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5章
7.入学前試験
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「彼らの体力どうなっているんだ!?」
「何キロ走っている?」
「もう軽く四十は越えているな」
「なのに息一つ切れてない」
「これが辺境の実力か……」
「父上がこちらに参加しろとおっしゃった理由がよく分かる」
往復持久走では初めにお茶会で会う貴族達が落ち、体力自信ある枠の令息達が落ち、イザラクとほぼ同時にロドリーが落ちたところだ。
私とルクスさん、ファドゥール・スカビオ組はまだまだピンピンとしている。
私は公爵家に来る前から車ばかり使っていた。てっきり体力が落ちたと思っていたが、意外にも記録は伸びている。ルクスさんも面倒くさいとため息を吐いていた割には元気に走っている。
「これっていつまで続くんだ?」
「全員落ちるまでですかね」
「この後に武術テストと魔力テスト、魔獣・精霊のテストがあるというのにかなり時間を割くのだな」
「体力測定って大体その分野ごとにレベルが定められていて、最大レベルに届いた時点で止めたりするものなんですけどね。自己記録を更新したい人とかは別ですけど、際限なくやると時間押すし、他の測定に響きますから」
「今回は基準値が提示されていないから分からない、と」
「はい」
この前には砲丸投げの測定があったのだが、それも少し変わっていて、使用された球の重さは一律ではなかったのだ。
こういうのは大抵男女で重さが分かれているものだと思うのだが、五種類の重さが用意されていて、その中から自分が選んだ重さを投げる形式だった。
一番軽いものでも貴族の令嬢が持てるのか疑問に思ったが、体力測定に組み込まれているくらいだから持てるのだろう。私が抱いている王都のご令嬢像はかなりか弱いイメージである。扇子よりも重いものは持ったことがないものだとばかり……。
別のグループとは測定場所が違うのを良いことに方法から全く違う可能性は否めないが、砲丸くらい持てなきゃいざという時に困るものね、と一人でうんうんと納得しながらラインを踏む。
「え~、皆さんお疲れ様でした」
結局、先生によって終わりの合図が告げられることとなった。
辺境三領出身で途中で落ちたのは四人。いずれも学力で王都行きが決まった子達だった。
肩を大きく上下させながら待機グループに向かい、他の生徒から拍手を送られていた。特に体力に自信があった彼らからは熱い歓迎を受けていた。
さすが脳筋。体力とガッツのある人を受け入れるのが爆速だ。
同郷が多いのであまり心配はしていなかったが、早くも貴族の子達と馴染んでいるようで何よりである。イヴァンカとギュンタも同じく胸をなで下ろしていた。
その後、女子生徒のみ辞退が可能な武術測定と全員参加の魔力測定が続いた。
武術測定はいくつか部門が分かれており、その中には護身術部門なるものがあった。相手は学園側が用意した武術の専門家ということもあり、一部の令嬢はそれを選んだ。
なんだかんだで全員参加で、剣術部門ではレイミアさんがバッサバッサとなぎ倒していった。私とロドリーもかなり健闘したのだが、次元が違いすぎた。
レイミアさん曰く「ウェスパル様には申し訳ないのですが、武術は特に力を入れるべし。入学前から力を示せとの教えですので!」とのこと。
ちなみにルクスさんは魔法が使えないからと面倒くさがって途中でリタイアしていった。確実に飽きている。くわぁとあくびをして、客席で横になっていた。
魔力検査も測定器である水晶に手をかざすだけなので、だらりと横になったまま行うという雑さっぷり。それでも人型を保っているだけマシなのだろう。
午後からは筆記試験があるので多めに見ることにして、張り切る亀蔵と共に最後の実技試験に繰り出した。
--までは良かったのだが……。
「かめぇ! かめええええええ」
「亀蔵そこまで気合い入れなくて良いからね?」
「かめかめっ」
「さすが亀蔵様! でも私達も負けませんよ!!」
ここまで良い子で待っていた亀蔵の気合いの入りようは凄かった。
おそらく王都に来てからは限られたスペースでの生活となり、ストレスも溜まっていたのだろう。
競技場を壊してしまうのではないかと思うほどに地面を隆起させ、壁を作る。その中に水を満たし、土で埋めていくというなかなかむごい戦い方を始めた。
レイミアさんと彼女の精霊はそれを破壊し、風の球を投げつけて攻めてくる。その目は爛々と輝いており、戦闘狂という言葉がピタリとはまるほど。
地方勢はほのぼのとお茶しながら見守り、体力自慢の彼らは目玉が落ちそうなほどに驚いていた。
これもレイミアさんとお兄様の計画だと知ったのは昼食休憩の時だった。
「これだけやれば田舎者と侮る人もいなくなりますね。亀蔵様、ご協力感謝いたします」
「かめぇ」
「いえいえ、亀蔵様の活躍があったからで」
「かめかめっ」
「ありがとうございます」
お互いに褒め合っている一人と一匹に、今度は私がぽかんとする番だった。
予定よりもかなり時間を押して始まった筆記テストは想像以上に難しかった。
私も勉強はしていたはずなのだが、最近は錬金術ばっかりしていたからだろう。全く分からずに空白で提出するところもあったほど。
一方で私の前に座っているルクスさんはさらさらとペンを走らせ、半分も経たないうちに寝てしまった。これは余裕からなのか、はたまた分からなすぎるのか。
どちらにせよ人のことを考えている場合ではない。
暗記問題はともかく、計算問題だけはどうにかなるからと最後の最後まで問題用紙に数式を書き記すのだった。
「何キロ走っている?」
「もう軽く四十は越えているな」
「なのに息一つ切れてない」
「これが辺境の実力か……」
「父上がこちらに参加しろとおっしゃった理由がよく分かる」
往復持久走では初めにお茶会で会う貴族達が落ち、体力自信ある枠の令息達が落ち、イザラクとほぼ同時にロドリーが落ちたところだ。
私とルクスさん、ファドゥール・スカビオ組はまだまだピンピンとしている。
私は公爵家に来る前から車ばかり使っていた。てっきり体力が落ちたと思っていたが、意外にも記録は伸びている。ルクスさんも面倒くさいとため息を吐いていた割には元気に走っている。
「これっていつまで続くんだ?」
「全員落ちるまでですかね」
「この後に武術テストと魔力テスト、魔獣・精霊のテストがあるというのにかなり時間を割くのだな」
「体力測定って大体その分野ごとにレベルが定められていて、最大レベルに届いた時点で止めたりするものなんですけどね。自己記録を更新したい人とかは別ですけど、際限なくやると時間押すし、他の測定に響きますから」
「今回は基準値が提示されていないから分からない、と」
「はい」
この前には砲丸投げの測定があったのだが、それも少し変わっていて、使用された球の重さは一律ではなかったのだ。
こういうのは大抵男女で重さが分かれているものだと思うのだが、五種類の重さが用意されていて、その中から自分が選んだ重さを投げる形式だった。
一番軽いものでも貴族の令嬢が持てるのか疑問に思ったが、体力測定に組み込まれているくらいだから持てるのだろう。私が抱いている王都のご令嬢像はかなりか弱いイメージである。扇子よりも重いものは持ったことがないものだとばかり……。
別のグループとは測定場所が違うのを良いことに方法から全く違う可能性は否めないが、砲丸くらい持てなきゃいざという時に困るものね、と一人でうんうんと納得しながらラインを踏む。
「え~、皆さんお疲れ様でした」
結局、先生によって終わりの合図が告げられることとなった。
辺境三領出身で途中で落ちたのは四人。いずれも学力で王都行きが決まった子達だった。
肩を大きく上下させながら待機グループに向かい、他の生徒から拍手を送られていた。特に体力に自信があった彼らからは熱い歓迎を受けていた。
さすが脳筋。体力とガッツのある人を受け入れるのが爆速だ。
同郷が多いのであまり心配はしていなかったが、早くも貴族の子達と馴染んでいるようで何よりである。イヴァンカとギュンタも同じく胸をなで下ろしていた。
その後、女子生徒のみ辞退が可能な武術測定と全員参加の魔力測定が続いた。
武術測定はいくつか部門が分かれており、その中には護身術部門なるものがあった。相手は学園側が用意した武術の専門家ということもあり、一部の令嬢はそれを選んだ。
なんだかんだで全員参加で、剣術部門ではレイミアさんがバッサバッサとなぎ倒していった。私とロドリーもかなり健闘したのだが、次元が違いすぎた。
レイミアさん曰く「ウェスパル様には申し訳ないのですが、武術は特に力を入れるべし。入学前から力を示せとの教えですので!」とのこと。
ちなみにルクスさんは魔法が使えないからと面倒くさがって途中でリタイアしていった。確実に飽きている。くわぁとあくびをして、客席で横になっていた。
魔力検査も測定器である水晶に手をかざすだけなので、だらりと横になったまま行うという雑さっぷり。それでも人型を保っているだけマシなのだろう。
午後からは筆記試験があるので多めに見ることにして、張り切る亀蔵と共に最後の実技試験に繰り出した。
--までは良かったのだが……。
「かめぇ! かめええええええ」
「亀蔵そこまで気合い入れなくて良いからね?」
「かめかめっ」
「さすが亀蔵様! でも私達も負けませんよ!!」
ここまで良い子で待っていた亀蔵の気合いの入りようは凄かった。
おそらく王都に来てからは限られたスペースでの生活となり、ストレスも溜まっていたのだろう。
競技場を壊してしまうのではないかと思うほどに地面を隆起させ、壁を作る。その中に水を満たし、土で埋めていくというなかなかむごい戦い方を始めた。
レイミアさんと彼女の精霊はそれを破壊し、風の球を投げつけて攻めてくる。その目は爛々と輝いており、戦闘狂という言葉がピタリとはまるほど。
地方勢はほのぼのとお茶しながら見守り、体力自慢の彼らは目玉が落ちそうなほどに驚いていた。
これもレイミアさんとお兄様の計画だと知ったのは昼食休憩の時だった。
「これだけやれば田舎者と侮る人もいなくなりますね。亀蔵様、ご協力感謝いたします」
「かめぇ」
「いえいえ、亀蔵様の活躍があったからで」
「かめかめっ」
「ありがとうございます」
お互いに褒め合っている一人と一匹に、今度は私がぽかんとする番だった。
予定よりもかなり時間を押して始まった筆記テストは想像以上に難しかった。
私も勉強はしていたはずなのだが、最近は錬金術ばっかりしていたからだろう。全く分からずに空白で提出するところもあったほど。
一方で私の前に座っているルクスさんはさらさらとペンを走らせ、半分も経たないうちに寝てしまった。これは余裕からなのか、はたまた分からなすぎるのか。
どちらにせよ人のことを考えている場合ではない。
暗記問題はともかく、計算問題だけはどうにかなるからと最後の最後まで問題用紙に数式を書き記すのだった。
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