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5章
18.順番
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ロドリーとはギルドの中で待ち合わせをしている。
ドアをくぐるとすぐに見つかった。アンドゥトロワさんと同じ席にいるからよく目立つ。
「こんにちは」
「ウェスパルさんにルクスさん。久しぶりだな」
「元気だったか?」
「学園はどう? 馴染めているか?」
「お陰様で元気に通っています」
「そっか。良かった良かった」
私達がギルドに顔を見せないから気にしてくれていたらしい。
先に来ていたロドリーも、私とルクスさんもちゃんと学園に通っていると聞いて、家族のことのように喜んでくれている。
本当にいい人達だ。お兄様達はどれだけ入り浸っていたのかと思わなくはないが。
「実は今、皆さんに冒険者の心得を教えてもらっていたんだ」
「そんな大したことでもないよ」
彼らはハハハと笑ってから、私とルクスさんにも駆け出し冒険者の狩り場や薬草採取の場を教えてくれた。
冒険者は皆、一番下のランクから始まり、クエストをこなしていくことでポイントを貯めていく必要がある。駆け出し冒険者が受けられるのは一番下のクエストのみ、以降は自分の一つ上のランクのクエストまで受けられる。
クエストを達成すると難易度に応じてポイントが割り振られ、一定ラインまで貯まると昇級となる。
「初めの方の薬草採取は手で摘めばいいんだけど、ある程度お金が貯まったらはカウンターで売っている採取セットを買った方が良いよ」
「植物の根っこを納品することとか、切り口が綺麗だと引き取り額が上がることも多いから」
「討伐をメインにするにしても行き先で高額引取の植物を見つけるかもしれないし、ギルドで買った方が品質と値段の釣り合いが良いから」
「それから二人なら問題ないと思うけど、これが一番大事なことで。持ち帰れる分だけ狩る・早めに解体を覚える・帰りの時間も考慮する」
「解体なら得意です」
「沢山入るバッグを持ってます」
「なら時間だけ気をつけて。君達の強さは疑っていないけど、暗くなるとまた環境が変わるから」
「はい!」
私とルクスさん、ロドリーだけなら討伐クエスト一択で、採取セットが売っていても全く気付かなかったはずだ。それに初歩的なことだからと飛ばさずに細かいところまで教えてくれる。ありがたい。凄く勉強になる。
クエストの受注まで手伝ってもらってからギルドを出る。そのまま広場まで歩き、ロドリーは首から下げたタグを握った。
「みんなで俺の魔獣に乗って行こう」
「三人乗っても大丈夫?」
入学前試験の時にも思ったが、ロドリーの魔獣は初めて見た時よりも大きくなっている。
大きさだけ見れば問題なさそうだが、三人も乗ると重さもそれなりになってしまう。負担をかけるのは申し訳ない。
「いつも解体した魔物を乗せてるから大丈夫だ。といっても四人は無理そうだが」
「この短期間で三人乗れるほどに育てただけで立派だ」
「どういうことですか?」
「俺のグリフォンは強さに応じて身体が大きくなる種族なんだ。といってもアカほど大きくはならないけど。俺が先頭で、ルクスさん、ウェスパルの順でいいか?」
「うむ。問題ない」
「え、ルクスさんが私の後ろの方がいい」
普段なら問題ないが、今日のルクスさんは人型。ドラゴンの姿の時には小さかった尻尾も人の姿と比例して大きくなっている。かといって上に跨がる訳にもいかない。脇に抱えれば私もルクスさんも安定感を失ってしまう。
なので最後尾が一番無難だ。
そう思ったのは私だけらしい。
ロドリーは表情を曇らせる。
「でも俺が三番目じゃ前がよく見えないから」
「いや、私が二番目で……」
「それはダメだ」
「え、なんで?」
「尻尾は身体の間に挟めばいいだろう」
ロドリーは即答だし、ルクスさんは呆れたような目で見てくる。まるで私が変なことでも言っているかのようだ。
「なんでそんなに二番目がいいんですか……」
「諦めろ」
二人は声を揃える。二対一。多数決で負けた私は仕方なく言われた通りの順番でグリフォンに乗る。
最後尾はやはり不安定で、尻尾の存在感が大きい。顔の高さまであるそれを担ぐ形で、ルクスさんにしがみつく。
「後ろは大丈夫か?」
「大丈夫~」
「飛ぶぞ」
ロドリーの合図でグリフォンが空高く飛び上がった。
ドアをくぐるとすぐに見つかった。アンドゥトロワさんと同じ席にいるからよく目立つ。
「こんにちは」
「ウェスパルさんにルクスさん。久しぶりだな」
「元気だったか?」
「学園はどう? 馴染めているか?」
「お陰様で元気に通っています」
「そっか。良かった良かった」
私達がギルドに顔を見せないから気にしてくれていたらしい。
先に来ていたロドリーも、私とルクスさんもちゃんと学園に通っていると聞いて、家族のことのように喜んでくれている。
本当にいい人達だ。お兄様達はどれだけ入り浸っていたのかと思わなくはないが。
「実は今、皆さんに冒険者の心得を教えてもらっていたんだ」
「そんな大したことでもないよ」
彼らはハハハと笑ってから、私とルクスさんにも駆け出し冒険者の狩り場や薬草採取の場を教えてくれた。
冒険者は皆、一番下のランクから始まり、クエストをこなしていくことでポイントを貯めていく必要がある。駆け出し冒険者が受けられるのは一番下のクエストのみ、以降は自分の一つ上のランクのクエストまで受けられる。
クエストを達成すると難易度に応じてポイントが割り振られ、一定ラインまで貯まると昇級となる。
「初めの方の薬草採取は手で摘めばいいんだけど、ある程度お金が貯まったらはカウンターで売っている採取セットを買った方が良いよ」
「植物の根っこを納品することとか、切り口が綺麗だと引き取り額が上がることも多いから」
「討伐をメインにするにしても行き先で高額引取の植物を見つけるかもしれないし、ギルドで買った方が品質と値段の釣り合いが良いから」
「それから二人なら問題ないと思うけど、これが一番大事なことで。持ち帰れる分だけ狩る・早めに解体を覚える・帰りの時間も考慮する」
「解体なら得意です」
「沢山入るバッグを持ってます」
「なら時間だけ気をつけて。君達の強さは疑っていないけど、暗くなるとまた環境が変わるから」
「はい!」
私とルクスさん、ロドリーだけなら討伐クエスト一択で、採取セットが売っていても全く気付かなかったはずだ。それに初歩的なことだからと飛ばさずに細かいところまで教えてくれる。ありがたい。凄く勉強になる。
クエストの受注まで手伝ってもらってからギルドを出る。そのまま広場まで歩き、ロドリーは首から下げたタグを握った。
「みんなで俺の魔獣に乗って行こう」
「三人乗っても大丈夫?」
入学前試験の時にも思ったが、ロドリーの魔獣は初めて見た時よりも大きくなっている。
大きさだけ見れば問題なさそうだが、三人も乗ると重さもそれなりになってしまう。負担をかけるのは申し訳ない。
「いつも解体した魔物を乗せてるから大丈夫だ。といっても四人は無理そうだが」
「この短期間で三人乗れるほどに育てただけで立派だ」
「どういうことですか?」
「俺のグリフォンは強さに応じて身体が大きくなる種族なんだ。といってもアカほど大きくはならないけど。俺が先頭で、ルクスさん、ウェスパルの順でいいか?」
「うむ。問題ない」
「え、ルクスさんが私の後ろの方がいい」
普段なら問題ないが、今日のルクスさんは人型。ドラゴンの姿の時には小さかった尻尾も人の姿と比例して大きくなっている。かといって上に跨がる訳にもいかない。脇に抱えれば私もルクスさんも安定感を失ってしまう。
なので最後尾が一番無難だ。
そう思ったのは私だけらしい。
ロドリーは表情を曇らせる。
「でも俺が三番目じゃ前がよく見えないから」
「いや、私が二番目で……」
「それはダメだ」
「え、なんで?」
「尻尾は身体の間に挟めばいいだろう」
ロドリーは即答だし、ルクスさんは呆れたような目で見てくる。まるで私が変なことでも言っているかのようだ。
「なんでそんなに二番目がいいんですか……」
「諦めろ」
二人は声を揃える。二対一。多数決で負けた私は仕方なく言われた通りの順番でグリフォンに乗る。
最後尾はやはり不安定で、尻尾の存在感が大きい。顔の高さまであるそれを担ぐ形で、ルクスさんにしがみつく。
「後ろは大丈夫か?」
「大丈夫~」
「飛ぶぞ」
ロドリーの合図でグリフォンが空高く飛び上がった。
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