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第三章
第三章1 ~少しだけ意図が通じました~
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私は三人の裸の美女さんたちに囲まれながら、黄金じゃない普通の果実を食べていました。
男性の方ならば羨ましく思えるシチュエーションなのかもしれませんが、あいにく女の私にとっては劣等感に苛まれる、苦痛でしかない状況です。
なにせ三人が三人とも絶世の美女なのですから。
その身体には何も身に纏っていないのですが、それゆえに完成されたプロポーションというのがはっきりわかり、その傍でバスタオル一枚でいる私にとっては何の拷問かと思ってしまうほどです。
比べないでください。
相手は人間ではない人外ですし、気にすることはないのかもしれませんけど。
「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
私は一通り果物を食べ、満足したところで手を合わせて御礼を言いました。
言葉は伝わっていないようですが、三人はにっこりと笑顔を浮かべていたので、私の感謝の念はちゃんと伝わっているようです。
三人は私に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれていました。
ドラゴンさんのブレスから守ったことを感謝しているようなのですが、そもそも来る原因は私が作ったようなものなので、感謝してもらうべきなのか悩むところではあります。
さて、そのドラゴンさんは、というと。
「グウ……グウ……」
一端はこの森から飛び去ったドラゴンさんでしたが、私が三人に果物を食べさせてもらっている間に、戻ってきていました。
例の木々がなぎ倒されて森が開けた場所で、暢気に丸まって眠っています。
その口元がべっとりと血で濡れていたところを見ると、どうやらドラゴンさんも食事をしに行っただけだったようです。
ドラゴンさんから解放されたと思っていたのですが、そう上手くはいきませんね。
今のところ眼を覚ます様子はないですし、いまのうちにやれることを試しておくとしましょう。
「これがリンゴ、です」
美女さんたちのおかげでお腹を満たすことができたので、彼女たちと少しでも意思疎通ができないかと試みてみます。
果物の余りを使い、地面においた果物の傍に「リンゴ」とカタカナで文字を書いてみました。
もしこれで美女さんたちが同じように文字を書いてくれれば、それがこの世界においての「リンゴ」という文字になるわけで、その要領で文字の語彙を増やすことができます。
しかし、この試みは上手くいきませんでした。
美女さんたちは「リンゴ」の文字をリンゴのことだと認識してくれましたし、何か喋ってくれてはいたのですが、相変わらずその言葉は音として聞こえませんでしたし、文字を書いてくれることもありませんでした。
「ううーん。少なくとも私の声は聞こえてるんですよね……わっ!」
ちょっと悪いとは思いつつ、不意に大きな声をあげてみました。
美女さんたちはその声に反応して驚いていたので、こちらの声は音として聞こえているのは間違いないようです。
もしかすると英語とかフランス語とかなのかもしれないと、知りうる限りの言語を言ってみましたが、反応はありませんでした。
言語での意思疎通は無理、なのかもしれません。
でも、ジェスチャーのことといい、文字をリンゴと認識してくれたことといい、相互理解が完全に不可能なわけではないはずです。
試しに文字では無くリンゴの絵を描いて示して見ると、複数ある果物の中から正確にリンゴを手にとって見せてくれました。
意思疎通できる素地は間違いなくあるはずなのです。しかし、どうすればいいのか。
「ううん……困りました。……あ。そうです!」
計画の頓挫に頭を抱える寸前、閃きました。
少なくとも絵で「リンゴ」を示したことがわかってくれているのなら、人の絵を描いても通じるはず。
私は簡単な人型を地面に描き、それと自分を交互に指し示します。
三人の美女さんたちが頷くのを見てから、次にその人型の絵をたくさん書き、その近くに家のような図を書きました。
これで「たくさんの人がいる場所」を示せたはず。
もし美女さんたちが村とか町とかの場所を知っていれば、そっちを指し示してくれるはずなのです。
美女さん達は顔を見あわせた後、ある方向を指さしてくれました。
(やりました! 成功です!)
そっちに村か町か、とにかく人の集まる場所があるはずです。
問題は歩いていけるほど遠いのか近いのかなのですが。
自分たちのいる場所を「人型ひとつと、羽の生えた人型みっつ」で示し、さっき三人が指し示した方向に向け、矢印を短いのと長いのを書いて示しました。
近いのか遠いのか、という問いのつもりです。
「どうでしょうか?」
三人はしばらく話し合ってから、揃って長い矢印を指さしました。それどころか、その矢印を延長して示して見せてくれます。
相当遠いようですね。さて、困りました。
彼女たちの「遠い」がどれくらいの感覚なのかはわかりませんが、下手をすると歩いて行けるような距離ではないのかもしれません。
そうなるとドラゴンさんになんとかお願いして運んでもらうしかないのですが、まずその意思疎通が出来るのかということ。
さらに、よしんば意思が通じて運んでもらえたとして、その時ドラゴンさんに対してこの世界の人たちがどんな反応をするのかが未知数でした。
(いかにもヤバそうな魔王を倒せちゃうような、恐ろしげな……いえ、立派なドラゴンさんですもんねぇ……)
人類最大の敵、といわんばかりだったあの恐ろしい魔王を瞬殺してしまうようなドラゴンさんなのです。
恐らくですが、その強さはこの世界でも屈指のものでしょう。あの魔王が見かけ倒しの本当は弱い魔王だったというのでも無い限り。
そんな魔王級のドラゴンが突然村に現れたとしたら、住民が恐慌に陥ることは間違いありません。
混乱で済めばいいですが、最悪の場合、攻撃を受けてドラゴンさんが反撃し、あのブレスで村や町をなぎ払いかねません。
三人の美女さんたちの時はなんとかなりましたが、同じように立ちふさがったとして、ドラゴンさんが攻撃をやめてくれるという保証はありません。
やめてくれたとはいえ、結構渋々でしたしね。
ちゃんとドラゴンさんの意思がわかっているならともかく、無闇に命を危険に晒したくはありませんでした。
(むむむ……弱りました……ここにいればとりあえず命の危険はなさそうですけど……)
美女さんたちに迷惑がかかっている自覚はあるのです。
いまはドラゴンさnが大人しく眠ってくれているからいいのですが、放っている威圧感は相当なものです。
美女さんたちにしてみれば住んでいる森を破壊した元凶ですし、いまもことあるごとにドラゴンさんの方を見て警戒しているのがわかります。
明らかに怯えているのです。
このままここに居続けるのは、彼女たちに申し訳がありません。
さりとて言葉も通じないドラゴンさん相手にどうすればいいのか。
私は途方に暮れているのでした。
男性の方ならば羨ましく思えるシチュエーションなのかもしれませんが、あいにく女の私にとっては劣等感に苛まれる、苦痛でしかない状況です。
なにせ三人が三人とも絶世の美女なのですから。
その身体には何も身に纏っていないのですが、それゆえに完成されたプロポーションというのがはっきりわかり、その傍でバスタオル一枚でいる私にとっては何の拷問かと思ってしまうほどです。
比べないでください。
相手は人間ではない人外ですし、気にすることはないのかもしれませんけど。
「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
私は一通り果物を食べ、満足したところで手を合わせて御礼を言いました。
言葉は伝わっていないようですが、三人はにっこりと笑顔を浮かべていたので、私の感謝の念はちゃんと伝わっているようです。
三人は私に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれていました。
ドラゴンさんのブレスから守ったことを感謝しているようなのですが、そもそも来る原因は私が作ったようなものなので、感謝してもらうべきなのか悩むところではあります。
さて、そのドラゴンさんは、というと。
「グウ……グウ……」
一端はこの森から飛び去ったドラゴンさんでしたが、私が三人に果物を食べさせてもらっている間に、戻ってきていました。
例の木々がなぎ倒されて森が開けた場所で、暢気に丸まって眠っています。
その口元がべっとりと血で濡れていたところを見ると、どうやらドラゴンさんも食事をしに行っただけだったようです。
ドラゴンさんから解放されたと思っていたのですが、そう上手くはいきませんね。
今のところ眼を覚ます様子はないですし、いまのうちにやれることを試しておくとしましょう。
「これがリンゴ、です」
美女さんたちのおかげでお腹を満たすことができたので、彼女たちと少しでも意思疎通ができないかと試みてみます。
果物の余りを使い、地面においた果物の傍に「リンゴ」とカタカナで文字を書いてみました。
もしこれで美女さんたちが同じように文字を書いてくれれば、それがこの世界においての「リンゴ」という文字になるわけで、その要領で文字の語彙を増やすことができます。
しかし、この試みは上手くいきませんでした。
美女さんたちは「リンゴ」の文字をリンゴのことだと認識してくれましたし、何か喋ってくれてはいたのですが、相変わらずその言葉は音として聞こえませんでしたし、文字を書いてくれることもありませんでした。
「ううーん。少なくとも私の声は聞こえてるんですよね……わっ!」
ちょっと悪いとは思いつつ、不意に大きな声をあげてみました。
美女さんたちはその声に反応して驚いていたので、こちらの声は音として聞こえているのは間違いないようです。
もしかすると英語とかフランス語とかなのかもしれないと、知りうる限りの言語を言ってみましたが、反応はありませんでした。
言語での意思疎通は無理、なのかもしれません。
でも、ジェスチャーのことといい、文字をリンゴと認識してくれたことといい、相互理解が完全に不可能なわけではないはずです。
試しに文字では無くリンゴの絵を描いて示して見ると、複数ある果物の中から正確にリンゴを手にとって見せてくれました。
意思疎通できる素地は間違いなくあるはずなのです。しかし、どうすればいいのか。
「ううん……困りました。……あ。そうです!」
計画の頓挫に頭を抱える寸前、閃きました。
少なくとも絵で「リンゴ」を示したことがわかってくれているのなら、人の絵を描いても通じるはず。
私は簡単な人型を地面に描き、それと自分を交互に指し示します。
三人の美女さんたちが頷くのを見てから、次にその人型の絵をたくさん書き、その近くに家のような図を書きました。
これで「たくさんの人がいる場所」を示せたはず。
もし美女さんたちが村とか町とかの場所を知っていれば、そっちを指し示してくれるはずなのです。
美女さん達は顔を見あわせた後、ある方向を指さしてくれました。
(やりました! 成功です!)
そっちに村か町か、とにかく人の集まる場所があるはずです。
問題は歩いていけるほど遠いのか近いのかなのですが。
自分たちのいる場所を「人型ひとつと、羽の生えた人型みっつ」で示し、さっき三人が指し示した方向に向け、矢印を短いのと長いのを書いて示しました。
近いのか遠いのか、という問いのつもりです。
「どうでしょうか?」
三人はしばらく話し合ってから、揃って長い矢印を指さしました。それどころか、その矢印を延長して示して見せてくれます。
相当遠いようですね。さて、困りました。
彼女たちの「遠い」がどれくらいの感覚なのかはわかりませんが、下手をすると歩いて行けるような距離ではないのかもしれません。
そうなるとドラゴンさんになんとかお願いして運んでもらうしかないのですが、まずその意思疎通が出来るのかということ。
さらに、よしんば意思が通じて運んでもらえたとして、その時ドラゴンさんに対してこの世界の人たちがどんな反応をするのかが未知数でした。
(いかにもヤバそうな魔王を倒せちゃうような、恐ろしげな……いえ、立派なドラゴンさんですもんねぇ……)
人類最大の敵、といわんばかりだったあの恐ろしい魔王を瞬殺してしまうようなドラゴンさんなのです。
恐らくですが、その強さはこの世界でも屈指のものでしょう。あの魔王が見かけ倒しの本当は弱い魔王だったというのでも無い限り。
そんな魔王級のドラゴンが突然村に現れたとしたら、住民が恐慌に陥ることは間違いありません。
混乱で済めばいいですが、最悪の場合、攻撃を受けてドラゴンさんが反撃し、あのブレスで村や町をなぎ払いかねません。
三人の美女さんたちの時はなんとかなりましたが、同じように立ちふさがったとして、ドラゴンさんが攻撃をやめてくれるという保証はありません。
やめてくれたとはいえ、結構渋々でしたしね。
ちゃんとドラゴンさんの意思がわかっているならともかく、無闇に命を危険に晒したくはありませんでした。
(むむむ……弱りました……ここにいればとりあえず命の危険はなさそうですけど……)
美女さんたちに迷惑がかかっている自覚はあるのです。
いまはドラゴンさnが大人しく眠ってくれているからいいのですが、放っている威圧感は相当なものです。
美女さんたちにしてみれば住んでいる森を破壊した元凶ですし、いまもことあるごとにドラゴンさんの方を見て警戒しているのがわかります。
明らかに怯えているのです。
このままここに居続けるのは、彼女たちに申し訳がありません。
さりとて言葉も通じないドラゴンさん相手にどうすればいいのか。
私は途方に暮れているのでした。
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