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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
209-2.同情に勝る義務
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「悪いな。他の奴らにはちっとばかり眠ってもらってる」
彼の姿を視認したと同時に至った結論。それを改めて突き付けられたユーグは顔を顰めながら後方へ下がり、相手と距離を取る。
それを更に詰めるべくエリアスが地面を蹴るも、直後に彼とユーグの間に氷の床が現れた。
瞬く間に凍結した足場。それは気を抜けば足を掬われてしまうであろう罠だ。
だがエリアスは躊躇うことなく氷の上へ踏み出した。
身を屈め、片膝をつきながら剣を構える。
突如現れた罠にも瞬時に対応し、体勢を安定させたまま次の一手に備える。
(まずい、悪手だったか……っ)
あまりにも戦い慣れしたその動きにユーグは僅かに狼狽える。
滑る床を利用して距離を詰めるその動きは通常時よりも更に加速する。ユーグが可能な限り距離を維持しようと後退するも、エリアスは難なく氷の床を渡り終え、ユーグの移動速度とは比にならない速さで接近する。
何とか接近を阻止しようとユーグは複数の魔法を同時に行使する。
水の砲撃とそれに纏わりつく雷、彼を取り囲むように生成される氷の矢、道の土台を変形させた土の槍。
だがそれらは悉く回避されていく。
感電狙いの攻撃は半身で躱し、降り注ぐ矢は身を屈めて潜り抜け、突き出した槍は飛び越えていく。
着実に詰められていく距離。そしてそれがエリアスの武器のリーチ内へ入り込んだと同時、彼は剣を振り上げた。
(こいつ……っ! 彼を巻き込むつもりか!?)
今のユーグはオリヴィエを横抱きにしている。それはエリアスが闇雲に剣を振るえばその攻撃はユーグよりも先にオリヴィエへ命中してしまうことに他ならない。
エリアスの目的がオリヴィエの奪還である事はユーグも悟っている。だからこそこの大胆な行動に動揺しているのだ。
敵が攻撃範囲に入ったことで焦ったのか、元より思慮が浅い人間なのか。相手の動きに自分の予測を超えるだけの意図があるのか。
次々と脳裏を過っては消える疑問。それの結論が出るよりも先にエリアスは更に相手の肝を冷やす行動を取る。
「フレイム・ヴェイル」
「く……っ」
短い呪文。直後、彼の武器は炎を帯びる。
更に増す脅威。それに怯んだユーグは氷の障壁を生み出すが、炎と氷の相性は最悪だ。
振り下ろされた剣が障壁へぶつかれば、それと同時に蒸気を放ちながら氷が消えていく。
そして銀色の刃と炎がユーグとオリヴィエへ襲い掛かった。
(……っ駄目だ。彼を傷付けるわけには――)
一刻を争う状況下。彼は咄嗟に氷の槍を放った。
「あ……っ」
魔法を放った瞬間、彼は自身の過ちに気付く。だがその頃にはその過ちを自ら対処する事が出来ないところまでやってきていた。
彼の姿を視認したと同時に至った結論。それを改めて突き付けられたユーグは顔を顰めながら後方へ下がり、相手と距離を取る。
それを更に詰めるべくエリアスが地面を蹴るも、直後に彼とユーグの間に氷の床が現れた。
瞬く間に凍結した足場。それは気を抜けば足を掬われてしまうであろう罠だ。
だがエリアスは躊躇うことなく氷の上へ踏み出した。
身を屈め、片膝をつきながら剣を構える。
突如現れた罠にも瞬時に対応し、体勢を安定させたまま次の一手に備える。
(まずい、悪手だったか……っ)
あまりにも戦い慣れしたその動きにユーグは僅かに狼狽える。
滑る床を利用して距離を詰めるその動きは通常時よりも更に加速する。ユーグが可能な限り距離を維持しようと後退するも、エリアスは難なく氷の床を渡り終え、ユーグの移動速度とは比にならない速さで接近する。
何とか接近を阻止しようとユーグは複数の魔法を同時に行使する。
水の砲撃とそれに纏わりつく雷、彼を取り囲むように生成される氷の矢、道の土台を変形させた土の槍。
だがそれらは悉く回避されていく。
感電狙いの攻撃は半身で躱し、降り注ぐ矢は身を屈めて潜り抜け、突き出した槍は飛び越えていく。
着実に詰められていく距離。そしてそれがエリアスの武器のリーチ内へ入り込んだと同時、彼は剣を振り上げた。
(こいつ……っ! 彼を巻き込むつもりか!?)
今のユーグはオリヴィエを横抱きにしている。それはエリアスが闇雲に剣を振るえばその攻撃はユーグよりも先にオリヴィエへ命中してしまうことに他ならない。
エリアスの目的がオリヴィエの奪還である事はユーグも悟っている。だからこそこの大胆な行動に動揺しているのだ。
敵が攻撃範囲に入ったことで焦ったのか、元より思慮が浅い人間なのか。相手の動きに自分の予測を超えるだけの意図があるのか。
次々と脳裏を過っては消える疑問。それの結論が出るよりも先にエリアスは更に相手の肝を冷やす行動を取る。
「フレイム・ヴェイル」
「く……っ」
短い呪文。直後、彼の武器は炎を帯びる。
更に増す脅威。それに怯んだユーグは氷の障壁を生み出すが、炎と氷の相性は最悪だ。
振り下ろされた剣が障壁へぶつかれば、それと同時に蒸気を放ちながら氷が消えていく。
そして銀色の刃と炎がユーグとオリヴィエへ襲い掛かった。
(……っ駄目だ。彼を傷付けるわけには――)
一刻を争う状況下。彼は咄嗟に氷の槍を放った。
「あ……っ」
魔法を放った瞬間、彼は自身の過ちに気付く。だがその頃にはその過ちを自ら対処する事が出来ないところまでやってきていた。
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