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第1章 諸事情により冒険者になりました
2.誰のためでもないけれど…
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捕獲した光虫たちは、我が家が気に入ったようで、各部屋…とは言ってもたいして部屋があるわけではないが、好きに飛びまわっている。夜になると壁に設置されているランプの中に自主的に入り込んでいるので、魔力ランプだけの時よりも明るく、それでいて目に優しいような気がしている。
私が今読んでいるのは、結界術の書(中級)だ。アイテムボックスの中の電子書籍は、どうやら書かれた年代などはバラバラなようで、いわゆる魔術書とか、魔法の書とか、同じ魔法に関することを書いているようで、どうやら少し違うようだ、最近気づいた。
魔法、魔術、魔導…おそらく時代によって名前が違ったり、人々の受け止め方も違ったりしているのもあるけれど、この3つは似ているようで違う。
魔法は、1番奇跡的な現象を引き起こすもの。魔術は、魔法を理論的に使用する方法のようなもの。魔導は、超常現象を含めて魔法を研究し、魔法を突き詰めていく感じだろうか?……おそらく、魔法を使うようになって、その使い方が使う人によって変化したのかもしれない。
今まで、色々と書かれていることをそのまま実践したが、その中でも感じていることは沢山ある。なんとなく、試して見たくなって風魔法の書をパラパラと流し見る。
「…風の神の御力を我に貸し与え、我らと同胞を護りたまえ…結界」
家から半径50メートル程度のところから、ドーム状に我が家を守る風属性の結界を張る。
その出来栄えを自身を包む魔力の流れを「探索」して確かめる。そして、一言分息を吸って、
「…結界」
その一言で、先程と同じ結界が出来上がる。
「……呪文は厳密には必要ない」
光虫に使った治癒の時も、毎月の転移も、ほぼ詠唱はしない。心の中で早口で唱えるなどもやっていない。ただ、今回は結界のイメージを浮かべて唱えただけだ。
(ということは)
今度は結界を思い浮かべる。
「やっぱり」
結界はきちんと張れた。三重の結界はこの家を守っている。
外に出て、結界を鑑定して、魔力の流れを紋様化して眺める。寸分違わず同じものが重なっているのが見えた。
「魔法っていうのは、イメージを形にする力…?」
ならばなぜ、呪文が生まれたのだろうか。そして、呪文の詠唱がこんなに大切にされているのだろうか。
家に入って、光虫たちに果物を出し、自分はインスタントのコーヒーを入れて、今日も自分なりにこの世界のことを考える。疑問を調べることに没頭できるのは、本当に幸せだ。アイテムボックスから先日買ったペンとインク壺、ノートは日本のものを出して、思うことをつらつらと書き込んでいく。ちなみに、向こうの世界のペンもある。なのになんでこちらの世界のものを買ったのかと言うと、事情があってこちらのペンで書き物をする時に、書き慣れずに困ったからだ。
素朴な木の軸のペンと1番大きなインク壺は、最近買ったものの中でもお気に入りだ。
「あとは…火球の魔法を唱えながら水球を出すとかの実験をしてみるとか…それと、杖についても調べてみてもいいかもね…」
カリカリとノートに書き込んでから、ふと思いつく。
「呪文がイメージなら、杖もこのペンとかでいいことにならないかな…」
緩くなってきたコーヒーを飲み干して、とりあえずここまで、とノートを閉じる。
他に誰かに聞いたり、習ったりする気もない、役に立つこともないかもしれない、ただ自己満足の研究。知ること、考えること、楽しく没頭していられる感覚も全て、心地よい。
「じゃ、今日はもう寝るね」
光虫に声をかけて、寝室にむかうのだった。
私が今読んでいるのは、結界術の書(中級)だ。アイテムボックスの中の電子書籍は、どうやら書かれた年代などはバラバラなようで、いわゆる魔術書とか、魔法の書とか、同じ魔法に関することを書いているようで、どうやら少し違うようだ、最近気づいた。
魔法、魔術、魔導…おそらく時代によって名前が違ったり、人々の受け止め方も違ったりしているのもあるけれど、この3つは似ているようで違う。
魔法は、1番奇跡的な現象を引き起こすもの。魔術は、魔法を理論的に使用する方法のようなもの。魔導は、超常現象を含めて魔法を研究し、魔法を突き詰めていく感じだろうか?……おそらく、魔法を使うようになって、その使い方が使う人によって変化したのかもしれない。
今まで、色々と書かれていることをそのまま実践したが、その中でも感じていることは沢山ある。なんとなく、試して見たくなって風魔法の書をパラパラと流し見る。
「…風の神の御力を我に貸し与え、我らと同胞を護りたまえ…結界」
家から半径50メートル程度のところから、ドーム状に我が家を守る風属性の結界を張る。
その出来栄えを自身を包む魔力の流れを「探索」して確かめる。そして、一言分息を吸って、
「…結界」
その一言で、先程と同じ結界が出来上がる。
「……呪文は厳密には必要ない」
光虫に使った治癒の時も、毎月の転移も、ほぼ詠唱はしない。心の中で早口で唱えるなどもやっていない。ただ、今回は結界のイメージを浮かべて唱えただけだ。
(ということは)
今度は結界を思い浮かべる。
「やっぱり」
結界はきちんと張れた。三重の結界はこの家を守っている。
外に出て、結界を鑑定して、魔力の流れを紋様化して眺める。寸分違わず同じものが重なっているのが見えた。
「魔法っていうのは、イメージを形にする力…?」
ならばなぜ、呪文が生まれたのだろうか。そして、呪文の詠唱がこんなに大切にされているのだろうか。
家に入って、光虫たちに果物を出し、自分はインスタントのコーヒーを入れて、今日も自分なりにこの世界のことを考える。疑問を調べることに没頭できるのは、本当に幸せだ。アイテムボックスから先日買ったペンとインク壺、ノートは日本のものを出して、思うことをつらつらと書き込んでいく。ちなみに、向こうの世界のペンもある。なのになんでこちらの世界のものを買ったのかと言うと、事情があってこちらのペンで書き物をする時に、書き慣れずに困ったからだ。
素朴な木の軸のペンと1番大きなインク壺は、最近買ったものの中でもお気に入りだ。
「あとは…火球の魔法を唱えながら水球を出すとかの実験をしてみるとか…それと、杖についても調べてみてもいいかもね…」
カリカリとノートに書き込んでから、ふと思いつく。
「呪文がイメージなら、杖もこのペンとかでいいことにならないかな…」
緩くなってきたコーヒーを飲み干して、とりあえずここまで、とノートを閉じる。
他に誰かに聞いたり、習ったりする気もない、役に立つこともないかもしれない、ただ自己満足の研究。知ること、考えること、楽しく没頭していられる感覚も全て、心地よい。
「じゃ、今日はもう寝るね」
光虫に声をかけて、寝室にむかうのだった。
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