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第4章 この手の届くところ
9.精霊王たち
しおりを挟む「ねえ、精霊王は必ず『精霊の生まれる場所』にいるの?」
マカロンを頬張っていた炎光の精霊のカルドが、もごもごと頷いた。
「うん。其処からあんまり出らんないよ~」
「カルド、食べながら喋ったらダメですのよ」
同じく炎光精霊のカルミアが、カルドのほっぺについたマカロンのかけらをとってやりながら「めっ」としている。
「主様、精霊王様方は精霊の聖地を守るのがお仕事なのです。だから、聖地が安定していれば離れることも出来るとは思うのですが、世界樹があの感じだと多分聖地から出られませんわ」
「精霊王様方…ということは、精霊王はみんな聖地にいて、其処を守る役目があると…あと、世界樹ね…」
メモをとりながら、お菓子に夢中な精霊達に少しずつ話を聞く。
「精霊王って、何人いるの?」
「火の精霊王様と~水の精霊王様と~」
「土、風、光、闇、基本的には全部で6人ですね」
水闇の精霊ペアのファイとファーナが答えてくれた。
「基本的に?…少なかったり多かったりするの?」
6つの属性を聞いた時、なんとなく予感がした。
「もしかして、人間達の間で星の神とか月の女神とか呼ばれたり、1人で複数の名前で呼ばれることがある精霊王がいる?」
「その通りです!」
カルラが小さなミルクピッチャーに入れたコーラを飲み干して嬉しそうに言った。
「さすが主様です!」
「と言うことは、太陽神やら月の女神やらは、それぞれの精霊王のことなのね…そして、1人でいくつもの名前で呼ばれることもある、と」
「神殿でも太陽神の神気とか感じたこと無いですよね?ご存知かと思ってました」
「ううん、知らなかったわ…」
ということは、セカイさんだけがこの世界の神なんだろうか。セカイさんに祈る度に感じる何かを、精霊達は『創造神様の神気』だと言うが、自分はあくまで管理人なのだと言うセカイさんが=実際にレイヴァーンを創った創造神なのか……
(こればかりは、確かめようがないね)
「主様、他にも…」
銀紙を剥がしたチョコレートをイシュに差し出していたハルが、口を開く。
「他にも、雷の精霊とか、雷神とか呼ばれている存在は、風と水の精霊がそれぞれお互いの力を少しずつ借りたりして魔法を使うことが多いんですのよ。イシュや私は1人でも使えますけど」
ハルはミントのキャンディーを小さく砕いたものが気に入ったようで、ふたつ目を口に入れた。
「精霊王は何人もの精霊が集まってその任に着くんですが、ひとつの属性だけで集まるわけでも無いのです。純粋な火だけ、ではすぐ消えますよね。空気がないと火は燃えませんから」
光闇の精霊ティアが、いつの間にか私の髪に櫛を入れている。今更気付いてびっくりしていたら、手は洗いましたわ!と違う方向の答えが返ってきて笑ってしまった。
「なるほどね。精霊王って何人くらいの精霊が集まっているの?」
うーんとカルラが腕組みをした。
「それは、本当に差があるようなんですよ。2人だったり、100人だったりするみたいで」
「それって、誰かが決めるの?」
「いいえ」
これは即答だった。
「次の精霊王になる精霊は、時が来るとわかるんだそうですよ」
だから、先程のホログラムのような状態でも、代替わりではない、と言えるのだろうか。あくまで感覚的なものなのかもしれない。
「とりあえず、その聖地に行く必要があるのかもね…人間が入れるのかな?」
「一応、そういう話が残っているので入れるとは思うのですが…」
カルラをはじめ、精霊達が皆困った顔をしている。
「私たちはその聖地が感覚的にわかりますし、其処に行く道も分かるというか転移できるというか…具体的な場所というか、地図で何処というのが分からないのです…主様は、地図の具体的な場所には転移ができるということでしたけど…」
「なるほど」
アイテムボックスの地図を見て、私はうーんと唸るしかなかった。
「行ったことのない…というか、何処かわからない場所、なのね…」
…実を言うと、精霊達の説明も、所々感覚的な事ばかりで正直わからないことが多かった。
(うん、これは難問ね)
精霊たちの聖地の場所。
絵本のように精霊や妖精に導かれるまま森や荒野を進む…というやり方を試すか、なんとか場所を特定するか。
(まあ、試せることはまだいくつかある、かな……)
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