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第二章
9. 王女の使者
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人生に大きく関わる事柄であるはずの婚約解消も、見知らぬ文官に届け出を受理されれば簡単に終わってしまうものらしい。
それはクロードの中でロゼリエッタなど"こんな簡単に終わらせられる程度"だと告げられているようで、散々傷ついて疲れ果てたはずの胸をなおも軋ませた。
「恐れ入ります。ロゼリエッタ・カルヴァネス様であらせますでしょうか」
付き添いに来てくれた父と兄に別れを済ませたロゼリエッタに、一人の女性が声をかける。
濃紺のお仕着せに身を包む彼女はおそらく王城に勤める侍女だろう。
けれどロゼリエッタが声をかけられる覚えはまるでない。問いかけを肯定はしたものの、その後どう言葉を続けたら良いのか分からずに次の動きを待つ。
行儀見習いとして勤めているのか、侍女は綺麗な所作で礼をするとロゼリエッタを真っすぐに見つめた。
「レミリア王女殿下が、ロゼリエッタ様にご用があるとのことです。急なお話ではありますがどうぞ足をお運び下さい」
ロゼリエッタは咄嗟に彼女の纏うお仕着せの袖口に目を向ける。
そこには赤いバラの飾りボタンが縫いつけられていた。レミリア付きであるという証だ。
「もちろんお帰りの際には王女殿下の名誉にかけ、カルヴァネス侯爵邸まで責任を持ってお送り致します。よろしいでしょうか」
後半はどちらかと言えばロゼリエッタではなく、父や兄に向けた確認のようだった。二人はお互いに顔を見合わせ、ロゼリエッタを見やる。判断を一任するということらしい。
ロゼリエッタは軽く唇を引き結び、「分かりました」と頷く。
今日は体調が優れないと断れば良かっただろうか。でも、日を改めたところで事態はロゼリエッタに都合の良い方へと好転はしないのだろう。それならば今、つらい思いをした方がいい。
家族と再び別れの挨拶を交わし、ロゼリエッタは侍女の後をついて歩き出した。
侍女は広い城内をロゼリエッタの歩く速度に合わせながらも、一切の迷いを見せずに進んで行く。
父たちといた執務の為のフロアを出て回廊を渡り、夜会が開かれるサロンや晩餐会の開かれるバンケットホールのあるフロアも通り抜け、さらに回廊を歩いた。
「お嬢様……」
アイリが小さな声で名前を呼ぶ。ロゼリエッタも無言で深く頷き返した。
この先のフロアにあるのは王族が私用に使う部屋ばかりだ。ロゼリエッタも入るのは初めてだった。そして――レミリアの護衛を務めるクロードがいた場所でもある。
良く知る人物の案内なしでは戻れないような、同じ造りをした扉が廊下の両側に並んでいた。途中の角を何度か曲がって侍女はようやく、一際立派な装飾の施された大きな扉の前で足を止める。
ノックに応え、内側から扉が音もなく開いた。
中央にテーブルセットの置かれただけの簡素な部屋には、三人の侍女が控えているだけだった。レミリアらしき姿はない。にわかにアイリが警戒を強める気配が背後から伝わって来る。
奥にはさらに扉があった。ならば、あの向こうにレミリアがいるのだろう。すると侍女はアイリへとソファーを指し示した。
「殿下はロゼリエッタ様とお二人での面会をご希望されております。恐れ入りますがお付きの方はこちらで待機なさって下さいませ」
「それは、」
「いいのよ、アイリ」
アイリはいつもロゼリエッタを心配してくれている。だから今も、人払いをして会うにしても姿を先に見せるのが道理ではないのかと思っているのだろう。何度も通されたことのある場所ならまだしも、初めて案内された場所なのだからなおさらだ。
だけど、王女付きの侍女と思しき相手にあからさまに不満を顕わにするのは褒められたことではない。ロゼリエッタはやんわりと宥めた。
まがりなりにも城内である。もしレミリアの侍女を騙っているのだとしても、この場で起こせることは限られているだろう。それに彼女は父と兄の前ではっきりとレミリアの名を出した。この部屋に来るまでの間だって人目のつく場所を通って来ている。後ろ暗いところがあるようには思えなかった。
「レミリア殿下、ロゼリエッタ様をご案内致しました」
「どうぞ、入って」
侍女はアイリの態度を気にした様子もなく扉をノックをした。
用件を伝えれば扉越しにレミリアの声が返って来る。
アイリも警戒を緩めたようだ。けれど今度はレミリアとの対面を心配した表情でロゼリエッタを見つめる。
ロゼリエッタは大丈夫だと首を縦にした。
正直な気持ちを言えば、レミリアには会いたくなかった。今だって何を話したらいいのか分からないし、今になって何を話したいと思われているのかも分からない。
スタンレー公爵は、レミリアとクロードに隣国のスパイ疑惑があると言っていた。
その真偽を問い質す心づもりも全くない。真実がどうであれロゼリエッタには関わりのない話だ。
侍女の開けた扉から奥の部屋に入る。途端に覚えのある甘いバラの香りがして、確かにレミリアがいるのだと思った。
「急に呼び出してごめんなさいね」
二人きりになるとソファに腰を下ろしていたレミリアが立ち上がり、歩み寄って来た。足元に視線を落としていたロゼリエッタは顔を上げ、淑女の礼で以て応える。目が合わないようにバラ色の唇の辺りを見るのが精一杯だった。
レミリアは両手を伸ばし、ロゼリエッタの頬を包み込んだ。
合わせたくなくて彷徨わせていた視線が重なる。
「ロゼ……。ごめんなさい」
いつかクロードがそうしたように、レミリアもロゼリエッタの身体をそっと抱きしめた。そうして彼女もまた、ひたすらロゼリエッタに詫び続けるのだ。
ロゼリエッタが心を寄せる婚約者であるクロードも、そして彼が愛するレミリアも、とても優しい。
でも、同じくらい残酷だった。
彼らはきっと、その優しさこそがロゼリエッタを傷つける、いちばん残酷な行為であることに気がついてはいないのだろう。
ロゼリエッタは身じろぎもできずにシャンデリアを見つめた。
レミリアが、ゆっくりと深く息を吸ったのが伝わって来る。
それから腕にわずかな力が込められた。
波打つ心を落ち着かせ、現実と向き合う覚悟を決める必要があるのなら、それはレミリアではなくロゼリエッタの方だろう。けれど短期間に様々なことが起こりすぎて、何に対する覚悟を持てば良いのか分からなかった。
それはクロードの中でロゼリエッタなど"こんな簡単に終わらせられる程度"だと告げられているようで、散々傷ついて疲れ果てたはずの胸をなおも軋ませた。
「恐れ入ります。ロゼリエッタ・カルヴァネス様であらせますでしょうか」
付き添いに来てくれた父と兄に別れを済ませたロゼリエッタに、一人の女性が声をかける。
濃紺のお仕着せに身を包む彼女はおそらく王城に勤める侍女だろう。
けれどロゼリエッタが声をかけられる覚えはまるでない。問いかけを肯定はしたものの、その後どう言葉を続けたら良いのか分からずに次の動きを待つ。
行儀見習いとして勤めているのか、侍女は綺麗な所作で礼をするとロゼリエッタを真っすぐに見つめた。
「レミリア王女殿下が、ロゼリエッタ様にご用があるとのことです。急なお話ではありますがどうぞ足をお運び下さい」
ロゼリエッタは咄嗟に彼女の纏うお仕着せの袖口に目を向ける。
そこには赤いバラの飾りボタンが縫いつけられていた。レミリア付きであるという証だ。
「もちろんお帰りの際には王女殿下の名誉にかけ、カルヴァネス侯爵邸まで責任を持ってお送り致します。よろしいでしょうか」
後半はどちらかと言えばロゼリエッタではなく、父や兄に向けた確認のようだった。二人はお互いに顔を見合わせ、ロゼリエッタを見やる。判断を一任するということらしい。
ロゼリエッタは軽く唇を引き結び、「分かりました」と頷く。
今日は体調が優れないと断れば良かっただろうか。でも、日を改めたところで事態はロゼリエッタに都合の良い方へと好転はしないのだろう。それならば今、つらい思いをした方がいい。
家族と再び別れの挨拶を交わし、ロゼリエッタは侍女の後をついて歩き出した。
侍女は広い城内をロゼリエッタの歩く速度に合わせながらも、一切の迷いを見せずに進んで行く。
父たちといた執務の為のフロアを出て回廊を渡り、夜会が開かれるサロンや晩餐会の開かれるバンケットホールのあるフロアも通り抜け、さらに回廊を歩いた。
「お嬢様……」
アイリが小さな声で名前を呼ぶ。ロゼリエッタも無言で深く頷き返した。
この先のフロアにあるのは王族が私用に使う部屋ばかりだ。ロゼリエッタも入るのは初めてだった。そして――レミリアの護衛を務めるクロードがいた場所でもある。
良く知る人物の案内なしでは戻れないような、同じ造りをした扉が廊下の両側に並んでいた。途中の角を何度か曲がって侍女はようやく、一際立派な装飾の施された大きな扉の前で足を止める。
ノックに応え、内側から扉が音もなく開いた。
中央にテーブルセットの置かれただけの簡素な部屋には、三人の侍女が控えているだけだった。レミリアらしき姿はない。にわかにアイリが警戒を強める気配が背後から伝わって来る。
奥にはさらに扉があった。ならば、あの向こうにレミリアがいるのだろう。すると侍女はアイリへとソファーを指し示した。
「殿下はロゼリエッタ様とお二人での面会をご希望されております。恐れ入りますがお付きの方はこちらで待機なさって下さいませ」
「それは、」
「いいのよ、アイリ」
アイリはいつもロゼリエッタを心配してくれている。だから今も、人払いをして会うにしても姿を先に見せるのが道理ではないのかと思っているのだろう。何度も通されたことのある場所ならまだしも、初めて案内された場所なのだからなおさらだ。
だけど、王女付きの侍女と思しき相手にあからさまに不満を顕わにするのは褒められたことではない。ロゼリエッタはやんわりと宥めた。
まがりなりにも城内である。もしレミリアの侍女を騙っているのだとしても、この場で起こせることは限られているだろう。それに彼女は父と兄の前ではっきりとレミリアの名を出した。この部屋に来るまでの間だって人目のつく場所を通って来ている。後ろ暗いところがあるようには思えなかった。
「レミリア殿下、ロゼリエッタ様をご案内致しました」
「どうぞ、入って」
侍女はアイリの態度を気にした様子もなく扉をノックをした。
用件を伝えれば扉越しにレミリアの声が返って来る。
アイリも警戒を緩めたようだ。けれど今度はレミリアとの対面を心配した表情でロゼリエッタを見つめる。
ロゼリエッタは大丈夫だと首を縦にした。
正直な気持ちを言えば、レミリアには会いたくなかった。今だって何を話したらいいのか分からないし、今になって何を話したいと思われているのかも分からない。
スタンレー公爵は、レミリアとクロードに隣国のスパイ疑惑があると言っていた。
その真偽を問い質す心づもりも全くない。真実がどうであれロゼリエッタには関わりのない話だ。
侍女の開けた扉から奥の部屋に入る。途端に覚えのある甘いバラの香りがして、確かにレミリアがいるのだと思った。
「急に呼び出してごめんなさいね」
二人きりになるとソファに腰を下ろしていたレミリアが立ち上がり、歩み寄って来た。足元に視線を落としていたロゼリエッタは顔を上げ、淑女の礼で以て応える。目が合わないようにバラ色の唇の辺りを見るのが精一杯だった。
レミリアは両手を伸ばし、ロゼリエッタの頬を包み込んだ。
合わせたくなくて彷徨わせていた視線が重なる。
「ロゼ……。ごめんなさい」
いつかクロードがそうしたように、レミリアもロゼリエッタの身体をそっと抱きしめた。そうして彼女もまた、ひたすらロゼリエッタに詫び続けるのだ。
ロゼリエッタが心を寄せる婚約者であるクロードも、そして彼が愛するレミリアも、とても優しい。
でも、同じくらい残酷だった。
彼らはきっと、その優しさこそがロゼリエッタを傷つける、いちばん残酷な行為であることに気がついてはいないのだろう。
ロゼリエッタは身じろぎもできずにシャンデリアを見つめた。
レミリアが、ゆっくりと深く息を吸ったのが伝わって来る。
それから腕にわずかな力が込められた。
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