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最愛
奥深い場所へ 2 ☆
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口の中で剛直が生命の胎動のように脈打つ。
その度に先程舐めてみた透明な液体とはまた別の、どろりとした感触の熱い塊が咥内に容赦なく叩きつけられた。
ある程度の覚悟は決めていたけれど、根拠のない想像などとは感覚が全く違った。
もっとも、アドルフォードに教えられることがフィオレンツィアの全てなのだ。その感触を、においや味を想像出来るはずもない。
「フィオレア、無理しなくていいよ」
アドルフォードが欲情の鎮まった自らを引き抜く瞬間、フィオレンツィアの唇との間に白みがかった半透明の緩い液体が糸を引く。唾液と精液とが混ざり合ったそれはアドルフォードが離れるに従ってふつりと切れ、フィオレンツィアの唇の端を濡らした。
口の中には出されたばかりの濃い精液のほとんどが残っている。
愛しい相手の放ったそれを一滴も残さず飲み尽くしたいと思うのに、粘度が高いせいで喉にへばりついて上手く行かない。その間も独特の青っぽいにおいは口から鼻にかけて浸食し、決してそれ自体がイヤなわけではないのに生理的な涙が潤んでしまう。
「口を開けて」
柔らかな布を口元に当てられ、精液を吐くよう促される。飲み下せそうにない分をゆるゆると口から出し、咥内の粘膜に残った分は布の影に隠れて舌でかき集めて何とか飲み込んだ。
「ごめ……なさ、おに、さま。私、ちゃんと全部、飲めるよう、に、するから」
喉がひりついて上手く喋ることも出来ない。
こほん、と小さく咳込んでいると水の入ったグラスを差し出された。お礼さえ満足に言えずに受け取ると、ゆっくりと口に含む。
程良く冷えた爽やかな甘みが広がると心地良さに一息つく。フィオレンツィアの為だけに用意してくれている、彼女の好きな果実水の味だ。
「君が手や口で慰めてくれるだけで嬉しいよ」
「……うん」
ほとんど空になったグラスを手渡せば抱き寄せられる。
素肌の重なりをもっと感じたくて背中に手を回す。それだけで幸せな気持ちになった。
ただ抱き締め合い、だけど欲張りになった心はそれ以上の繋がりを求める。
アドルフォードも同じことを思っているのか。
再びベッドに横たえられた。
「フィオレア……。君の中に挿れてもいいかな」
今さらそんなことを聞かなくても、いつでもアドルフォードのものだけにしてくれたらいいのに。
そう思ったら慎重なアドルフォードが何だかおかしく感じて、つい口元が綻んでしまった。
どうしようもないくらい好き。
どうしようもないくらい欲しい。
だから願うことは一つしかなかった。
「お兄様を、私だけのものにして欲しいの……」
「僕は初めて会った時から、ずっと君だけのものだよ。――最近まで、君に上手く伝わってなかったみたいだけれどね」
「だって」
「そうだね。言わないでいたんだから、君に何も伝わってなくて当然だね」
両足が大きく開かれ、閉じてしまわないようにふとももの内側で支えられる。
羞恥で頬が熱くなって、フィオレンツィアは吐息を一つこぼした。吐き終わると同時に、熱いものが蜜口に押し当てられる。
あの大きなものが、いよいよ自分の中に入って来るのだ。
怖いわけではないけれど初めて指を挿れられたあの日のように、びくりと身が震えた。その反応に同じ出来事を思い出しているのだろうか。アドルフォードの右手が頬を優しく包み込んだ。愛おしむように何度も撫でられ、強張った身体から少しずつ力が抜け落ちて行く。
「ごめんね、また怖い思いをさせて」
「……ううん」
「痛くてつらくなったら、ちゃんと教えて」
フィオレンツィアが頷くと、今度は腰を両手で支えられた。アドルフォードが少しずつ腰を押し進めるにつれ、下腹部にじんわりと鈍い痛みが広がって行く。
あんなに指でかき混ぜられていたはずが指とはまるで違う。それこそ胎内を一本の大きな杭で貫かれるような感覚だった。
その圧倒的な熱と質量とにフィオレンツィアは背中をのけぞらせる。無意識に緩やかな呼吸を繰り返し、痛みを逃がそうとシーツを掻き毟っては掴んだ。
その度に先程舐めてみた透明な液体とはまた別の、どろりとした感触の熱い塊が咥内に容赦なく叩きつけられた。
ある程度の覚悟は決めていたけれど、根拠のない想像などとは感覚が全く違った。
もっとも、アドルフォードに教えられることがフィオレンツィアの全てなのだ。その感触を、においや味を想像出来るはずもない。
「フィオレア、無理しなくていいよ」
アドルフォードが欲情の鎮まった自らを引き抜く瞬間、フィオレンツィアの唇との間に白みがかった半透明の緩い液体が糸を引く。唾液と精液とが混ざり合ったそれはアドルフォードが離れるに従ってふつりと切れ、フィオレンツィアの唇の端を濡らした。
口の中には出されたばかりの濃い精液のほとんどが残っている。
愛しい相手の放ったそれを一滴も残さず飲み尽くしたいと思うのに、粘度が高いせいで喉にへばりついて上手く行かない。その間も独特の青っぽいにおいは口から鼻にかけて浸食し、決してそれ自体がイヤなわけではないのに生理的な涙が潤んでしまう。
「口を開けて」
柔らかな布を口元に当てられ、精液を吐くよう促される。飲み下せそうにない分をゆるゆると口から出し、咥内の粘膜に残った分は布の影に隠れて舌でかき集めて何とか飲み込んだ。
「ごめ……なさ、おに、さま。私、ちゃんと全部、飲めるよう、に、するから」
喉がひりついて上手く喋ることも出来ない。
こほん、と小さく咳込んでいると水の入ったグラスを差し出された。お礼さえ満足に言えずに受け取ると、ゆっくりと口に含む。
程良く冷えた爽やかな甘みが広がると心地良さに一息つく。フィオレンツィアの為だけに用意してくれている、彼女の好きな果実水の味だ。
「君が手や口で慰めてくれるだけで嬉しいよ」
「……うん」
ほとんど空になったグラスを手渡せば抱き寄せられる。
素肌の重なりをもっと感じたくて背中に手を回す。それだけで幸せな気持ちになった。
ただ抱き締め合い、だけど欲張りになった心はそれ以上の繋がりを求める。
アドルフォードも同じことを思っているのか。
再びベッドに横たえられた。
「フィオレア……。君の中に挿れてもいいかな」
今さらそんなことを聞かなくても、いつでもアドルフォードのものだけにしてくれたらいいのに。
そう思ったら慎重なアドルフォードが何だかおかしく感じて、つい口元が綻んでしまった。
どうしようもないくらい好き。
どうしようもないくらい欲しい。
だから願うことは一つしかなかった。
「お兄様を、私だけのものにして欲しいの……」
「僕は初めて会った時から、ずっと君だけのものだよ。――最近まで、君に上手く伝わってなかったみたいだけれどね」
「だって」
「そうだね。言わないでいたんだから、君に何も伝わってなくて当然だね」
両足が大きく開かれ、閉じてしまわないようにふとももの内側で支えられる。
羞恥で頬が熱くなって、フィオレンツィアは吐息を一つこぼした。吐き終わると同時に、熱いものが蜜口に押し当てられる。
あの大きなものが、いよいよ自分の中に入って来るのだ。
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その圧倒的な熱と質量とにフィオレンツィアは背中をのけぞらせる。無意識に緩やかな呼吸を繰り返し、痛みを逃がそうとシーツを掻き毟っては掴んだ。
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