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チュート殿下 19「あれれぇ~……ボク子供だからわからなぁい」は今更できない。

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 『僕』の中から欠けていた『俺』は、『僕』の生存力を大幅に食っていたようで、はたから見れば全く生きようとする気のない子供であった。自分から物も食べないんだから……。

 だから、5歳まで身体が小さかろうが、生きてこられたのは今まで『僕』の面倒を見てくれていたマーシュ達のおかげなのだ。
 
 スキル君が僕は食事を例え摂らなくても、大気中の魔素を摂取すれば生存維持はできています。

 とか、言ってるけど……魔素って何よ?……魔素とは……って今はいいから!心の中の問いかけに一々答えなくていいからぁ!

 って、壁に向かって一人ツッコミをしている幼児。一人と言っても絶対全く一人にはなっていないの、だってボク王子様だから。

 『僕』も充分異様な幼児だったから、周りの人も耐性できてるよねぇ、と、後ろに振り返ってみる。

 真顔のリフルと目があった。

「……」
 
〈オイ、笑いたいなら笑え、肩が震えてるぞ!〉

 なんて、こと言わないけどな。

 まだお互いの距離感?ていうの、掴み兼ねているところがあるから。


 侍従長のマーシュとは、『俺』が目覚めてから、混乱したまま、ほぼ17歳の意識の『俺』の方で対峙してしまった時があったので、これから繕ってもしかたがないかなぁという気もするし。

〈「あれれぇ~……ボク子供だからわからなぁい」〉

 のように、見た目は子供の名探偵みたいなこと、今更できないし……。

 この離宮の中では、ほぼ心の中は『俺』である今のアーク殿下で居させて欲しい。

 一方……リフルはねぇ……リフルは、『僕』の記憶で距離感が異常に近いから、彼だけなんか違ったし。

 彼は俺が何やっても喜ぶんだもの。この前も背後に犬のしっぽの残像がみえたし。

 スキル君に彼のことを訪ねても、【設定資料集】以上のことは教えてくれない。

 でも、資料集の中の【ヤンデレ】って……。

 スキル君はヤンデレの意味を教えてくれているけど、思考をカット!

 俺はそれ以上リフルのことを考えるのを放棄して、これからの自分のことを考えてみる。

 身体の最低的な維持は出来ている。スキル君の言葉からすると、食物の摂取がなくても俺は魔素とやらで生きて行けるらしい。

 〈この世界の人間は誰でもそうなのかな?〉

 「……」

 今度は答えてくれないんかい!まぁ、すべての答えを教えてもらうクイズや、ミステリーなんかも詰まらないもんねぇ。

 「……」

 なんかスキル君がへそ曲げた?本当に聞きたいときは教えてね……。

 とにかく、命に別条なくても、このもやしで小さい身体を鍛えないと、男の子だから。

 でも、外に出た記憶ないんだよね、歩いた記憶すらない。ある意味スゲーな俺……。

 今は……外見的にも姿を晒すことができなくなったので、後宮から追い出されて、王城の隅っこのこの小さい離宮にこられたのはよかったのかもしれない。

 マーシュ曰く、ここは何十年も前に、とある病気にかかった王女の為に作られたもので、王女様がとても人目を嫌ったのか、離宮の周りが結構高い壁に囲まれていて、どかからもこの離宮の中を見ることができなくなっているらしい。

 と言って、離宮の庭に日が当たらないということもなく、手を入れたばかりに庭は、愛でるための植栽は全て抜かれて、一面芝生のような背の低い緑が植えられている。

 ここでも、魔法の国のファンタジー。植えられた緑は一瞬で種から目を出し根を張ったのだ。

 この魔法は、水属性で治癒魔法の範疇に入る、成長促進作用を促す水を掛けることでできる魔法らしい。スキル君ではなく、興味深そうに庭を見ていた俺に、ぴったり付いているリフルが教えてくれた。

 水属性の魔法は使い勝手の良いものが多く、治癒はもちろん攻撃にも使える、光属性の使い手が極端に少ないこの世界で、脳筋でなければ欲しい魔法ナンバーワンらしい。ちなみに脳筋は火属性らしい。

 リフルは色を纏ってないことからも、生活魔法以外は使えないそうだが、貴族出身の為初級学校に通ったので、魔法の基本的なことは学んだということだ。

 この庭であれば、外から誰にも見られずにそれなりの運動できるよね。

 でも、まずは日光浴からかな。

 
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