必要ないですからね」
貫頭衣のような聖服の下には、いつもの恰好の若干上等バージョン。
白の開襟シャツに白のトラウザーズ、どちらも裾部分に金色の糸で刺繍が入っている。この世界、まだ10歳の子供だったら、半ズボンで過ごすことが多いのだが、俺は肌があまり強くないらしく、普段から上下とも長袖長ズボンなのだ。
肩から裾まで一つ聖服を伸ばすように撫でて、リフルは俺の髪をしっかりと梳り、背中のフードをパタパタと揺らすと、マーシュを呼びに衣裳部屋から出ていった。
壁にかけられている俺よりも大きな鏡に、ゲームで見た当て馬君のミニサイズが写っている。
横を見ると鏡に映った俺の姿を見て笑っている、キールがいる。
正面を見ると、鏡に映っているのは俺一人だけ。
キールはなぜか全く俺と同じ服装をして立っている。身長は俺よりも頭半分大きい。だから、若干見下ろされる……。
「俺しか見ることができないのに、なんでそんな恰好をしているんだよ」
近くに誰もいないことは確認済。
キールの姿は俺が作ったもの、俺の心の中の形が実体化したものと、キール自身が説明してくれたが、爆誕してから2年経った今、背の高さが俺より大きかったり、態度も大きかったりするのは、決して俺の心の形だとは思えない。
今も好き好んで同じ姿を望んでいるとしたら、自分的にもなんだかなぁ……な気分になる。
俺の深層心理も、表層に感じとるキールのことだから、俺の心をくすぐるようなチクチク刺すような微妙なところを突いてくるのだ。
「一世一代の恰好なのだろう。何だか面白いし、それこそ主にしか見えないのだから、私の恰好など些末な事さ」
裸で横をフラフラするよりは大分マシだろう。と笑っている。
そんなキールの様子に肩の力が抜けて、そのことで自分が緊張していることに気が付いた。
良いも悪いも、この精霊との契約によって,『アースクエイク』のゲームは始まるのだ。
いてもいなくてもどうでもよかったミソッカス王子が、表向きはただ一人の王位継承を持つ男児として扱わなければならない存在として、大勢の人の目に晒される瞬間が、あと少しで訪れる。
貴族の一番汚い面に晒される。
命の危険も増すだろう。
俺が狙われることは仕方がない。納得はできないし、死ぬ気もないけど。
ただ、俺の周りにいる俺の味方であるほんの一握りの人間も同じように狙われるのだったら……。
俺は、キールと共に、そのことに対抗できる力を持つために、必死に考え、必死に情報を取得し、必死に体を鍛えてきた。
俺はどうも体があまり大きくならないようで、筋肉より頭脳を鍛えた。剣より魔法よりってところだ。
キールは、誰にも見えない感じられない特技を生かして、俺が認識する忍者に近い動きをすることに特化した存在になった。ただ、直接的に干渉されないキールは、外界に対して物理的な干渉をすることはできないようで、攻撃をするような場面になった時は俺の体を使ってしか、外的な攻撃はすることしかできない。
しかし、内面的攻撃、すなわち精神攻撃は得意中の得意だけれど……。
「黒いんだよ……」
俺に対しても、敵に対しても、攻撃がエグイ‼
そう言うと、それは主がそうだからだと必ず返答を返すのだ……解せぬ……。
自分なりの服装チェックも終えて、一応最終確認のマーシュを待つばかり。
鏡に映る自分の姿を、くるくる体をひねりながら確かめてみる。
長い上衣からは、足元以外何も見えない。
スリットがサイドに入っているため、見た目よりは歩き辛くなさそう。
「ただ、きっと目立つよね」
この世界、フードが付いている服って外套以外だとそんなに存在しない。
屋内で着ていて違和感のないものとしては、この修道士の聖服ぐらいしかいない。
「教会系の家柄の子供で、そのような格好の者が居ないとも限らない。まぁ、金色使ってる時点でどんな格好しても目立つから、服装に視線を持って行かせるところは、さすがにマーシュ殿だな」
腕組みをして何度も頷いているキールはの姿を改めてみれば、確かにこの突飛とも言える服装の方に意識は持っていかれることだろう。その上フードを深く被ることで顔などを全く見えなくなるのだから。
貫頭衣のような聖服の下には、いつもの恰好の若干上等バージョン。
白の開襟シャツに白のトラウザーズ、どちらも裾部分に金色の糸で刺繍が入っている。この世界、まだ10歳の子供だったら、半ズボンで過ごすことが多いのだが、俺は肌があまり強くないらしく、普段から上下とも長袖長ズボンなのだ。
肩から裾まで一つ聖服を伸ばすように撫でて、リフルは俺の髪をしっかりと梳り、背中のフードをパタパタと揺らすと、マーシュを呼びに衣裳部屋から出ていった。
壁にかけられている俺よりも大きな鏡に、ゲームで見た当て馬君のミニサイズが写っている。
横を見ると鏡に映った俺の姿を見て笑っている、キールがいる。
正面を見ると、鏡に映っているのは俺一人だけ。
キールはなぜか全く俺と同じ服装をして立っている。身長は俺よりも頭半分大きい。だから、若干見下ろされる……。
「俺しか見ることができないのに、なんでそんな恰好をしているんだよ」
近くに誰もいないことは確認済。
キールの姿は俺が作ったもの、俺の心の中の形が実体化したものと、キール自身が説明してくれたが、爆誕してから2年経った今、背の高さが俺より大きかったり、態度も大きかったりするのは、決して俺の心の形だとは思えない。
今も好き好んで同じ姿を望んでいるとしたら、自分的にもなんだかなぁ……な気分になる。
俺の深層心理も、表層に感じとるキールのことだから、俺の心をくすぐるようなチクチク刺すような微妙なところを突いてくるのだ。
「一世一代の恰好なのだろう。何だか面白いし、それこそ主にしか見えないのだから、私の恰好など些末な事さ」
裸で横をフラフラするよりは大分マシだろう。と笑っている。
そんなキールの様子に肩の力が抜けて、そのことで自分が緊張していることに気が付いた。
良いも悪いも、この精霊との契約によって,『アースクエイク』のゲームは始まるのだ。
いてもいなくてもどうでもよかったミソッカス王子が、表向きはただ一人の王位継承を持つ男児として扱わなければならない存在として、大勢の人の目に晒される瞬間が、あと少しで訪れる。
貴族の一番汚い面に晒される。
命の危険も増すだろう。
俺が狙われることは仕方がない。納得はできないし、死ぬ気もないけど。
ただ、俺の周りにいる俺の味方であるほんの一握りの人間も同じように狙われるのだったら……。
俺は、キールと共に、そのことに対抗できる力を持つために、必死に考え、必死に情報を取得し、必死に体を鍛えてきた。
俺はどうも体があまり大きくならないようで、筋肉より頭脳を鍛えた。剣より魔法よりってところだ。
キールは、誰にも見えない感じられない特技を生かして、俺が認識する忍者に近い動きをすることに特化した存在になった。ただ、直接的に干渉されないキールは、外界に対して物理的な干渉をすることはできないようで、攻撃をするような場面になった時は俺の体を使ってしか、外的な攻撃はすることしかできない。
しかし、内面的攻撃、すなわち精神攻撃は得意中の得意だけれど……。
「黒いんだよ……」
俺に対しても、敵に対しても、攻撃がエグイ‼
そう言うと、それは主がそうだからだと必ず返答を返すのだ……解せぬ……。
自分なりの服装チェックも終えて、一応最終確認のマーシュを待つばかり。
鏡に映る自分の姿を、くるくる体をひねりながら確かめてみる。
長い上衣からは、足元以外何も見えない。
スリットがサイドに入っているため、見た目よりは歩き辛くなさそう。
「ただ、きっと目立つよね」
この世界、フードが付いている服って外套以外だとそんなに存在しない。
屋内で着ていて違和感のないものとしては、この修道士の聖服ぐらいしかいない。
「教会系の家柄の子供で、そのような格好の者が居ないとも限らない。まぁ、金色使ってる時点でどんな格好しても目立つから、服装に視線を持って行かせるところは、さすがにマーシュ殿だな」
腕組みをして何度も頷いているキールはの姿を改めてみれば、確かにこの突飛とも言える服装の方に意識は持っていかれることだろう。その上フードを深く被ることで顔などを全く見えなくなるのだから。
2
お気に入りに追加
1,707
あなたにおすすめの小説
私はあなたの母ではありませんよ
れもんぴーる
恋愛
クラリスの夫アルマンには結婚する前からの愛人がいた。アルマンは、その愛人は恩人の娘であり切り捨てることはできないが、今後は決して関係を持つことなく支援のみすると約束した。クラリスに娘が生まれて幸せに暮らしていたが、アルマンには約束を違えたどころか隠し子がいた。おまけに娘のユマまでが愛人に懐いていることが判明し絶望する。そんなある日、クラリスは殺される。
クラリスがいなくなった屋敷には愛人と隠し子がやってくる。母を失い悲しみに打ちのめされていたユマは、使用人たちの冷ややかな視線に気づきもせず父の愛人をお母さまと縋り、アルマンは子供を任せられると愛人を屋敷に滞在させた。
アルマンと愛人はクラリス殺しを疑われ、人がどんどん離れて行っていた。そんな時、クラリスそっくりの夫人が社交界に現れた。
ユマもアルマンもクラリスの両親も彼女にクラリスを重ねるが、彼女は辺境の地にある次期ルロワ侯爵夫人オフェリーであった。アルマンやクラリスの両親は他人だとあきらめたがユマはあきらめがつかず、オフェリーに執着し続ける。
クラリスの関係者はこの先どのような未来を歩むのか。
*恋愛ジャンルですが親子関係もキーワード……というかそちらの要素が強いかも。
*めずらしく全編通してシリアスです。
*今後ほかのサイトにも投稿する予定です。
異世界召喚されたのは、『元』勇者です
ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。
それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。
異世界を【創造】【召喚】【付与】で無双します。
FREE
ファンタジー
ブラック企業へ就職して5年…今日も疲れ果て眠りにつく。
目が醒めるとそこは見慣れた部屋ではなかった。
ふと頭に直接聞こえる声。それに俺は火事で死んだことを伝えられ、異世界に転生できると言われる。
異世界、それは剣と魔法が存在するファンタジーな世界。
これは主人公、タイムが神様から選んだスキルで異世界を自由に生きる物語。
*リメイク作品です。
転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~
桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。
両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。
しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。
幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。
晩夏光、忘却の日々
佐々森りろ
青春
【青春×ボカロPカップ】エントリー作品
夕空が、夜を連れて来るのが早くなった。
耳を塞ぎたくなるほどにうるさかった蝉の鳴く聲が、今はもう、しない。
夏休み直前、彼氏に別れを告げられた杉崎涼風は交通事故に遭う。
目が覚めると、学校の図書室に閉じ込められていた。
自分が生きているのか死んでいるのかも分からずにいると、クラスメイトの西澤大空が涼風の存在に気がついてくれた。
話をするうちにどうせ死んでいるならと、涼風は今まで誰にも見せてこなかった本音を吐き出す。
大空が涼風の事故のことを知ると、涼風は消えてしまった。
次に病院で目が覚めた涼風は、大空との図書室でのことを全く覚えていなかった……
孤独な涼風と諦めない大空の不思議で優しい、晩夏光に忘れた夏を取り戻す青春ラブストーリー☆*:.。.
【完結】愛してないなら触れないで
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
恋愛
「嫌よ、触れないで!!」
大金で買われた花嫁ローザリンデは、初夜の花婿レオナルドを拒んだ。
彼女には前世の記憶があり、その人生で夫レオナルドにより殺されている。生まれた我が子を抱くことも許されず、離れで一人寂しく死んだ。その過去を覚えたまま、私は結婚式の最中に戻っていた。
愛していないなら、私に触れないで。あなたは私を殺したのよ。この世に神様なんていなかったのだわ。こんな過酷な過去に私を戻したんだもの。嘆く私は知らなかった。記憶を持って戻ったのは、私だけではなかったのだと――。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
※2022/05/13 第10回ネット小説大賞、一次選考通過
※2022/01/20 小説家になろう、恋愛日間22位
※2022/01/21 カクヨム、恋愛週間18位
※2022/01/20 アルファポリス、HOT10位
※2022/01/16 エブリスタ、恋愛トレンド43位
うちの旦那はちょっとおかしい。
隆駆
エッセイ・ノンフィクション
30代アラフォー夫婦。
霊感(?)があるらしき夫から聞いた不思議な話をまとめてみました。
リアルガチ(笑)で体験した奇妙なお話連発です。
※信じられないような話もありますが、当方嘘はついておりません。
愛される王女の物語
ててて
恋愛
第2王女は生まれた時に母をなくし、荒れ果てた後宮で第1王女とその義母に虐められていた。
周りは彼女を助けない。国民はもちろん、国王や王子さえ…
それは彼女の生存を知り得なかったから。
徹底的に義母が隠していたのだ。
国王たちは後宮に近づくこともしなかった。
いや、近づきたくなかった。
義母とその娘に会いたくなくて、出来るだけ関わらないようにしていた。
では、そんな中で育った誰も知らない第2王女を偶然に出会い見つけたら…?
第1章→家族愛
第2章→学園
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる