43 / 60
第三章 上層へ
42話 セレナスとの決闘
しおりを挟む
セレナスたちと別れた後、
俺は道場の茶室にてD-85に
「D-85、下層と最下層を切り離してしまうなんてことは出来るのか?」
と質問した。
「強制作動で行う場合には、最高管理者のみ可能デス。現在エルミラ・S・ソヴリンスターに権限が付与されていマス」
「そこまで分かるのか……切り離された方はどうなる?」
「消滅シマス」
……概ね予想通りの事態になってしまうようだ。
強制作動か……。
ん、どういう事だ?
俺はそのままD-85に強制作動について確認した。
「切り離しは本来人口が増えすぎて、過重に耐えられなくなった場合に自動で発動シマス」
自動で発動……。
それを聞いて俺は血の気が引いた。
「自動……止められないのか?!」
「こちらは停止できまセン。それを発生させない為に人口の調整システムが存在シマス」
「……」
思わず言葉を失った。
どう転んでも……深刻な状況なようだ。
このまま平和になって、人口も増えて豊かになればいい。
ただそう思っていた。
しかし、人口増加で世界が切り離され、消滅してしまう可能性がある。
洗礼の試練で人口が増えすぎなかった結果、人口が上手く調整出来ていたのかもしれないな。
エルミラを倒し、切り離しを止められたとしても、人口が増えて勝手に切り離されてしまうのであれば意味が無い。
一体どうすればいいんだ……。
この世界は本当に何なんだ?
「ドームへの返答がまだされてイマセン。どうシマスカ?」
「ああ、そうだったな……とりあえず、あと半年以内程で再起動が完了すると伝えておいてくれ……」
「ワカリマシタ」
ドームか……そういえば、ドームってどこにあるんだ?!
「なぁD-85! ドームってどこにあるんだ?」
「ドームは……この世界の外……スリープモードに移行シマス」
「あ、充電が切れた……」
世界の外……電子音に紛れながらも確かにそう聞こえた。
詳細は分からないが、ドームに移住するってのも手じゃないのか?
とにかく絶望するにはまだ早い気がする。
本腰を入れてドームの事を探ろう。
その前に……
まずはエルミラを止めなければ、どちらにしても終わりだ。
さて、今日はもう遅い。
寝るとしよう。
そして俺は長屋の寝室へと戻った。
・・・
・・
・
――翌日
俺とセレナスは道場よりかなり離れた場所へと移動した。
この場所の地面はテニスコート二面分程平地になっており、砂と土がむき出しになっている。
その周囲は大きな丸太で囲われている。
今は全く使われていないが、ここでは昔一対一での決闘修行が行われていたようだ。
気がつけば近くではリリアナや岩剛斎、道場の生徒が見学している。
昨日言っていた魔装魂での決闘……どんな感じか想像できないな。
今思えば、俺は魔物ばかりと戦ってきた。
人と戦うのはほぼ初めてだな。
バーストチェインであれば消し炭に出来そうだが……
人と戦う場合は勝利した後情報を聞きだす必要がある場合もあるだろう。
相手が言葉を発する事が出来る状態で制圧……これが出来るようにならないとな。
「魔装魂開放」
俺とセレナスはそれぞれそう唱えた。
俺の魔装魂は昨日と同じく、全身紫色で炎のような揺らめきがあるのに対し、セレナスは赤い魔装魂だ。
「さぁ始めようか」
セレナスはそう言って構えた。
俺もそれに合わせ構え、岩剛斎のはじめという合図で決闘はスタートした。
右腕を見ると、しっかりと魔法輪が刻まれていた為、魔法は発動できそうだ。
しかし……
全く負ける気がしない!
敵を前にしていると言うのにこの心の余裕は何なんだ。
何よりもセレナスからは闘気を一切感じない。
神徒はもれなく闘気を持っていないのだろうか……。
「セレナス……悪いが負ける気がしない!」
俺は思わずそれを口にしてしまった。
すると、セレナスはすました表情で、
「はっ! 神徒が紫髪の貴様に負けるわけがないだろう。立場を分からせる必要があるようだね」
そういってセレナスは俺に真っ直ぐ突っ込んできた。
その速さを見て周囲の生徒は、
速い! 全く見えない……!
と興奮気味に観戦していた。
だがその速度……
ハナより遅いな。
それが俺の感想だった。
セレナスの右拳が真っ直ぐに俺の顔めがけて伸びてきた。
それを俺は左手で払いのけると同時に、
「六輪バースト」
とセレナスの腹部に放った。
そして、魔装魂は解除され、勝負は一瞬で決着した。
「な……!」
魔装魂から生身に戻ったセレナスは驚愕していた。
周囲も一瞬の事でいまいち状況を理解できておらず、呆気に取られていた。
「セレナス、下層に住む者は結構強いぞ? 常に死ぬか生きるかの世界だからな」
「……」
「今のままだと、俺の妹より弱い……エルミラがどれほど強いか知らないが、このままだと勝てないんじゃないか?」
セレナスはその言葉に対し、
「黙れ!」
と声を荒げた。
そして、そのまま何処かへ行ってしまった。
「あ、あいつ……!」
リリアナが追いかけようとしたが、俺はそれを止めた。
「まて、すぐに帰ってくるよ」
・・・
・・
・
俺は道場の茶室にてD-85に
「D-85、下層と最下層を切り離してしまうなんてことは出来るのか?」
と質問した。
「強制作動で行う場合には、最高管理者のみ可能デス。現在エルミラ・S・ソヴリンスターに権限が付与されていマス」
「そこまで分かるのか……切り離された方はどうなる?」
「消滅シマス」
……概ね予想通りの事態になってしまうようだ。
強制作動か……。
ん、どういう事だ?
俺はそのままD-85に強制作動について確認した。
「切り離しは本来人口が増えすぎて、過重に耐えられなくなった場合に自動で発動シマス」
自動で発動……。
それを聞いて俺は血の気が引いた。
「自動……止められないのか?!」
「こちらは停止できまセン。それを発生させない為に人口の調整システムが存在シマス」
「……」
思わず言葉を失った。
どう転んでも……深刻な状況なようだ。
このまま平和になって、人口も増えて豊かになればいい。
ただそう思っていた。
しかし、人口増加で世界が切り離され、消滅してしまう可能性がある。
洗礼の試練で人口が増えすぎなかった結果、人口が上手く調整出来ていたのかもしれないな。
エルミラを倒し、切り離しを止められたとしても、人口が増えて勝手に切り離されてしまうのであれば意味が無い。
一体どうすればいいんだ……。
この世界は本当に何なんだ?
「ドームへの返答がまだされてイマセン。どうシマスカ?」
「ああ、そうだったな……とりあえず、あと半年以内程で再起動が完了すると伝えておいてくれ……」
「ワカリマシタ」
ドームか……そういえば、ドームってどこにあるんだ?!
「なぁD-85! ドームってどこにあるんだ?」
「ドームは……この世界の外……スリープモードに移行シマス」
「あ、充電が切れた……」
世界の外……電子音に紛れながらも確かにそう聞こえた。
詳細は分からないが、ドームに移住するってのも手じゃないのか?
とにかく絶望するにはまだ早い気がする。
本腰を入れてドームの事を探ろう。
その前に……
まずはエルミラを止めなければ、どちらにしても終わりだ。
さて、今日はもう遅い。
寝るとしよう。
そして俺は長屋の寝室へと戻った。
・・・
・・
・
――翌日
俺とセレナスは道場よりかなり離れた場所へと移動した。
この場所の地面はテニスコート二面分程平地になっており、砂と土がむき出しになっている。
その周囲は大きな丸太で囲われている。
今は全く使われていないが、ここでは昔一対一での決闘修行が行われていたようだ。
気がつけば近くではリリアナや岩剛斎、道場の生徒が見学している。
昨日言っていた魔装魂での決闘……どんな感じか想像できないな。
今思えば、俺は魔物ばかりと戦ってきた。
人と戦うのはほぼ初めてだな。
バーストチェインであれば消し炭に出来そうだが……
人と戦う場合は勝利した後情報を聞きだす必要がある場合もあるだろう。
相手が言葉を発する事が出来る状態で制圧……これが出来るようにならないとな。
「魔装魂開放」
俺とセレナスはそれぞれそう唱えた。
俺の魔装魂は昨日と同じく、全身紫色で炎のような揺らめきがあるのに対し、セレナスは赤い魔装魂だ。
「さぁ始めようか」
セレナスはそう言って構えた。
俺もそれに合わせ構え、岩剛斎のはじめという合図で決闘はスタートした。
右腕を見ると、しっかりと魔法輪が刻まれていた為、魔法は発動できそうだ。
しかし……
全く負ける気がしない!
敵を前にしていると言うのにこの心の余裕は何なんだ。
何よりもセレナスからは闘気を一切感じない。
神徒はもれなく闘気を持っていないのだろうか……。
「セレナス……悪いが負ける気がしない!」
俺は思わずそれを口にしてしまった。
すると、セレナスはすました表情で、
「はっ! 神徒が紫髪の貴様に負けるわけがないだろう。立場を分からせる必要があるようだね」
そういってセレナスは俺に真っ直ぐ突っ込んできた。
その速さを見て周囲の生徒は、
速い! 全く見えない……!
と興奮気味に観戦していた。
だがその速度……
ハナより遅いな。
それが俺の感想だった。
セレナスの右拳が真っ直ぐに俺の顔めがけて伸びてきた。
それを俺は左手で払いのけると同時に、
「六輪バースト」
とセレナスの腹部に放った。
そして、魔装魂は解除され、勝負は一瞬で決着した。
「な……!」
魔装魂から生身に戻ったセレナスは驚愕していた。
周囲も一瞬の事でいまいち状況を理解できておらず、呆気に取られていた。
「セレナス、下層に住む者は結構強いぞ? 常に死ぬか生きるかの世界だからな」
「……」
「今のままだと、俺の妹より弱い……エルミラがどれほど強いか知らないが、このままだと勝てないんじゃないか?」
セレナスはその言葉に対し、
「黙れ!」
と声を荒げた。
そして、そのまま何処かへ行ってしまった。
「あ、あいつ……!」
リリアナが追いかけようとしたが、俺はそれを止めた。
「まて、すぐに帰ってくるよ」
・・・
・・
・
0
お気に入りに追加
260
あなたにおすすめの小説
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる
シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。
※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。
※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。
俺の名はグレイズ。
鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。
ジョブは商人だ。
そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。
だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。
そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。
理由は『巷で流行している』かららしい。
そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。
まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。
まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。
表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。
そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。
一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。
俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。
その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。
本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる