上 下
11 / 60
第一章 妹弟救出

11話 第二の試練

しおりを挟む
――翌日

 十分に回復した俺は、開眼の祭壇の前で準備をしていた。

「さて、行ってくるか。同じような内容だといいんだけどな」

 そういって開眼の祭壇に腕を突っ込んだ。

――

第二の試練……資格あり

――

 そういう表示が出た後、地面に一つの光の円が現れた。
 どうやら第二の試練は一人で受けなければならないらしい。

「……一人で行かないといけないみたいだな」

「そうみたいですね……ロフルさん頑張ってください!」
「ロフルならいける」

 マグとフーチェは声援を送ってくれた。

「ありがとう。よし、行ってくる!」

 そうして俺は一人で光の円に入り、そのまま転送された。

・・・

「全然雰囲気が違うな……」

 見渡す限り床と壁は真っ黒で、点在するキラキラとした光がまるで星々が輝く夜空のように輝いていた。
 この場所は少し息がしづらい。空気が薄いのだろうか……?
 そして、目の前にはボーリング玉程のサイズの赤黒い水晶玉が浮遊しており、その近くで文字が浮かんでいる。

 その内容は、
 試練内容、出現する魔物を討伐せよ。
 潜在力によって出現する魔物が変わる。
 準備が出来たら水晶玉に触れよ。
 
 俺はその文字を読み終わると、深く深呼吸をした後、
 そっと水晶玉に触れた。

 すると、俺の全身を伝うように赤い線が走り、
 静電気が走るようなピリピリとした感触が全身を巡った。
 そして、その線は水晶玉に吸収されるように戻った。

「な、なんだ……? 赤い線……魔力を感じたけど……」

――パリンッ

 水晶玉は突然割れ、その下に大きな魔法陣が出現した。
 俺はそれを見てすぐに後退し、様子を見た。

――シュゥゥゥ……

 魔法陣から赤黒い煙と共に何かが出現した。
 そして、

「我と共鳴する者か……久しぶりじゃのう」
「しゃ……しゃべった!?」

 その魔物は銀色の長髪の女性であった。彼女のその姿は、20歳程度の年齢に見えた。
 彼女はまるでサキュバスのような黒い翼を背負っており、頭部には牛角のようなものが生えていた。

 そして、彼女は俺をじっと見つめた。

「ふふ……何百年ぶりじゃ。ここへ出てくるのも……」

 彼女は身体を伸ばしながら言った。

「貴方は一体……?」

 俺がそう言うと、彼女はこちらを見つめ、

「我は封印された太古の魔王フォルチナじゃ」

 と名前を教えてくれた。

「ま……魔王!?」

 魔王……ってあの魔王?
 潜在力で変わるみたいな事書いていたけど……祭壇の故障か……?

 戸惑いを隠せない俺に向かってフォルチナは、

「さて、お主で3人目……久しぶりの人肉じゃ。我の糧となるが良い」

 と冷酷な言葉を口にした。

 そして、彼女の全身から禍々しい魔力があふれ出した。
 これまでに見た誰とも比べ物にならないほどの強さを感じる。
 こんな奴に俺は勝てるのだろうか……?
 どちらにしても敗北は死だな……。

「さぁ少しくらい我楽しませてみるのじゃ」

 そういうと、フォルチナは左腕を前に出した。
 その腕には魔法輪が刻まれていた。

「左腕に魔法輪……!?」

 その瞬間、フォルチナは

「冥暗(めいあん)一輪・シャドウブラスト」

 と唱えた。
 そして、左手から大きな黒い波動が射出された。
 その波動は俺のブラストとは比べ物にならない程の魔力を感じる。
 瞬間的に危険を察知した為、辛うじて回避する事が出来た。

 多分エンハンスの出力2でも一瞬で貫く……
 当てれば確実に死ぬという事はその一撃で理解できた。

 冥暗(めいあん)一輪……?
 ユニークリングとはまた違う魔法輪なのか?
 とにかくまずい。こうなってきたら相手がどんな魔法をしてくるか全く分からない……!

「ほう、避けられるのか。ならばこれはどうじゃ?」

 そういって次の魔法を撃とうとするフォルチナ。
 受けてばかりだと勝てない。

「五輪・ブラスト!!」

 相手が魔法を撃つ前に出力2の手からブラストを放った。

 だが……

 ブラストは命中したが、ジュッという小さな音を立てて消えた。
 フォルチナはまったくの無傷である。

「弱いのう。その程度の攻撃で我のエンハンスは破れぬぞ」

 どうする……?
 ダメージを与えるには出力を上げるしかない……!
 しかし気絶してしまえば負ける。
 どこまで持つ? 俺の魔力……!

 絶体絶命に近い状況……
 俺の頭は今までにない速度で思考していた。

「さぁ次じゃ! 冥暗二輪・バインドオブデスダンス」

 その間にフォルチナは容赦なく次の魔法を詠唱した。
 その魔法はフォルチナの掌から3つの円盤を生成し、それは空中で静止した。
 そして、その円盤から無数の黒い鎖が俺をめがけて飛び出してきた。

「拘束されたら終わりだ……! 四輪・バインド!!」

 咄嗟の判断で俺はバインドを唱え、操作し、自身の周囲を囲むように鎖を張り巡らせた。
 飛んできた鎖はそのまま俺の鎖と絡まり、俺の身体に巻き付くのを阻止する事が出来た。とはいえ鎖の鳥籠の中にいるような物……身動きは出来ない。

「ふふ、面白い使い方をするのう! じゃが……」

 フォルチナは嘲笑いつつ、最初と同じ構えを取った。
 俺が避けたりできないのは見てすぐにわかる状況だ。

「冥暗一輪・シャドウブラスト」

 無慈悲にも最初に撃ってきたシャドウブラストが詠唱された。
 避けると言う選択肢はない。受け切るしかない状況だ。

 俺は右手の指先を前方に突き出した。
 そして、刹那の時間に日々の鍛錬を瞬間的に思い出していた。

・・・
・・


 この世界の魔法は一輪、二輪という名の元、何を覚えるかは平等に定められている。
 故に自身以上の魔法輪を持つ者でなければ、初見殺しや訳が分からず倒されるという心配はないだろう。
 そんな世界の中でユニークリングは、唯一相手にとって未知の魔法を仕掛ける事が出来る隠し玉だ。
 だが、そのユニークリングで得た特性について、祭壇で教えてもらえるのはその名前だけ。
 あとは俺自身ががその名前を元に試行錯誤するしかない。

 俺の"制御"で出来る事は、射出された魔法の操作、サーチの効果範囲の操作、そしてエンハンスの出力の操作である。

 射出された魔法の操作については毎日練習し、ある程度はどんな方向からでも狙った方へ当てる事が出来るようになった。

 そしてエンハンス、大雑把に出力を変える事が前から出来る。
 大雑把な部分をよりきめ細かい指定は出来ないだろうか?
 例えば指一本だけ出力をあげ、指で対象を貫いたり出来ないだろうか?

 そう考えてからはその練習に時間を費やした。

・・・
・・


 その練習はまだ完ぺきではない……だけど今! やるしかない!!
 俺は自身の指5本に意識を集中した。
 見極めろ……当たる瞬間……出力を3……いや4にする……ッ!

――チュドンッ!! 

 シャドウブラストは俺の指に当たり、大爆発を引き起こした。

「ふふ。他愛もない。数百年前に対峙した勇者候補とやらのがまだ強かったのう」

 フォルチナは完全に今ので俺が死んだと思っていた。
 その一瞬の隙を見逃さない……!
 俺は足の指先の出力を上げ、一瞬でフォルチナに詰め寄った。
 そして、右手の指を出力5にし、手刀の形を取り、そのまま胸部を貫いた。

「が……! な、なんじゃと……!」

 フォルチナは胸部に貫通した俺の腕を引き抜き、膝をついた。

「はぁ……はぁ……」

 出力を上げ過ぎたせいなのか、腕と足に感覚が無い。
 シャドウブラストの爆発にも多少巻き込まれてしまっている事もあり、
 俺はもう動ける状態では無い……。

 これで倒れてくれ……! 頼む……ッ!

「これを使う事になろうとはな……」

 そういってフォルチナは右腕の魔法輪に触れた。
 なんとフォルチナには右腕にも魔法輪があったのだ。
 
「十輪・リジェネレーション」

 フォルチナがそう詠唱すると、全身が一気に光始め、
 全ての傷を完治してしまった。

 絶望的な状況……十輪……俺も覚えられたのだろうか……。
 くそ、こんな所で……ごめん、皆……。

 そんな事を思いながら、完全に意識を失ってしまった。

・・・
・・
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

地球からきた転生者の殺し方 =ハーレム要員の女の子を一人ずつ寝取っていきます

三浦裕
ファンタジー
「地球人てどーしてすぐ転生してくんの!? いや転生してもいいけどうちの世界にはこないで欲しいわけ、迷惑だから。いや最悪きてもいいけどうちの国には手をださんで欲しいわけ、滅ぶから。まじ迷惑してます」  地球から来た転生者に散々苦しめられたオークの女王オ・ルナは憤慨していた。必ずやあのくそ生意気な地球人どもに目にものみせてくれようと。だが―― 「しっかし地球人超つえーからのう……なんなのあの針がバカになった体重計みたいなステータス。バックに女神でもついてんの? 勝てん勝てん」  地球人は殺りたいが、しかし地球人強すぎる。悩んだオ・ルナはある妙案を思いつく。 「地球人は地球人に殺らせたろ。むっふっふ。わらわってばまじ策士」  オ・ルナは唯一知り合いの地球人、カトー・モトキにクエストを発注する。  地球からきた転生者を、オークの国にあだなす前に殺ってくれ。 「報酬は……そうじゃのう、一人地球人を殺すたび、わらわにエ、エッチなことしてよいぞ……?」  カトーはその提案に乗る。 「任せとけ、転生者を殺すなんて簡単だ――あいつはハーレム要員の女を寝取られると、勝手に力を失って弱る」 毎日更新してます。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...