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第四章 中央都市編
45話 買い物
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「いらっしゃいませ。何にしますか?」
「うーん……」
店内に入るとテーブルへと案内され、メニューを渡された。
商品名を見ても、それがどういった物なのかさっぱりである……。
「すいません、甘くて冷たい菓子のような物はありますか?」
「それならこれがおススメです。特産の甘い芋を使用したお餅です。あまくてひんやし、もちもちしてて好評ですよ!」
「じゃぁそれ二つとお茶を二つ下さい!」
「ありがとうございます!」
この世界に来て一つ思った事は、食に関しては結構美味いものがあるなと言う事だ。
「お待たせしました!」
「フィアンさん! とても美味しそうです!」
二人でスイーツを目の前にテンションが上がっていた。
・・・
「物凄く美味しかったです! お芋ってこんなに甘くなるんですね。もちもちしてて初めての食感でしたし、噛むたびに甘味が口に広がってそこにお茶をくいっとのむ事で口の中がリセット! 次の一口がまた新鮮でした! 最強の組み合わせですね……!」
「あはは。喜んでもらえて嬉しいよ」
デザートの名前はジャーガ。味と見た目はさつまいものきんとんに似ていたが、それをよりもちもちさせた感じだった。
ひそかに俺は瘴気の森でとれる果実を売れば儲けられるのではないかと思っていた。
だが、クオリティの高い菓子を食べてそれではダメだと分かった。
果実を加工してクオリティの高い物をしなければ……!
「夕方まで少し時間があるから、鍛冶屋に寄って行かないか? 良い籠手があったら買っておきたいんだ」
魔装魂を纏っているとはいえ、ガードをする際に、防具をつけているかどうかで大きな差がある。
左手で攻撃を受け流せるようになれば戦いの幅も広がるだろう。
「分かりました行きましょう!」
ルーネは俺の言葉に快諾し、そのまま武具店へと向かった。
・・・
服飾や食事処がまとまっていたエリアから移動し、冒険者向けの装備店や鍛冶屋がひしめくエリアへと来た。
先程までは華やかな服を纏う人々が多かったが、この場所は戦闘向けの鎧や武器を身に着けている人ばかりである。
ここはまた違う活気で溢れており、わくわくする雰囲気だ。
早速、気になった鍛冶屋に入ってみる事にした。
「すいません」
「いらっしゃい。って何だ子供か! こんな所危ないから帰りなさい」
「何言ってるんですか! フィアンさんは凄く強いんですよ!」
ルーネは咄嗟に反論してくれたが、
「そっちこそ何を言ってるんだ。お遊びには付き合えないよ!」
と取り合ってくれなかった。
しかし、言われてみれば普通かも知れない。
剣や斧が立てかけられており、子供が触れると危ないのには間違いない。
仕方がない。ここは一度出直そう。
「すいません、失礼いたしました」
そう言って鍛冶屋から出ようとすると……
「おいタロウ! こんなに闘気を放っている客を帰すのか? もっと見る目を鍛えやがれ」
「あ、おやじ……」
奥で刀を打っていたドワーフのおじさんがこちらへと向かってきた。
「すまねえ、うちの奴が失礼な事を言った。もうちょっとこっちに来て顔を見せてくれないか」
「え? はい」
そういうとおじさんはこちらをじっと見た。
その瞬間、ぶわっと風が顔に当たった感覚になった。どうやらおじさんの闘気に当てられたようだ。
「ほう……底が全く見えぬ。俺が底が見えねえってのは初めてだ……」
「あの、おじさんは一体……」
「まぁ細かい事は気にするな。俺の目は相手の闘気と魔力の質・量を見るのに特化していてな……。ところで、背中に付けている剣は一体なんだ? 少しづつだが、闘気が吸われているぞ」
これはシャドウノヴァだと思っていた……だが、今となっては分からない。
「シャドウノヴァだと思ってたんですけど、どうやら違うみたいで……」
そう言いながら俺は剣を鞘から抜きテーブルに置いた。
「初めて見る剣だな……魔装具の一種には間違いないだろう」
そして鞘と剣を見て、
「なるほど、その鞘で吸われる闘気を抑止しているのだな。少し貸して見な。調整してやろう」
と言った。
そしておじさんに鞘を手渡すと、奥の作業場に戻り鞘を工具で弄っていた。
「これで剣を入れて見ろ」
言われるがままに剣を鞘に戻すと、先ほどより入れやすくなっており、闘気の吸われる量が減っている気がする。
いや、それどころか……
「闘気が全く吸われないぞ……!」
「素材は最高だが素人が作ったんだろう! だが出来は良いから調整で済んだぞ」
「これは凄い! いくらですか?」
「いいもん見せてもらった御礼だ! 無料でよい」
そう言われ、お言葉に甘えさせてもらった。
だが、今日は籠手を探すのがメインだ。
おじさんに籠手はあるか確認すると……。
「籠手か。うちで最高の品はこれだな」
・風切の籠手
籠手に闘気を溜めてガードした際に弱い風魔法なら打ち消す。
「最高の品!? いや、もう少し普通の物でいいよ……!」
このおじさんが作り出した最高の品……多分、手が出せる値段ではない。
「ハッキリ言うと俺は客を選ぶ。主に闘気に装備が見合っているかどうかを見るんだ。しかし悔しいが、今出せるうちの最高の品であるこの装備も君には全然見合わない……だが良ければ装備して欲しい」
そう言って籠手は目の前に出された。
「ちなみに価格は……?」
「赤1紫5じゃ」
つまり150万円程……変えない額では無いが……
そうやって悩もうとした瞬間、タロウがびっくりした表情で、
「おやじ! これは赤20だろ? さっきの客にそう言ったじゃねーか!!」
とおじさんを問い詰めた。
だが、おじさんは無表情のまま、
「あんなゴミみたいな貴族に売る気はなかったからな。倍の価格で提示したまでだ」
つまり貴族には2000万円で提示したが本来の価格は1000万円……そして俺に提示された額は150万円……!
「なら赤10で売れよ……赤1紫5って……」
タロウは納得していない様子だ。
「売りたい奴に売る。それが俺の方針だ! まぁこの価格で買っていただけるかはこのお客次第だがな」
これはこの人たちの演技か? 安く思わせるセールストークなのか?!
だが、武具からは間違いなく一級品のオーラを漂わせている。
「一瞬だけ待ってくれ!」
俺はそう言って店を飛び出し、デバシーでネビアに相談をした。
「買った方が良いですよ! 風魔法が無効化できるなんてかなり便利ですよ!」
「しかし価格が……」
「フィアン、前に言いましたよね? 生きて稼げって! 買っておきましょう!」
「そう……だな! てかこの鍛冶屋まじでいい店だと思う。ネビアも何か新調するときはここが良いぞ!」
そうして決心がついた俺は鍛冶屋に戻り、
「おじさん! 売ってくれ!」
と魂片を出した。
「おう! じゃぁサイズを合わせるからここに来てくれ」
そう言って俺の身体に合わせ、装着させてくれた。
「これでよし、どうだ? 違和感は無いか?」
「うん、凄くフィットしてる。ありがとうおじさん!」
そうして俺は店を後にした。
気がつけば夕方になっている。
少し急ぎ足で戻ろうとしたところ、後ろから
「おい待て!」
と声がした。
「君は……」
振り返るとそこに居たのはタロウだった。
「お前みたいな子供にその一級品を……しかも格安で売るなんて納得できない。返してもらう」
その台詞に俺とルーネは顔を見合わせた。
「納得できないならおじさんに言いなよ。俺は言い値で買っただけだ」
タロウはおもむろに剣を取り出した。
「うるさい! 力ずくで奪いかえ――ッ」
タロウが言葉を言いきる前に、一瞬で詰め寄り剣を奪い取った。
「なんだ? この剣も売ってくれるのか?」
俺は剣をタロウの首に突き立てながらそう言った。
「ひ……ひい。そうです。その剣はおまけであげますう……!」
「そうか! ありがとなタロウさん!」
そう言って俺とルーネはへたりこむタロウを放って、集合場所へと向かった。
・・・
「うーん……」
店内に入るとテーブルへと案内され、メニューを渡された。
商品名を見ても、それがどういった物なのかさっぱりである……。
「すいません、甘くて冷たい菓子のような物はありますか?」
「それならこれがおススメです。特産の甘い芋を使用したお餅です。あまくてひんやし、もちもちしてて好評ですよ!」
「じゃぁそれ二つとお茶を二つ下さい!」
「ありがとうございます!」
この世界に来て一つ思った事は、食に関しては結構美味いものがあるなと言う事だ。
「お待たせしました!」
「フィアンさん! とても美味しそうです!」
二人でスイーツを目の前にテンションが上がっていた。
・・・
「物凄く美味しかったです! お芋ってこんなに甘くなるんですね。もちもちしてて初めての食感でしたし、噛むたびに甘味が口に広がってそこにお茶をくいっとのむ事で口の中がリセット! 次の一口がまた新鮮でした! 最強の組み合わせですね……!」
「あはは。喜んでもらえて嬉しいよ」
デザートの名前はジャーガ。味と見た目はさつまいものきんとんに似ていたが、それをよりもちもちさせた感じだった。
ひそかに俺は瘴気の森でとれる果実を売れば儲けられるのではないかと思っていた。
だが、クオリティの高い菓子を食べてそれではダメだと分かった。
果実を加工してクオリティの高い物をしなければ……!
「夕方まで少し時間があるから、鍛冶屋に寄って行かないか? 良い籠手があったら買っておきたいんだ」
魔装魂を纏っているとはいえ、ガードをする際に、防具をつけているかどうかで大きな差がある。
左手で攻撃を受け流せるようになれば戦いの幅も広がるだろう。
「分かりました行きましょう!」
ルーネは俺の言葉に快諾し、そのまま武具店へと向かった。
・・・
服飾や食事処がまとまっていたエリアから移動し、冒険者向けの装備店や鍛冶屋がひしめくエリアへと来た。
先程までは華やかな服を纏う人々が多かったが、この場所は戦闘向けの鎧や武器を身に着けている人ばかりである。
ここはまた違う活気で溢れており、わくわくする雰囲気だ。
早速、気になった鍛冶屋に入ってみる事にした。
「すいません」
「いらっしゃい。って何だ子供か! こんな所危ないから帰りなさい」
「何言ってるんですか! フィアンさんは凄く強いんですよ!」
ルーネは咄嗟に反論してくれたが、
「そっちこそ何を言ってるんだ。お遊びには付き合えないよ!」
と取り合ってくれなかった。
しかし、言われてみれば普通かも知れない。
剣や斧が立てかけられており、子供が触れると危ないのには間違いない。
仕方がない。ここは一度出直そう。
「すいません、失礼いたしました」
そう言って鍛冶屋から出ようとすると……
「おいタロウ! こんなに闘気を放っている客を帰すのか? もっと見る目を鍛えやがれ」
「あ、おやじ……」
奥で刀を打っていたドワーフのおじさんがこちらへと向かってきた。
「すまねえ、うちの奴が失礼な事を言った。もうちょっとこっちに来て顔を見せてくれないか」
「え? はい」
そういうとおじさんはこちらをじっと見た。
その瞬間、ぶわっと風が顔に当たった感覚になった。どうやらおじさんの闘気に当てられたようだ。
「ほう……底が全く見えぬ。俺が底が見えねえってのは初めてだ……」
「あの、おじさんは一体……」
「まぁ細かい事は気にするな。俺の目は相手の闘気と魔力の質・量を見るのに特化していてな……。ところで、背中に付けている剣は一体なんだ? 少しづつだが、闘気が吸われているぞ」
これはシャドウノヴァだと思っていた……だが、今となっては分からない。
「シャドウノヴァだと思ってたんですけど、どうやら違うみたいで……」
そう言いながら俺は剣を鞘から抜きテーブルに置いた。
「初めて見る剣だな……魔装具の一種には間違いないだろう」
そして鞘と剣を見て、
「なるほど、その鞘で吸われる闘気を抑止しているのだな。少し貸して見な。調整してやろう」
と言った。
そしておじさんに鞘を手渡すと、奥の作業場に戻り鞘を工具で弄っていた。
「これで剣を入れて見ろ」
言われるがままに剣を鞘に戻すと、先ほどより入れやすくなっており、闘気の吸われる量が減っている気がする。
いや、それどころか……
「闘気が全く吸われないぞ……!」
「素材は最高だが素人が作ったんだろう! だが出来は良いから調整で済んだぞ」
「これは凄い! いくらですか?」
「いいもん見せてもらった御礼だ! 無料でよい」
そう言われ、お言葉に甘えさせてもらった。
だが、今日は籠手を探すのがメインだ。
おじさんに籠手はあるか確認すると……。
「籠手か。うちで最高の品はこれだな」
・風切の籠手
籠手に闘気を溜めてガードした際に弱い風魔法なら打ち消す。
「最高の品!? いや、もう少し普通の物でいいよ……!」
このおじさんが作り出した最高の品……多分、手が出せる値段ではない。
「ハッキリ言うと俺は客を選ぶ。主に闘気に装備が見合っているかどうかを見るんだ。しかし悔しいが、今出せるうちの最高の品であるこの装備も君には全然見合わない……だが良ければ装備して欲しい」
そう言って籠手は目の前に出された。
「ちなみに価格は……?」
「赤1紫5じゃ」
つまり150万円程……変えない額では無いが……
そうやって悩もうとした瞬間、タロウがびっくりした表情で、
「おやじ! これは赤20だろ? さっきの客にそう言ったじゃねーか!!」
とおじさんを問い詰めた。
だが、おじさんは無表情のまま、
「あんなゴミみたいな貴族に売る気はなかったからな。倍の価格で提示したまでだ」
つまり貴族には2000万円で提示したが本来の価格は1000万円……そして俺に提示された額は150万円……!
「なら赤10で売れよ……赤1紫5って……」
タロウは納得していない様子だ。
「売りたい奴に売る。それが俺の方針だ! まぁこの価格で買っていただけるかはこのお客次第だがな」
これはこの人たちの演技か? 安く思わせるセールストークなのか?!
だが、武具からは間違いなく一級品のオーラを漂わせている。
「一瞬だけ待ってくれ!」
俺はそう言って店を飛び出し、デバシーでネビアに相談をした。
「買った方が良いですよ! 風魔法が無効化できるなんてかなり便利ですよ!」
「しかし価格が……」
「フィアン、前に言いましたよね? 生きて稼げって! 買っておきましょう!」
「そう……だな! てかこの鍛冶屋まじでいい店だと思う。ネビアも何か新調するときはここが良いぞ!」
そうして決心がついた俺は鍛冶屋に戻り、
「おじさん! 売ってくれ!」
と魂片を出した。
「おう! じゃぁサイズを合わせるからここに来てくれ」
そう言って俺の身体に合わせ、装着させてくれた。
「これでよし、どうだ? 違和感は無いか?」
「うん、凄くフィットしてる。ありがとうおじさん!」
そうして俺は店を後にした。
気がつけば夕方になっている。
少し急ぎ足で戻ろうとしたところ、後ろから
「おい待て!」
と声がした。
「君は……」
振り返るとそこに居たのはタロウだった。
「お前みたいな子供にその一級品を……しかも格安で売るなんて納得できない。返してもらう」
その台詞に俺とルーネは顔を見合わせた。
「納得できないならおじさんに言いなよ。俺は言い値で買っただけだ」
タロウはおもむろに剣を取り出した。
「うるさい! 力ずくで奪いかえ――ッ」
タロウが言葉を言いきる前に、一瞬で詰め寄り剣を奪い取った。
「なんだ? この剣も売ってくれるのか?」
俺は剣をタロウの首に突き立てながらそう言った。
「ひ……ひい。そうです。その剣はおまけであげますう……!」
「そうか! ありがとなタロウさん!」
そう言って俺とルーネはへたりこむタロウを放って、集合場所へと向かった。
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