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第4章 この手の届くところ
3.幻影と幻映
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緑系統の色であるか、森林地帯で倒した魔獣から採れれば『森の幻影』。
赤系統の色であるか、砂漠地帯で倒された魔獣から出れば『赤の幻影』。
青系統の色であるか、水のある所で倒された、またはいわゆる魚系統の魔獣から出れば『水の幻影』。
とりあえず、現在世の中に認知されている結晶魔石はこの3種類のようだ。魔石としての効果も絶大だが、その結晶化した形が美しいので宝飾品としての人気が高く、かなりの高値で取引されているようだ。その場合、大きさや透明度、結晶の形などでも金額が変わるらしい。
「魔石なのに、宝石扱いなのね」
内包する魔力によっては、ダイヤモンドよりも硬い時があるようなので、そこもまた宝飾品として扱われる一因でもあるのかもしれない。
「それで、これが『森の幻影』かぁ…」
先月合わせて10匹ほどの巨大角鹿を納品したが、その中でも1番大きな個体から出た、という事だった。
(ふうん…)
ケースの中の透明な黄緑色の結晶魔石は細長い星形を角度を変えていくつも組み合わせたような、トゲトゲした形をしている。
(ネックレスにしたら、痛そう?…いやいや)
どうでもいい感想を頭の隅に押しやって、深呼吸してから『ごっつい』鑑定…自分では詳細鑑定と読んでいる…をやってみる。
ーーーーーー
結晶魔石〈森の幻映〉※
純度 98.42パーセント
素体 巨大角鹿(雌20歳 序列3位※)魔侵度179%※
討伐者 リッカ
所持者 リッカ
ーーーーーー
(この※が出ると、あんまりいいイメージが無いなぁ…でも、決めつけたら駄目だよね)
それよりも、だ。
「『幻映』…?『幻影』じゃない?」
どういうことだろう。
(何かちょっと嫌な予感…)
とりあえず※印の所を置いておくことにしたが、あまり情報は多くはない。純度は四捨五入なのだなとか、あの雌の個体は雌で20歳だとか、群れのなかでは三番目に強かったのか年長だったのか、はたまた雌だから産んだ子が多いとかだろうか、とか。そして、『魔浸度』という言葉くらいだろうか。
(魔侵度…読んで字の如く、魔に侵されて行く度合いの事だとしたら、すでに100パーセントを軽く超えているっていうのは、どういうことだろう)
そもそも、普通の獣が悪い魔素を取り込むことで魔獣化するのだ。この魔侵度というのが取り込んだ悪い魔素のことだとしたら、このパーセンテージがどこから始まっているのかがよくわからない。
(とりあえず『魔侵度』に関しては手持ちの本を探してみよう…ということで)
「現実逃避はここまでにしようかな」
詳細鑑定で見えた※印の所を見ることにした。
(まずは…序列のところから始めようかな)
詳細鑑定で出るこの※の所は、その文字が書かれている下地に隠れている部分を覗くようなイメージで見ることになる。
(ああ、序列は体格と力、あとは出産頭数ね。6匹…鹿の割にと言うか思っていたより少ない気が…)
次に、ちょっとだけ悩んで、魔侵度のところに移った。
(だって、幻映って…どう見ても何か写ってそうなんだもの。うん、魔侵度だって気になるし…)
期待して調べた魔侵度は、やはり魔獣化化した時点で100パーセントで、この雌鹿は、そこからさらに魔素を取り込んでいったようだ。
(これ、200まで行ったらどうなるのかしら?)
さらに強くなるのか、それとも何か変化していくのか。この5年、止むを得ず魔獣を仕留めたことは何度かあったけれど、鑑定をしたことが無かったので、他の個体と比べたことは無い。ふと思い出して、数年前に仕留めた魔獣をアイテムボックスから出してみる。
「きゃ!」
「主様‼︎」
「大物でたよ!」
上がった悲鳴にごめんねと謝って、早速鑑定してみた。
「…これ、いつ獲ったんですか?」
「5年くらい前かな」
「あったかいのは気のせいでしょうか」
「このアイテムボックスのおかげかな」
ーーーーーー
巨大牙猪(※変異種)
雄128歳 魔侵度189%※
討伐者 リッカ
所持者 リッカ
※結晶魔石〈森の幻影〉
ーーーーーー
「魔侵度は少し高いね……ああ、コレも持ってるみたいね」
「何をですか?」
「結晶魔石」
超音波のように探索を使うと、確かに頭の中に何か異物があった。キチンと大きさ、形と位置が解れば転移させることは出来るはずだ。
「形が…鹿の物とはだいぶ違うよね?」
手の中に現れたのは、深い緑色の結晶魔石だった。こちらは、土から六角柱がボコボコと突き出たような形だ。
「それに、透明度は鹿のより低いかな…あれ?カルラ?」
いつもなら話しかけると答えてくれる精霊たちが無言なのでふと振り返ると…カルラは目を見開いて猪と結晶魔石を見比べている。他の子も一緒だ。
「ごめん、びっくりさせたかな?怖かった?」
慌てて猪をアイテムボックスに仕舞ってカルラに問いかけると、カルラはぶんぶんと首を振った。
「確かにびっくりはしましたけど…結晶魔石が簡単に出てくるのにさらにびっくりしました」
カルラはこほんと咳払いをすると、さらに続ける。
「結晶魔石は、長い時間をかけて出来るもので、魔物が命を終えるとその身体は土に還り、その結晶はさらに時間をかけて土と空に還るのですよ」
土と空に還る…手のひらの濃い緑の結晶は、濃い緑から透明感のある色へと、下から上へ美しいグラデーションになっている。真夏の燃えるような緑の木々を思わせる色だ。
赤系統の色であるか、砂漠地帯で倒された魔獣から出れば『赤の幻影』。
青系統の色であるか、水のある所で倒された、またはいわゆる魚系統の魔獣から出れば『水の幻影』。
とりあえず、現在世の中に認知されている結晶魔石はこの3種類のようだ。魔石としての効果も絶大だが、その結晶化した形が美しいので宝飾品としての人気が高く、かなりの高値で取引されているようだ。その場合、大きさや透明度、結晶の形などでも金額が変わるらしい。
「魔石なのに、宝石扱いなのね」
内包する魔力によっては、ダイヤモンドよりも硬い時があるようなので、そこもまた宝飾品として扱われる一因でもあるのかもしれない。
「それで、これが『森の幻影』かぁ…」
先月合わせて10匹ほどの巨大角鹿を納品したが、その中でも1番大きな個体から出た、という事だった。
(ふうん…)
ケースの中の透明な黄緑色の結晶魔石は細長い星形を角度を変えていくつも組み合わせたような、トゲトゲした形をしている。
(ネックレスにしたら、痛そう?…いやいや)
どうでもいい感想を頭の隅に押しやって、深呼吸してから『ごっつい』鑑定…自分では詳細鑑定と読んでいる…をやってみる。
ーーーーーー
結晶魔石〈森の幻映〉※
純度 98.42パーセント
素体 巨大角鹿(雌20歳 序列3位※)魔侵度179%※
討伐者 リッカ
所持者 リッカ
ーーーーーー
(この※が出ると、あんまりいいイメージが無いなぁ…でも、決めつけたら駄目だよね)
それよりも、だ。
「『幻映』…?『幻影』じゃない?」
どういうことだろう。
(何かちょっと嫌な予感…)
とりあえず※印の所を置いておくことにしたが、あまり情報は多くはない。純度は四捨五入なのだなとか、あの雌の個体は雌で20歳だとか、群れのなかでは三番目に強かったのか年長だったのか、はたまた雌だから産んだ子が多いとかだろうか、とか。そして、『魔浸度』という言葉くらいだろうか。
(魔侵度…読んで字の如く、魔に侵されて行く度合いの事だとしたら、すでに100パーセントを軽く超えているっていうのは、どういうことだろう)
そもそも、普通の獣が悪い魔素を取り込むことで魔獣化するのだ。この魔侵度というのが取り込んだ悪い魔素のことだとしたら、このパーセンテージがどこから始まっているのかがよくわからない。
(とりあえず『魔侵度』に関しては手持ちの本を探してみよう…ということで)
「現実逃避はここまでにしようかな」
詳細鑑定で見えた※印の所を見ることにした。
(まずは…序列のところから始めようかな)
詳細鑑定で出るこの※の所は、その文字が書かれている下地に隠れている部分を覗くようなイメージで見ることになる。
(ああ、序列は体格と力、あとは出産頭数ね。6匹…鹿の割にと言うか思っていたより少ない気が…)
次に、ちょっとだけ悩んで、魔侵度のところに移った。
(だって、幻映って…どう見ても何か写ってそうなんだもの。うん、魔侵度だって気になるし…)
期待して調べた魔侵度は、やはり魔獣化化した時点で100パーセントで、この雌鹿は、そこからさらに魔素を取り込んでいったようだ。
(これ、200まで行ったらどうなるのかしら?)
さらに強くなるのか、それとも何か変化していくのか。この5年、止むを得ず魔獣を仕留めたことは何度かあったけれど、鑑定をしたことが無かったので、他の個体と比べたことは無い。ふと思い出して、数年前に仕留めた魔獣をアイテムボックスから出してみる。
「きゃ!」
「主様‼︎」
「大物でたよ!」
上がった悲鳴にごめんねと謝って、早速鑑定してみた。
「…これ、いつ獲ったんですか?」
「5年くらい前かな」
「あったかいのは気のせいでしょうか」
「このアイテムボックスのおかげかな」
ーーーーーー
巨大牙猪(※変異種)
雄128歳 魔侵度189%※
討伐者 リッカ
所持者 リッカ
※結晶魔石〈森の幻影〉
ーーーーーー
「魔侵度は少し高いね……ああ、コレも持ってるみたいね」
「何をですか?」
「結晶魔石」
超音波のように探索を使うと、確かに頭の中に何か異物があった。キチンと大きさ、形と位置が解れば転移させることは出来るはずだ。
「形が…鹿の物とはだいぶ違うよね?」
手の中に現れたのは、深い緑色の結晶魔石だった。こちらは、土から六角柱がボコボコと突き出たような形だ。
「それに、透明度は鹿のより低いかな…あれ?カルラ?」
いつもなら話しかけると答えてくれる精霊たちが無言なのでふと振り返ると…カルラは目を見開いて猪と結晶魔石を見比べている。他の子も一緒だ。
「ごめん、びっくりさせたかな?怖かった?」
慌てて猪をアイテムボックスに仕舞ってカルラに問いかけると、カルラはぶんぶんと首を振った。
「確かにびっくりはしましたけど…結晶魔石が簡単に出てくるのにさらにびっくりしました」
カルラはこほんと咳払いをすると、さらに続ける。
「結晶魔石は、長い時間をかけて出来るもので、魔物が命を終えるとその身体は土に還り、その結晶はさらに時間をかけて土と空に還るのですよ」
土と空に還る…手のひらの濃い緑の結晶は、濃い緑から透明感のある色へと、下から上へ美しいグラデーションになっている。真夏の燃えるような緑の木々を思わせる色だ。
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