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チュート殿下 25 「……考えるほど怖くなってきた……」

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 俺は知ってるけど……ヴォーテックスの髪色は茶金。これは下級精霊だけど、光属性の精霊と契約できたことを表す。この国では、金色は王家の色とされていている上に、なぜか直系の王の子供にしか現れない。

 瞳の色は薄青。こちらも水の下級精霊と契約できたことを表している。王子は青系の瞳って……乙女ゲームだし……。

 5歳の時の『帯剣の儀』が暗殺未遂で終わり、結局犯人は見つからずじまい。このことからも、犯人は外の人ではなく、中の人。それも、偉い権力をもっているようで者が犯行を計画したものだと考えられる。

 一応王子。それも、王妃から生まれた表向きたった一人の子供が、城の中枢で殺されかけたのに、犯人のしっぽも見つからない。このまま未解決であることが濃厚。

 3年たった今では話にも上がらない。はじめから調べる気もなかったかの如く……。
 
 まぁ、以前の俺はアレだったし、なぜか魔力もない精霊契約もできないと占われたようだし。

 これで、王の子供であるとハッキリとしていなかったヴォーテックスに王家の色が出たら、出来損ないの王子がただ一人の子供ではなくなったことは、殺すつもりがあったのかはっきりしていないまま終わった暗殺未遂が、遂行してもなんら障害がなくなったことを示すのだから、マーシュの朝からのピリピリも納得できる。

 もうすぐ精霊契約の結果がみんなの目の前に表されるから、そうしたらなおのこと俺の立場は悪くなるのだろうか。この離宮にもいられないくらいに。

 この離宮の皆は、俺が光属性の精霊と契約していないまでも、何かしらの関わりを得られていることや、それなりに魔法が使えていることは知っている。

 でも、10歳になって正式な精霊契約の儀式が終わる夏至のこの日までは、俺が金髪(それもピカピカ)であることや、魔法が結構使えてしまうことは秘匿しなけばいけない。

 この王城の東の一番はずれにある、小さな離宮に移ったのも、俺の秘密を守るために、立場の非常に弱い中無理をしただろうマーシュには、何を返せばいいのか。

 きっと、これからは今まで以上に俺の身辺が焦げ臭くなるかもしれない。

 俺の知るゲームの中では、そもそも金髪になっていなかったし、襲撃もないし、離宮に引っ越しもしていなかった。

 ヴォーテックスは確かに陛下の落し胤だったが、認知?をされている様子ではなく、公の秘密のような扱いだった。
 
 所詮乙女ゲームによくある『実は王子さまでした』の役割を担うキャラだったのだから。

 もちろんイケメン。

 アーク殿下が俺様王子だったのに対して、本物の王子様枠だった。

 髪がパツ金ではなく、茶金だったけど。

 当て馬であるとしても、一応主役の一人であるから、子供のうちに退場することはないと思いたいけど、すでに『僕』と『俺』が一つになった今の俺は、ゲームからかけ離れているかもしれないから、逆にゲームのようにバッドエンドまで生きているかもわからなくなった、ともいえるわけで。

「……考えるほど怖くなってきた……」

 もう、精霊契約の儀式は終わったころかな。

 なんとなく、魔力を流して離宮内の索敵をしてみる。

 この部屋の中に居るのは俺とリフル。目を閉じて集中するとスキル君もお手伝いしてくれたのか、頭の中にこの離宮の展開図のようなものが浮かび上がり、俺を中心として、所々にいろいろな色が点滅しながら動いているのが見える。

 一番近くは動いていないリフルか。白い弱い光が点滅している。

 門のところの二つの光点もほぼ動いていない。色は赤と青でリフルよりも随分と明るい光だ。

 調理場で動いているのはこの離宮の料理長か。うっすらと赤い光が調理場の中を動いているのがわかる。あと二つ廊下を世話しなく動いている光点が二つ。一つはリフルと同じ白い弱い光。侍女の一人平民の子。もう一つは薄い緑、確か風属性の下級精霊と契約できた男爵家出身の子。

 あまりこの離宮から離れないマーシュが今はいないのか、その他の光は感じられない。

 この離宮の結界も薄いベールのような光で映し出されている。

 このベールの外まで、俺の魔力を流すのはまずい気がしてやめておく。

 索敵魔法もすぐできたな。やっぱりチート?なーんて。

 
 
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