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俺のゲームだけバグってるんだが
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ある日、この作品の主人公である神崎 和貴はとても上機嫌だった。
何故ならば、最近社会現象と言われるほど流行っているオンラインゲーム、異世界転生記一通称“異世転”一を手に入れたからだ。
名前は少しばかりあれだが、内容は誰もが驚かされる素晴らしい作品なのだ。
それもそのはず。
意識のみをゲームの中に入れ込み、完全なる擬似異世界転生を可能にし、尚且つゲーム内の異世界で勇者のみならず、ギルド嬢やアイテム屋、ニートにまでなれるのだ。
このゲームでなれないものは悪役一魔王は当然のこと、魔物や山賊、盗賊など一である。
これは悪人ならではの魅力というものにプレイヤーが取り付かれないようにするためだとかなんとか。
そんな事は和貴にとってはどうでもよく、さっさと帰って勇者になろうとしていた。
口笛を鳴らし、普段誰にも挨拶しないくせに元気よくすれ違う人々に挨拶をし、スキップで家に帰った和貴は、手洗いうがいをする前にゲームを起動した。
ゲーム機本体が起動音を鳴らし始め、テレビにメニュー画面が映し出される。
和貴は、元々挿入されていたソフトを取り出して異世転のディスクを本体に入れると、アプリケーションのインストールが始まるのを確認してから手洗いうがいをした。
「やっと勇者になれる! 勇者ってかっこいいしなってみたかったんだよなぁ。あ、どのジョブになろうかな?」
そんな独り言を呟きつつインストールを待ち、インストールが終わりそうになってきた時、異世転専用のバンダナを頭にセットした。
異世転では、脳からの電気信号をバンダナで受け取り、ゲーム内キャラを動かすという仕組みになっており、視覚までもがゲーム内キャラと同期する仕組みまでは明かされていない。
インストールが終わり、異世転のスタート画面が開かれる。
『スタート○』とテレビの画面に映し出されているのを確認し、和貴は○ボタンを押した。
すると、『※バンダナを装着していますか? はい いいえ』と表示されたので迷うことなく『はい』を選択した。
次に表示されたのは『横に寝転がり△ボタンを押してください』という文だった。
和貴はしっかり指示に従い△ボタンを押すと、視界が急に暗くなり意識を失った……
目が覚めると、キャラ設定画面がある、はずだった。
本来ならば、三人称視点でキャラメイク出来るはずなのだ。
それなのに、和貴の目に映るのはたくさんの忙しそうな黒衣だった。
自分の手を見ると真っ黒になっていることに驚いた和貴は、理解が出来ずに茫然と立ち尽くしていた。
「え? 俺の勇者生活は?」
そんな嘆きは誰にも届かず1人の黒衣から声をかけられた。
正しくは叱られた。
「おい! そこのお前! 早く仕事しろ!」
「え?」
「またハバナ草原のグリーンスライム達が全滅したみたいだからとっととリスポーンさせてこい!」
「え?」
「なんだよこいつ。あ、そこのお前! グリーンスライムの件頼んだ!」
「了解!」
和貴の頭の中には『?』しかなかった。
和貴の記憶が正しければハバナ草原はチュートリアルの次に訪れるべき草原のはずだ。
このゲームは一点にプレイヤーが集中してしまうとゲームが成り立たなくなるため、いくつものサーバーに意識が自動配分される仕組みらしいのだが、それでも少しばかり他のゲームよりも敵キャラのリスポーンが遅めらしい。
和貴は、勿論その情報も知っており、先程の黒衣達の言葉を聞いてひとつの仮説を立てた。
そう。
自分は異世転の裏方の世界に入ってしまったのではないか、と。
和貴はその仮説を立てた後、改めてほかの黒衣達の会話を聞いてみた。
「チーターが出たぞ!」
「またかよ」
「IDは?」
「436696kpだ」
「ユーザー名:卍卍特定。垢BANする」
「了解」
「もうこれで何人目だよ」
「63人目」
「チーター騒ぎが収まったところ悪いが今度はマカシャル大陸の魔王が倒されたから補給してくれとのことだ」
「あそこの魔王弱いんだよなぁ」
「次にいく魔王の準備は出来てるみたいだ。送るぞ?」
「おう」
聞いて、和貴はショックを受けた。
こんな舞台裏見たくなかった……、と。
「さっきからお前何突っ立ってんだよ」
未だ茫然と立ち尽くす和貴に向かって、先程和貴を叱った黒衣が近づいた。
和貴はその黒衣に気づき、すぐさま質問した。
「どうしたら本編始まるの」
その一言でその場にいた黒衣達が一斉に和貴の方を向いた。
「お前……まさか……プレイヤー?」
和貴の質問に対する回答は、和貴に対する問いかけだった。
和貴は素直に頷く。
「ここ何処、これ何、どうしたら俺の勇者生活始まるの」
「ちょーっとだけ待っててくれ」
黒衣は和貴にそう言い残してどこかへ走り去ってしまった。
「これ、マジどうすんの」
和貴は独り言で愚痴りつつ、対処法を考え始めた。
そこであることに気づいた。
このゲームでは、メニューボタンがあり、そこからログアウトすれば元の現実に戻るというシステムだということに。
早速メニューボタンを探すものの本来メニューボタンがあるはずの左下には何も表示されていなかった。
『他のところにあるかもしれない』と考えた和貴は辺りを見回すが視界に映るのは忙しなく働き続ける黒衣のみ。
「詰んだ」
和貴に言えるのはその一言だけだった。
完全に諦めそうになったその時、先程の黒衣が戻ってきた。
「はぁ……はぁ……最近の……アップデートで……塞がる予定だった……とこが……あるんだけど……まだ……本編との間に……亀裂が残ったままだった……から……そこから行ける……かも……」
ゼーハーゼーハー言いながら戻ってきた黒衣は息を切らしながら戻れるかもしれない方法を教えてくれた。
「頼む。そこに連れてってくれ」
「はぁ……はぁ……任せ……とけ……」
黒衣はそう言うと早速和貴を亀裂の場所まで連れていってくれた。
そこには確かに亀裂があった。
そこからは他のプレイヤー達がクラム山脈でクロークドラゴンと戦っている姿が見えた。
やっと勇者生活を始められる。
そんな一心で亀裂の中に入り込もうとした和貴だった、が……
「痛っ」
「無理……か……」
見えない壁が亀裂のところにあり、亀裂の中へと入れなかった。
「今度こそ詰んだ」
「いや、この方法は使いたく無かったが……最終手段だ」
和貴は、詰んだと言っていたにも関わらず『もう最終手段なのかよ』というツッコミを心の中でした。
意識だけと言えど、意識があればそこに心は生まれるものなのだ。
「すまないがこいつを1度きりの緊急モンスターとしてマップ内に送り付けれねぇか?」
「可能だが、それはシステムに悪影響を与えかねない」
「クソっ……だが仕方ない。ここにプレイヤーがいる方がまずい。頼んだ」
「了解。リスポーンは無しでいいのか?」
「敵としてのリスポーンは無しだが、リスポーンは街中に設定してくれ。出来るか?」
「頑張ってみる。名前は……シャドウでいいか」
「おう。頼んだぞ」
そんな黒衣達の会話を聞いて、和貴はひたすら願うことしか出来なかった。
30分程経ち、和貴が空腹を感じ始めたとき、和貴の耳に朗報が入った。
「よし。設定完了」
「よぉし。このサーバーだけの特殊緊急イベントだ!」
黒衣2人の言葉を聞いた和貴は2人に駆け寄った。
「これで元に戻れる!?」
「あぁ。その前に特殊緊急イベントの敵キャラとしてプレイヤーと戦ってもらうがな」
「てことで、『適用』っと」
システムをいじっていたらしい黒衣の発言と同時、和貴の見た目は禍々しいオーラを放ったプレイヤーの影のような姿へと変わった。
姿とともに意識が封じ込められ始めるのを感じた和貴は焦り、黒衣に聞いた。
「意識が……朦朧としてきた……けど……大丈夫なんだよな?」
「敵キャラらしく振舞ってもらわなきゃならないんでね」
「てことで行ってらっしゃい」
和貴が最後に耳にしたのはそれだけだった。
身体が勝手に動いているのを感じ、目を覚ますと一正しくは意識を取り戻すと一そこには勇者達の姿をしたプレイヤーが沢山いた。
プレイヤー達は和貴を取り囲んで攻撃しようとしていた。
だが和貴の意志とは関係なく、和貴は他のプレイヤー達に攻撃を繰り出した。
流石は特殊緊急イベント。
1度の攻撃力が半端じゃない。
攻撃が当たったプレイヤー達の体力は半分近くまで減っていた。
和貴が攻撃した後すぐの攻撃出来ない時間を狙って、他のプレイヤーが和貴に襲いかかった。
が、纏っている禍々しいオーラが和貴を守るように攻撃を繰り出した。
和貴は内心思った。
『何この強敵』
それを思ったのは和貴だけではないようで、他のプレイヤー達も次々言い放った。
「こいつ強すぎだろ」
「いいアイテム落としてくれるんだろうな?」
「どうやって倒せっていうんだよ」
剣士や格闘家、騎士のプレイヤーがそんな事を言っていると、女性が前に出てきた。
その女性を見るやいなや、プレイヤー達だけでなく和貴も歓声をあげた。
実際は和貴は心の中でしか歓声をあげられなかったのだが……
彼らが歓声をあげるのも無理はない。
何故ならば、その女性こそ……
「神聖なるハイプリーストの中でも最強と言われる白井 聖美さんだ! 勝ったも同然だ!」
このゲームがリリースされてから、各ジョブで名前を挙げている人達がおり、その中の1人である『ユーザー名:白井 聖美』であるからだ。
「Sainte lumière de purification」
彼女の放った最上位聖属性魔法の光が和貴の身を包む。
和貴は意識が薄れていくのを感じた。
あぁ、今度こそほんとに勇者生活が始まるんだ……
そんな思いとともに、強敵であったシャドウは浄化され、消滅した。
その場に残されたのは『ERROR』の称号を獲得したプレイヤー達だけだった。
和貴が目を覚ますとキャラメイクの画面が映し出された。
やっと……やっと勇者生活ができる!
そう思った和貴だったが、キャラメイクをせずにメニューボタンからログアウトした。
「その前に飯食わねば耐えられん……」
空腹に耐えかねた和貴は異世転を買う前に購入しておいたコンビニのおにぎりを食べるのであった……
何故ならば、最近社会現象と言われるほど流行っているオンラインゲーム、異世界転生記一通称“異世転”一を手に入れたからだ。
名前は少しばかりあれだが、内容は誰もが驚かされる素晴らしい作品なのだ。
それもそのはず。
意識のみをゲームの中に入れ込み、完全なる擬似異世界転生を可能にし、尚且つゲーム内の異世界で勇者のみならず、ギルド嬢やアイテム屋、ニートにまでなれるのだ。
このゲームでなれないものは悪役一魔王は当然のこと、魔物や山賊、盗賊など一である。
これは悪人ならではの魅力というものにプレイヤーが取り付かれないようにするためだとかなんとか。
そんな事は和貴にとってはどうでもよく、さっさと帰って勇者になろうとしていた。
口笛を鳴らし、普段誰にも挨拶しないくせに元気よくすれ違う人々に挨拶をし、スキップで家に帰った和貴は、手洗いうがいをする前にゲームを起動した。
ゲーム機本体が起動音を鳴らし始め、テレビにメニュー画面が映し出される。
和貴は、元々挿入されていたソフトを取り出して異世転のディスクを本体に入れると、アプリケーションのインストールが始まるのを確認してから手洗いうがいをした。
「やっと勇者になれる! 勇者ってかっこいいしなってみたかったんだよなぁ。あ、どのジョブになろうかな?」
そんな独り言を呟きつつインストールを待ち、インストールが終わりそうになってきた時、異世転専用のバンダナを頭にセットした。
異世転では、脳からの電気信号をバンダナで受け取り、ゲーム内キャラを動かすという仕組みになっており、視覚までもがゲーム内キャラと同期する仕組みまでは明かされていない。
インストールが終わり、異世転のスタート画面が開かれる。
『スタート○』とテレビの画面に映し出されているのを確認し、和貴は○ボタンを押した。
すると、『※バンダナを装着していますか? はい いいえ』と表示されたので迷うことなく『はい』を選択した。
次に表示されたのは『横に寝転がり△ボタンを押してください』という文だった。
和貴はしっかり指示に従い△ボタンを押すと、視界が急に暗くなり意識を失った……
目が覚めると、キャラ設定画面がある、はずだった。
本来ならば、三人称視点でキャラメイク出来るはずなのだ。
それなのに、和貴の目に映るのはたくさんの忙しそうな黒衣だった。
自分の手を見ると真っ黒になっていることに驚いた和貴は、理解が出来ずに茫然と立ち尽くしていた。
「え? 俺の勇者生活は?」
そんな嘆きは誰にも届かず1人の黒衣から声をかけられた。
正しくは叱られた。
「おい! そこのお前! 早く仕事しろ!」
「え?」
「またハバナ草原のグリーンスライム達が全滅したみたいだからとっととリスポーンさせてこい!」
「え?」
「なんだよこいつ。あ、そこのお前! グリーンスライムの件頼んだ!」
「了解!」
和貴の頭の中には『?』しかなかった。
和貴の記憶が正しければハバナ草原はチュートリアルの次に訪れるべき草原のはずだ。
このゲームは一点にプレイヤーが集中してしまうとゲームが成り立たなくなるため、いくつものサーバーに意識が自動配分される仕組みらしいのだが、それでも少しばかり他のゲームよりも敵キャラのリスポーンが遅めらしい。
和貴は、勿論その情報も知っており、先程の黒衣達の言葉を聞いてひとつの仮説を立てた。
そう。
自分は異世転の裏方の世界に入ってしまったのではないか、と。
和貴はその仮説を立てた後、改めてほかの黒衣達の会話を聞いてみた。
「チーターが出たぞ!」
「またかよ」
「IDは?」
「436696kpだ」
「ユーザー名:卍卍特定。垢BANする」
「了解」
「もうこれで何人目だよ」
「63人目」
「チーター騒ぎが収まったところ悪いが今度はマカシャル大陸の魔王が倒されたから補給してくれとのことだ」
「あそこの魔王弱いんだよなぁ」
「次にいく魔王の準備は出来てるみたいだ。送るぞ?」
「おう」
聞いて、和貴はショックを受けた。
こんな舞台裏見たくなかった……、と。
「さっきからお前何突っ立ってんだよ」
未だ茫然と立ち尽くす和貴に向かって、先程和貴を叱った黒衣が近づいた。
和貴はその黒衣に気づき、すぐさま質問した。
「どうしたら本編始まるの」
その一言でその場にいた黒衣達が一斉に和貴の方を向いた。
「お前……まさか……プレイヤー?」
和貴の質問に対する回答は、和貴に対する問いかけだった。
和貴は素直に頷く。
「ここ何処、これ何、どうしたら俺の勇者生活始まるの」
「ちょーっとだけ待っててくれ」
黒衣は和貴にそう言い残してどこかへ走り去ってしまった。
「これ、マジどうすんの」
和貴は独り言で愚痴りつつ、対処法を考え始めた。
そこであることに気づいた。
このゲームでは、メニューボタンがあり、そこからログアウトすれば元の現実に戻るというシステムだということに。
早速メニューボタンを探すものの本来メニューボタンがあるはずの左下には何も表示されていなかった。
『他のところにあるかもしれない』と考えた和貴は辺りを見回すが視界に映るのは忙しなく働き続ける黒衣のみ。
「詰んだ」
和貴に言えるのはその一言だけだった。
完全に諦めそうになったその時、先程の黒衣が戻ってきた。
「はぁ……はぁ……最近の……アップデートで……塞がる予定だった……とこが……あるんだけど……まだ……本編との間に……亀裂が残ったままだった……から……そこから行ける……かも……」
ゼーハーゼーハー言いながら戻ってきた黒衣は息を切らしながら戻れるかもしれない方法を教えてくれた。
「頼む。そこに連れてってくれ」
「はぁ……はぁ……任せ……とけ……」
黒衣はそう言うと早速和貴を亀裂の場所まで連れていってくれた。
そこには確かに亀裂があった。
そこからは他のプレイヤー達がクラム山脈でクロークドラゴンと戦っている姿が見えた。
やっと勇者生活を始められる。
そんな一心で亀裂の中に入り込もうとした和貴だった、が……
「痛っ」
「無理……か……」
見えない壁が亀裂のところにあり、亀裂の中へと入れなかった。
「今度こそ詰んだ」
「いや、この方法は使いたく無かったが……最終手段だ」
和貴は、詰んだと言っていたにも関わらず『もう最終手段なのかよ』というツッコミを心の中でした。
意識だけと言えど、意識があればそこに心は生まれるものなのだ。
「すまないがこいつを1度きりの緊急モンスターとしてマップ内に送り付けれねぇか?」
「可能だが、それはシステムに悪影響を与えかねない」
「クソっ……だが仕方ない。ここにプレイヤーがいる方がまずい。頼んだ」
「了解。リスポーンは無しでいいのか?」
「敵としてのリスポーンは無しだが、リスポーンは街中に設定してくれ。出来るか?」
「頑張ってみる。名前は……シャドウでいいか」
「おう。頼んだぞ」
そんな黒衣達の会話を聞いて、和貴はひたすら願うことしか出来なかった。
30分程経ち、和貴が空腹を感じ始めたとき、和貴の耳に朗報が入った。
「よし。設定完了」
「よぉし。このサーバーだけの特殊緊急イベントだ!」
黒衣2人の言葉を聞いた和貴は2人に駆け寄った。
「これで元に戻れる!?」
「あぁ。その前に特殊緊急イベントの敵キャラとしてプレイヤーと戦ってもらうがな」
「てことで、『適用』っと」
システムをいじっていたらしい黒衣の発言と同時、和貴の見た目は禍々しいオーラを放ったプレイヤーの影のような姿へと変わった。
姿とともに意識が封じ込められ始めるのを感じた和貴は焦り、黒衣に聞いた。
「意識が……朦朧としてきた……けど……大丈夫なんだよな?」
「敵キャラらしく振舞ってもらわなきゃならないんでね」
「てことで行ってらっしゃい」
和貴が最後に耳にしたのはそれだけだった。
身体が勝手に動いているのを感じ、目を覚ますと一正しくは意識を取り戻すと一そこには勇者達の姿をしたプレイヤーが沢山いた。
プレイヤー達は和貴を取り囲んで攻撃しようとしていた。
だが和貴の意志とは関係なく、和貴は他のプレイヤー達に攻撃を繰り出した。
流石は特殊緊急イベント。
1度の攻撃力が半端じゃない。
攻撃が当たったプレイヤー達の体力は半分近くまで減っていた。
和貴が攻撃した後すぐの攻撃出来ない時間を狙って、他のプレイヤーが和貴に襲いかかった。
が、纏っている禍々しいオーラが和貴を守るように攻撃を繰り出した。
和貴は内心思った。
『何この強敵』
それを思ったのは和貴だけではないようで、他のプレイヤー達も次々言い放った。
「こいつ強すぎだろ」
「いいアイテム落としてくれるんだろうな?」
「どうやって倒せっていうんだよ」
剣士や格闘家、騎士のプレイヤーがそんな事を言っていると、女性が前に出てきた。
その女性を見るやいなや、プレイヤー達だけでなく和貴も歓声をあげた。
実際は和貴は心の中でしか歓声をあげられなかったのだが……
彼らが歓声をあげるのも無理はない。
何故ならば、その女性こそ……
「神聖なるハイプリーストの中でも最強と言われる白井 聖美さんだ! 勝ったも同然だ!」
このゲームがリリースされてから、各ジョブで名前を挙げている人達がおり、その中の1人である『ユーザー名:白井 聖美』であるからだ。
「Sainte lumière de purification」
彼女の放った最上位聖属性魔法の光が和貴の身を包む。
和貴は意識が薄れていくのを感じた。
あぁ、今度こそほんとに勇者生活が始まるんだ……
そんな思いとともに、強敵であったシャドウは浄化され、消滅した。
その場に残されたのは『ERROR』の称号を獲得したプレイヤー達だけだった。
和貴が目を覚ますとキャラメイクの画面が映し出された。
やっと……やっと勇者生活ができる!
そう思った和貴だったが、キャラメイクをせずにメニューボタンからログアウトした。
「その前に飯食わねば耐えられん……」
空腹に耐えかねた和貴は異世転を買う前に購入しておいたコンビニのおにぎりを食べるのであった……
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