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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
209-1.同情に勝る義務
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オリヴィエを連れ戻すべくニュイへ派遣された魔導師達。その指揮を任されていた男――ユーグはオリヴィエを抱えながら踵を返す。
エリアスが自身の跡を追ってくることがないよう、一番近くに現れる曲がり角を次々と曲がっていく。
(彼が厄介な人物である事は日中の戦闘で経験している。一般市民を巻き込むことが出来ない以上、使える魔法には制限がある。無暗に相手をしていれば押し切られるのは間違いなくこちらだ)
圧倒的不利な状況下でまともに相手をする訳にはいかない。自分達の目的が果たらせたのならば特にだ。
真夜中の路地裏を駆け抜けながらユーグは腕の中で気を失うオリヴィエへ視線を落とす。
(彼の気持ちが理解できない訳ではない。だが……)
国の発展の為、オリヴィエを逃すことが出来ないという国家魔導師としての立場がユーグにはある。
だがそれを抜きにしても、オリヴィエはグロワールへ留まるべきだという考えが彼の中にはあった。
オリヴィエの体質は非常に稀だ。そこに目を付けるのは何も魔導師だけではない。
希少価値の高い物というのはいつだって誰からも狙われる。
高値で売れるから、自身の権威を示すことが出来るから、優越に浸ることが出来るから……。そんな欲に塗れた目的に振り回されるのは物だけではない。
オリヴィエのような存在を欲する者は数えきれない程いるだろう。彼にとって学院の外というのは危険が蔓延る世界なのだ。
それを考えればこそ、国の為にも彼自身の為にも、彼を連れ戻すべきだとユーグは考えていた。
多少手荒な手段を用いる事になったとしても。
窮屈さや不自由さを感じる事はあるだろうが、それも仕方のない事だ。
彼の特殊な才を見つけることが出来た国は運が良かったが、その才故に普通を手に入れられない本人にとっては運が悪かった。それだけの事。
(……それに、同情してやる余裕もない。一刻も早くグロワールへ戻らなければ――)
遠回りをしながらも先を急ぐユーグであったがその思考を遮ったのは背後から迫る気配だ。
「……っ!」
ユーグは咄嗟に振り返りながら近づく気配と自身との間に土の壁を生成する。
だが次の瞬間に、それは鈍い音を立てながら崩れる。
崩れる土塊から姿を見せるのは銀色の刃と赤い髪。
「焦って逃げる奴程、闇雲に曲がり角を使いたがるもん……ってな」
相手の心情を汲み、的確な判断を以て追いついたエリアスは口角を上げた。
エリアスが自身の跡を追ってくることがないよう、一番近くに現れる曲がり角を次々と曲がっていく。
(彼が厄介な人物である事は日中の戦闘で経験している。一般市民を巻き込むことが出来ない以上、使える魔法には制限がある。無暗に相手をしていれば押し切られるのは間違いなくこちらだ)
圧倒的不利な状況下でまともに相手をする訳にはいかない。自分達の目的が果たらせたのならば特にだ。
真夜中の路地裏を駆け抜けながらユーグは腕の中で気を失うオリヴィエへ視線を落とす。
(彼の気持ちが理解できない訳ではない。だが……)
国の発展の為、オリヴィエを逃すことが出来ないという国家魔導師としての立場がユーグにはある。
だがそれを抜きにしても、オリヴィエはグロワールへ留まるべきだという考えが彼の中にはあった。
オリヴィエの体質は非常に稀だ。そこに目を付けるのは何も魔導師だけではない。
希少価値の高い物というのはいつだって誰からも狙われる。
高値で売れるから、自身の権威を示すことが出来るから、優越に浸ることが出来るから……。そんな欲に塗れた目的に振り回されるのは物だけではない。
オリヴィエのような存在を欲する者は数えきれない程いるだろう。彼にとって学院の外というのは危険が蔓延る世界なのだ。
それを考えればこそ、国の為にも彼自身の為にも、彼を連れ戻すべきだとユーグは考えていた。
多少手荒な手段を用いる事になったとしても。
窮屈さや不自由さを感じる事はあるだろうが、それも仕方のない事だ。
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(……それに、同情してやる余裕もない。一刻も早くグロワールへ戻らなければ――)
遠回りをしながらも先を急ぐユーグであったがその思考を遮ったのは背後から迫る気配だ。
「……っ!」
ユーグは咄嗟に振り返りながら近づく気配と自身との間に土の壁を生成する。
だが次の瞬間に、それは鈍い音を立てながら崩れる。
崩れる土塊から姿を見せるのは銀色の刃と赤い髪。
「焦って逃げる奴程、闇雲に曲がり角を使いたがるもん……ってな」
相手の心情を汲み、的確な判断を以て追いついたエリアスは口角を上げた。
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