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カイル視点の前日譚
お姫様との出会い
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その日、第三王子カイルは朝からやけに忙しなかった。
長兄エリオットの成人を祝う盛大な夜会が今夜、開かれる。
その規模はこれまでカイルも王族として参加させられて来た夜会の比ではないらしく、普段は滅多に顔を見せないような貴族も大勢招待されているらしい。
第三王子であるカイルにも当然、王位継承権は与えられている。
だが兄が二人いるからカイルに王位が回って来ることはまずないだろうし、次期国王になりたいと思ったことなど一度もない。
何より、十一歳のカイルから見ても努力家で清廉潔白なエリオットは次の王に相応しいと思う。
そんな兄が即位することに異論などあるはずもなく、夜会で正式に発表されるのは良いことだ。第二王子フレデリックも、当人たちの意思をよそに騒ぐ周囲も静かになると安堵していた。
だがカイルは夜会自体は好きではなかった。王位継承権に関する外野のいざこざは、これで確かに収束していくに違いない。
それでも第三王子であることは窮屈だ。
いや、第三王子の地位は関係ないのかもしれない。
カイルの日常は、窮屈だ。
二週間ほど前から、カイルは一匹の猫を飼いはじめていた。
自分の護衛をしてくれている若い衛兵の家で生まれたばかりの三匹のうち、一匹を譲り受けたのだ。
猫を飼いはじめたことに特別な意味はなかった。
まだ仔猫だからか、カイルによく懐いている。猫は気まぐれで人に懐かないという印象だったが、そうでないこともあるようだ。
その仔猫の姿が見えないことにカイルが気がついたのは、昼過ぎだった。
一体いつからいなくなっているのかは分からないが、あの身体の大きさではそう遠くには行っていないだろう。
ましてやここは広い城内だ。誰かに意図的に連れ去られるなどと言った、よほどのことがなければ城外に出たとは考えられない。
城内の捜索はメイドたちに頼んでカイルは庭園に向かった。
途中ですれ違った、巡回の任に就いている衛兵たちにも大まかな事情を話して人手を増やす。
庭園を奥へと進み、樹齢百年は超えようかという大木の近くまで行ったカイルは人の気配に足を止めた。
不審者かと様子を窺えば、一人の少女が大木の前にいた。背中を向けている為に顔は見えないが、カイルと年はさほど変わらない感じだ。
榛色の長い髪が穏やかな風に優しく揺れて、淡い緑色のドレスに華奢な身を包んでいる。
一瞬、兄の成人を祝って大木の妖精でも現れたのかと、普段の自分なら到底考えすらしないことが頭をよぎった。
「そんなところで何をしている」
声をかけると少女は小さな背中をびくりと震わせた。
もう少し優しく言葉をかけてやった方が良かったかもしれないと思ったが、素性や目的が分からない以上、多少は仕方がないと言い聞かせる。
何か覚悟を決めたかのような、長い髪と同じ色をした大きな瞳が真っすぐにカイルを見つめた。
榛色なんて取り立てて珍しくもない色だ。それなのに、見つめられると吸い込まれてしまいそうな錯覚を覚える。
「俺の言葉が聞こえなかったのか? そこで何をしているのかと聞いている」
返事がないことに焦れ、口調に険しさが増した。
何をやっているのだろう。
左胸がいやに軋む。
どくどくと刻まれる耳障りな音が彼女にも聞こえたりしないか気ばかりが焦り、そして彼女の緑色のドレスが裂けて白い素足がのぞいていることに気がついた途端、初めて知る感情がカイルに容赦なくとどめを刺す。
ドレスの裾を破った少女が何故かひどく自由な存在に見えた。
まるで本当に、神木から妖精が現れたかのような。
こんなきつい言い方をしたいんじゃない。
けれどカイルが何か言う度に少女は怯えたような表情になって行く。違うんだとは思っていても、自分の感情と言葉をコントロールする術を完全に見失っていた。
そうして、彼女から逃げ出すように背を向けたのだ。
(なんなんだ)
左胸の軋みが、いつまでもカイルを責め立てるように後をついて来る。
モヤモヤした気持ちを抱えたまま庭園を歩く。
あの子は今にも泣きそうな顔をしていた。
そんな顔をさせたかったんじゃない。
だけど他に言い様がなくてそうさせてしまった自分に無性に腹が立った。
「カイル様いましたよ!」
衛兵の一人が仔猫を抱えて駆け寄って来る。彼は自分の飼い猫を見つけたかのように安堵した顔でカイルに猫を差し出した。
「例の大木の枝の上で身をすくませていたのが見えたから慌てて梯子を取りに行ったんですけど、どうやらその間に自力で降りられたようですね」
怪我をした様子もなくて良かったです。
衛兵は人の良さそうな笑みでそう言うと、再び持ち回りの勤務へと戻って行った。
とりあえず仔猫が無事に見つかり安堵の息をつき、しかし自分が何か取り返しのつかない重大なことをしでかしてしまった気がして、ぞわぞわとした感覚に背筋を震わせた。
その拍子に、指先に違和感を覚えて首を傾げる。
「お前、何くっつけてるんだ?」
仔猫の首輪の内側に茶色い何かが引っかかっているのを見つけ、カイルはそれを指でつまんで取り出した。
すっかり水分が抜けて乾き切った、ごく小さな破片だった。甘えた様子で喉を鳴らし、顔を擦りつけてくる仔猫を反対の手で撫でてやりながら、そのざらざら、ごつごつと不思議な感触の破片を光にかざし、じっと見つめる。
まさか。
仔猫を肩に乗せ、急いで大木の元へ戻った。しかしそこはすでに誰もいない。
先程の衛兵の話では、仔猫は大木の枝の上にいたと言う。
散らばったパーツがカイルの中でどんどんと一つの形を取りはじめる。
首輪に挟まっていた破片。
折れた枝。
人が倒れたと思われる土の窪み。
その土で汚れ、裾が破れていたドレス。
何か言いたげにはしながらも、どうしてそんな状態になっているのかは頑なに語らなかった女の子。
あの子が自分のドレスのことなど気にせず、仔猫を助けてくれていたのではないのか。
それならそうと言ってくれたら良かった。
言ってくれたら、自分だって。
何も言わなかった少女に責任転嫁しようとして眉をひそめる。
(言われていたとして、どうしてた?)
あの状況で正直に言ってくれていたとしても、カイルはそれを信じることが出来ただろうか。
きっと、彼女が保身の為にくだらない嘘をついたと思い込んでそう決めつけて、さらにひどい態度を取っていた気がする。
けれど彼女は仔猫を助けてくれたかもしれないのに、知らなかったとは言え辛辣なことを言ってしまった。
冷静になれば、少しは自分の気持ちも分析出来る。
初対面の女の子の素足を見たことに対する何とも言えない気恥ずかしさと、自由奔放そうな彼女への羨望と……おそらくは嫉妬で、どうしようもないくらい感情が揺さぶられた。だから必要以上にきつい態度で当たってしまった。だがそんなことは何の言い訳にもならない。
慌てて木の周囲を探してみたが、やはりあの少女はどこにもいなかった。
右肩の辺りが仔猫を乗せた時に汚れてしまっていたが、マントを羽織れば上手く隠せるようだった。
どうせマントを外す用事もない。見てくれを取り繕い、夜会の時間を兄たちと待った。
ぼんやりと思うのは、あの少女のことだ。それは仔猫の首輪の内側に引っかかった大木の破片のように、カイルの心にいつまでも引っかかり続ける。
何気なく下のフロアに目を向けたカイルは、先程の少女がいることに気がついた。
大きく裂かれたはずのドレスはどうなったのか、懸命に目を凝らしてみる。
色と形はさほど変わった様子もないし、着替えたというわけでもなさそうだ。
からくりはよく分からないが、ドレスが破れたせいで姿を見せないという事態は免れたようで思わずほっとする。
一緒にいる少年は誰だろう。
髪の色が同じだし、雰囲気もどことなく似ている気がする。親し気に顔を寄せ合って、皿に取った料理をつまんでは何が楽しいのか笑っていた。
(あんな顔で笑うのか)
カイルにはにこりともしなかったのに、少年に対してはずっと笑顔だ。
笑顔を向けられなかった原因が、余計な威圧感を与えていたせいだと自覚はあっても見ていて面白くない。面白くないのに彼女の笑顔から目が離せなかった。
頭の中で何度も想像する。
自分だけにあの笑顔を向けられれば嬉しいだろう。もっと笑って欲しいと思うだろう。
名前くらい、聞いておけば良かった。
今この場で彼女に話しかけることはもうできないが、明日、少しの時間でいいから話ができないだろうか。
「下のフロアばかり見て、どうなさったの?」
幼馴染みのエレナに声をかけられ、カイルは名残り惜しさを感じながらも、仕方なく少女の笑顔から視線を外した。
「いや……何でもない」
何でもなくはないが、この時のカイルは彼女にはまたすぐ会えると思っていた。
その考えが甘かったことこそ、すぐ思い知らされるとも知らずに。
長兄エリオットの成人を祝う盛大な夜会が今夜、開かれる。
その規模はこれまでカイルも王族として参加させられて来た夜会の比ではないらしく、普段は滅多に顔を見せないような貴族も大勢招待されているらしい。
第三王子であるカイルにも当然、王位継承権は与えられている。
だが兄が二人いるからカイルに王位が回って来ることはまずないだろうし、次期国王になりたいと思ったことなど一度もない。
何より、十一歳のカイルから見ても努力家で清廉潔白なエリオットは次の王に相応しいと思う。
そんな兄が即位することに異論などあるはずもなく、夜会で正式に発表されるのは良いことだ。第二王子フレデリックも、当人たちの意思をよそに騒ぐ周囲も静かになると安堵していた。
だがカイルは夜会自体は好きではなかった。王位継承権に関する外野のいざこざは、これで確かに収束していくに違いない。
それでも第三王子であることは窮屈だ。
いや、第三王子の地位は関係ないのかもしれない。
カイルの日常は、窮屈だ。
二週間ほど前から、カイルは一匹の猫を飼いはじめていた。
自分の護衛をしてくれている若い衛兵の家で生まれたばかりの三匹のうち、一匹を譲り受けたのだ。
猫を飼いはじめたことに特別な意味はなかった。
まだ仔猫だからか、カイルによく懐いている。猫は気まぐれで人に懐かないという印象だったが、そうでないこともあるようだ。
その仔猫の姿が見えないことにカイルが気がついたのは、昼過ぎだった。
一体いつからいなくなっているのかは分からないが、あの身体の大きさではそう遠くには行っていないだろう。
ましてやここは広い城内だ。誰かに意図的に連れ去られるなどと言った、よほどのことがなければ城外に出たとは考えられない。
城内の捜索はメイドたちに頼んでカイルは庭園に向かった。
途中ですれ違った、巡回の任に就いている衛兵たちにも大まかな事情を話して人手を増やす。
庭園を奥へと進み、樹齢百年は超えようかという大木の近くまで行ったカイルは人の気配に足を止めた。
不審者かと様子を窺えば、一人の少女が大木の前にいた。背中を向けている為に顔は見えないが、カイルと年はさほど変わらない感じだ。
榛色の長い髪が穏やかな風に優しく揺れて、淡い緑色のドレスに華奢な身を包んでいる。
一瞬、兄の成人を祝って大木の妖精でも現れたのかと、普段の自分なら到底考えすらしないことが頭をよぎった。
「そんなところで何をしている」
声をかけると少女は小さな背中をびくりと震わせた。
もう少し優しく言葉をかけてやった方が良かったかもしれないと思ったが、素性や目的が分からない以上、多少は仕方がないと言い聞かせる。
何か覚悟を決めたかのような、長い髪と同じ色をした大きな瞳が真っすぐにカイルを見つめた。
榛色なんて取り立てて珍しくもない色だ。それなのに、見つめられると吸い込まれてしまいそうな錯覚を覚える。
「俺の言葉が聞こえなかったのか? そこで何をしているのかと聞いている」
返事がないことに焦れ、口調に険しさが増した。
何をやっているのだろう。
左胸がいやに軋む。
どくどくと刻まれる耳障りな音が彼女にも聞こえたりしないか気ばかりが焦り、そして彼女の緑色のドレスが裂けて白い素足がのぞいていることに気がついた途端、初めて知る感情がカイルに容赦なくとどめを刺す。
ドレスの裾を破った少女が何故かひどく自由な存在に見えた。
まるで本当に、神木から妖精が現れたかのような。
こんなきつい言い方をしたいんじゃない。
けれどカイルが何か言う度に少女は怯えたような表情になって行く。違うんだとは思っていても、自分の感情と言葉をコントロールする術を完全に見失っていた。
そうして、彼女から逃げ出すように背を向けたのだ。
(なんなんだ)
左胸の軋みが、いつまでもカイルを責め立てるように後をついて来る。
モヤモヤした気持ちを抱えたまま庭園を歩く。
あの子は今にも泣きそうな顔をしていた。
そんな顔をさせたかったんじゃない。
だけど他に言い様がなくてそうさせてしまった自分に無性に腹が立った。
「カイル様いましたよ!」
衛兵の一人が仔猫を抱えて駆け寄って来る。彼は自分の飼い猫を見つけたかのように安堵した顔でカイルに猫を差し出した。
「例の大木の枝の上で身をすくませていたのが見えたから慌てて梯子を取りに行ったんですけど、どうやらその間に自力で降りられたようですね」
怪我をした様子もなくて良かったです。
衛兵は人の良さそうな笑みでそう言うと、再び持ち回りの勤務へと戻って行った。
とりあえず仔猫が無事に見つかり安堵の息をつき、しかし自分が何か取り返しのつかない重大なことをしでかしてしまった気がして、ぞわぞわとした感覚に背筋を震わせた。
その拍子に、指先に違和感を覚えて首を傾げる。
「お前、何くっつけてるんだ?」
仔猫の首輪の内側に茶色い何かが引っかかっているのを見つけ、カイルはそれを指でつまんで取り出した。
すっかり水分が抜けて乾き切った、ごく小さな破片だった。甘えた様子で喉を鳴らし、顔を擦りつけてくる仔猫を反対の手で撫でてやりながら、そのざらざら、ごつごつと不思議な感触の破片を光にかざし、じっと見つめる。
まさか。
仔猫を肩に乗せ、急いで大木の元へ戻った。しかしそこはすでに誰もいない。
先程の衛兵の話では、仔猫は大木の枝の上にいたと言う。
散らばったパーツがカイルの中でどんどんと一つの形を取りはじめる。
首輪に挟まっていた破片。
折れた枝。
人が倒れたと思われる土の窪み。
その土で汚れ、裾が破れていたドレス。
何か言いたげにはしながらも、どうしてそんな状態になっているのかは頑なに語らなかった女の子。
あの子が自分のドレスのことなど気にせず、仔猫を助けてくれていたのではないのか。
それならそうと言ってくれたら良かった。
言ってくれたら、自分だって。
何も言わなかった少女に責任転嫁しようとして眉をひそめる。
(言われていたとして、どうしてた?)
あの状況で正直に言ってくれていたとしても、カイルはそれを信じることが出来ただろうか。
きっと、彼女が保身の為にくだらない嘘をついたと思い込んでそう決めつけて、さらにひどい態度を取っていた気がする。
けれど彼女は仔猫を助けてくれたかもしれないのに、知らなかったとは言え辛辣なことを言ってしまった。
冷静になれば、少しは自分の気持ちも分析出来る。
初対面の女の子の素足を見たことに対する何とも言えない気恥ずかしさと、自由奔放そうな彼女への羨望と……おそらくは嫉妬で、どうしようもないくらい感情が揺さぶられた。だから必要以上にきつい態度で当たってしまった。だがそんなことは何の言い訳にもならない。
慌てて木の周囲を探してみたが、やはりあの少女はどこにもいなかった。
右肩の辺りが仔猫を乗せた時に汚れてしまっていたが、マントを羽織れば上手く隠せるようだった。
どうせマントを外す用事もない。見てくれを取り繕い、夜会の時間を兄たちと待った。
ぼんやりと思うのは、あの少女のことだ。それは仔猫の首輪の内側に引っかかった大木の破片のように、カイルの心にいつまでも引っかかり続ける。
何気なく下のフロアに目を向けたカイルは、先程の少女がいることに気がついた。
大きく裂かれたはずのドレスはどうなったのか、懸命に目を凝らしてみる。
色と形はさほど変わった様子もないし、着替えたというわけでもなさそうだ。
からくりはよく分からないが、ドレスが破れたせいで姿を見せないという事態は免れたようで思わずほっとする。
一緒にいる少年は誰だろう。
髪の色が同じだし、雰囲気もどことなく似ている気がする。親し気に顔を寄せ合って、皿に取った料理をつまんでは何が楽しいのか笑っていた。
(あんな顔で笑うのか)
カイルにはにこりともしなかったのに、少年に対してはずっと笑顔だ。
笑顔を向けられなかった原因が、余計な威圧感を与えていたせいだと自覚はあっても見ていて面白くない。面白くないのに彼女の笑顔から目が離せなかった。
頭の中で何度も想像する。
自分だけにあの笑顔を向けられれば嬉しいだろう。もっと笑って欲しいと思うだろう。
名前くらい、聞いておけば良かった。
今この場で彼女に話しかけることはもうできないが、明日、少しの時間でいいから話ができないだろうか。
「下のフロアばかり見て、どうなさったの?」
幼馴染みのエレナに声をかけられ、カイルは名残り惜しさを感じながらも、仕方なく少女の笑顔から視線を外した。
「いや……何でもない」
何でもなくはないが、この時のカイルは彼女にはまたすぐ会えると思っていた。
その考えが甘かったことこそ、すぐ思い知らされるとも知らずに。
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