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チュート殿下 4 目覚めてみれば……暗殺未遂⁉
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そもそも、転生⁈っていうか前世のことを思い出すこと自体あり得ないことなのに、そのことによって現世が乙女ゲームの世界であり、自分がその登場人物であることに気が付くということは、どれほどの確率で起こることであるのか?宝くじより余程確率の低そうなこれは幸福なことなのか?
もしもこの転生が俗にいうただの『モブ転生』であったなら、物語の流れと関係ないところで、主要キャラ達がオタオタと動き回っているところを覗き見するなり、ドキ恋エキスパートの俺は十分に出来る未来予測から自分に有利になるように立ち回ることもできただろう。
ところが…俺が置かれているのは、認めたくない…認めたくないが、二枚組『ドキ恋』エチュード一枚目の唯一の攻略対象であるチュート殿下ことアースクエイク・デューク・テンペスト本人ではないか?
彼の子供のころの姿は、セピア調のスチルでしか見たことないが、攻略年齢の15歳からの顔は嫌というほど見ている俺としては、その時の面影が今見えている自分の顔に十分見受けられるのだ。
今の『俺』を思い出すきっかけになったのは、きっとこの世界で男児が5歳の時に行われる『帯剣の儀』の時の事故だろう。
詳しいことはゲームの中で語られることがなかったので、攻略本の中にあった年表に載っていた『暗殺未遂』という短い表記で想像するしかないが、この事故、事件によって、なおいっそう王子の内向的で加虐的な性格が醸成されたらしい。
ゲームのチュート殿下の性格のことだけどな‼
ゲームの『ドキ恋』は、勿論日本製のゲームだったから、舞台は中世ヨーロッパ風なのに、所々ジャパニーズ臭が漂うのだ。
貴族男子のみに行われる『帯剣の儀』も、男の子が5歳の時に行う儀式とされていて、宮中で行なわれていた『着袴の儀』(七五三の元)の西洋版そのものだ。
その袴ではなく、サーベルを腰に付けたところで、誰かの魔法による攻撃を受けたみたいなのだが、警備が一番厳重であろう城の中で、如何にして魔法を放てたのだろうか?
暗殺未遂にあう前の状況とか、それまでの『僕』の記憶だとかを思い出そうとしても、たいしたものが記憶の表層にまで全く浮かんでこない。
主人格はすでに『俺』に乗っ取られているようなものだが、といって『僕』の記憶全てがなくなっているようには感じない。
なんというのか、『僕』の全ての感情の起伏や記憶が、フワフワしているというのか、霧の中に霞んでいるというのか、一枚薄いフィルターの掛かった向こう側で行われていることを、こちら側で見ているような、そんな感覚でしか捉えられないのだ。
今の『俺』は、オロオロしているリフルの様子や、息を切らしながらもう一度俺の顔色を伺っている侍医の息遣いまで、リアルに感じているけどな……。
今のこの感覚から、もしかしたら……、『俺』は『僕』が生まれた時から一緒に在ったけど、心の奥底かどこかで眠っていて、『僕』である、ごくごく一部の感覚しか目覚めていなくて、なにもかもあやふやな、ほとんど反応しない子供としての今の状態の殿下としてこの世に在った……?
それが先程の『暗殺未遂』で、眠っていた『俺』が目覚めた。
やっと人並みの魂となって、現世における感覚がクリアーになった。ってことなのかもしれない、前世の記憶のおまけつきで……。
だから、やっぱり何も反応を返さないことが正解のようで、普通ならばおかしいと思われる子供の反応に構うことなく、侍医は再び部屋から下がっていった。
じっとベットの天蓋の鏡に映る自分だろう姿を見ていると、頭の隅っこで『俺』ではない『僕』の記憶が違和感を訴える。
何に引っ掛かりを感じているんだろう?
やたらと大きなベッドの中心に、ちんまりと丸まっている金色の毛玉。
金色の……金色の?
そうだ‼たしかカラースチルはゲームの年齢15歳以降のものしか見ることが出来なかったから、今の5歳児だろう俺の金色の髪色に違和感を感じなかったが、このゲームの世界では、10歳になって精霊(これまたファンタジー)と契約を結べるようになるまでは、みな茶色い髪の毛と瞳の色しか纏っていないはずだ。
だから、精霊と契約を結ぶことができない平民はほとんどが茶色の髪と瞳。契約できた人がその精霊の色を持つから、契約できるものの多い貴族はカラフルな人が多いのだ。
つまり、『ドキ恋』の世界観そのままであったのならば、まだ5歳児の『俺』が金色の髪の毛であることはおかしいことなのだ。
それが、『僕』の違和感なのか。今までの自分は茶髪に茶色の瞳だったのが、金髪碧眼の姿になった……。
子供のころの過去のことを表すスチルはセピア調だったから、個人の色合いはわからなかったよ、わざとか?
もしかしたら、普通持つことのない色をこの年齢で纏ったことが、あのゲーム上での傲慢でわがままで俺様な性格を作った要因の一つなのか?
今までもきっとこの殿下に近づいて来る者は居なかったみたいだから、なおさら異端になればその状態に拍車がかかるだろう。
傲慢もわがままも、もらえぬ愛に対する裏返し。
5歳児の『僕』の心の軋みを『俺』は感じていた。
もしもこの転生が俗にいうただの『モブ転生』であったなら、物語の流れと関係ないところで、主要キャラ達がオタオタと動き回っているところを覗き見するなり、ドキ恋エキスパートの俺は十分に出来る未来予測から自分に有利になるように立ち回ることもできただろう。
ところが…俺が置かれているのは、認めたくない…認めたくないが、二枚組『ドキ恋』エチュード一枚目の唯一の攻略対象であるチュート殿下ことアースクエイク・デューク・テンペスト本人ではないか?
彼の子供のころの姿は、セピア調のスチルでしか見たことないが、攻略年齢の15歳からの顔は嫌というほど見ている俺としては、その時の面影が今見えている自分の顔に十分見受けられるのだ。
今の『俺』を思い出すきっかけになったのは、きっとこの世界で男児が5歳の時に行われる『帯剣の儀』の時の事故だろう。
詳しいことはゲームの中で語られることがなかったので、攻略本の中にあった年表に載っていた『暗殺未遂』という短い表記で想像するしかないが、この事故、事件によって、なおいっそう王子の内向的で加虐的な性格が醸成されたらしい。
ゲームのチュート殿下の性格のことだけどな‼
ゲームの『ドキ恋』は、勿論日本製のゲームだったから、舞台は中世ヨーロッパ風なのに、所々ジャパニーズ臭が漂うのだ。
貴族男子のみに行われる『帯剣の儀』も、男の子が5歳の時に行う儀式とされていて、宮中で行なわれていた『着袴の儀』(七五三の元)の西洋版そのものだ。
その袴ではなく、サーベルを腰に付けたところで、誰かの魔法による攻撃を受けたみたいなのだが、警備が一番厳重であろう城の中で、如何にして魔法を放てたのだろうか?
暗殺未遂にあう前の状況とか、それまでの『僕』の記憶だとかを思い出そうとしても、たいしたものが記憶の表層にまで全く浮かんでこない。
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なんというのか、『僕』の全ての感情の起伏や記憶が、フワフワしているというのか、霧の中に霞んでいるというのか、一枚薄いフィルターの掛かった向こう側で行われていることを、こちら側で見ているような、そんな感覚でしか捉えられないのだ。
今の『俺』は、オロオロしているリフルの様子や、息を切らしながらもう一度俺の顔色を伺っている侍医の息遣いまで、リアルに感じているけどな……。
今のこの感覚から、もしかしたら……、『俺』は『僕』が生まれた時から一緒に在ったけど、心の奥底かどこかで眠っていて、『僕』である、ごくごく一部の感覚しか目覚めていなくて、なにもかもあやふやな、ほとんど反応しない子供としての今の状態の殿下としてこの世に在った……?
それが先程の『暗殺未遂』で、眠っていた『俺』が目覚めた。
やっと人並みの魂となって、現世における感覚がクリアーになった。ってことなのかもしれない、前世の記憶のおまけつきで……。
だから、やっぱり何も反応を返さないことが正解のようで、普通ならばおかしいと思われる子供の反応に構うことなく、侍医は再び部屋から下がっていった。
じっとベットの天蓋の鏡に映る自分だろう姿を見ていると、頭の隅っこで『俺』ではない『僕』の記憶が違和感を訴える。
何に引っ掛かりを感じているんだろう?
やたらと大きなベッドの中心に、ちんまりと丸まっている金色の毛玉。
金色の……金色の?
そうだ‼たしかカラースチルはゲームの年齢15歳以降のものしか見ることが出来なかったから、今の5歳児だろう俺の金色の髪色に違和感を感じなかったが、このゲームの世界では、10歳になって精霊(これまたファンタジー)と契約を結べるようになるまでは、みな茶色い髪の毛と瞳の色しか纏っていないはずだ。
だから、精霊と契約を結ぶことができない平民はほとんどが茶色の髪と瞳。契約できた人がその精霊の色を持つから、契約できるものの多い貴族はカラフルな人が多いのだ。
つまり、『ドキ恋』の世界観そのままであったのならば、まだ5歳児の『俺』が金色の髪の毛であることはおかしいことなのだ。
それが、『僕』の違和感なのか。今までの自分は茶髪に茶色の瞳だったのが、金髪碧眼の姿になった……。
子供のころの過去のことを表すスチルはセピア調だったから、個人の色合いはわからなかったよ、わざとか?
もしかしたら、普通持つことのない色をこの年齢で纏ったことが、あのゲーム上での傲慢でわがままで俺様な性格を作った要因の一つなのか?
今までもきっとこの殿下に近づいて来る者は居なかったみたいだから、なおさら異端になればその状態に拍車がかかるだろう。
傲慢もわがままも、もらえぬ愛に対する裏返し。
5歳児の『僕』の心の軋みを『俺』は感じていた。
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