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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
206-2.暴走と躊躇い
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「が……っ!」
隙を見せたオリヴィエの鳩尾へ、主導者は己の拳を突き出す。
それは弱っていたオリヴィエの意識を的確に刈り取った。
オリヴィエは胃液を逆流させ、口から零しながらうつ伏せに倒れ込む。
「任務完了だ。オリオール卿に報告をしたらすぐグロワールへ戻ろう」
主導者がオリヴィエの体を抱き上げる。
そして仲間達を引き連れて移動を開始しながら、今後の予定について話し合う。
「学院の不審死事件も未だ相次いでいると聞く。早くそちらの助力へ――」
(学院……不審死……? 何の話だ……)
徐々に遠のく意識の中、オリヴィエの耳にも魔導師達の会話が耳に入る。
頭は上手く働かず、閉じていく瞼を持ち上げる事も、魔導師達の会話に口を挟む気力も残されてはいない。
だがそれでも嫌な予感がじわじわと広がっていくのを感じた。
(――ノア、レミ)
学院へ残した友の姿を思いながらオリヴィエは完全に意識を手放した。
***
クリスティーナ達は宿へ辿り着いた後、食事を終えて客室へ戻って来た。
ここ二日は夜中に取締局へ赴いてから就寝、日中に行動という生活であった為睡眠があまりとれておらず、クリスティーナは疲労を感じていた。
気掛かりなことは多くあれど、一先ずは疲労を取ってしまいたいという気持ちからクリスティーナはやや早い時間からベッドへ横になった。
暫くは物思いに耽っていたが、やがて疲労に負けた彼女は緩やかに眠りへと誘われていく。
主人が眠りについたのを確認してからリオとエリアスは見張りの順番を決めて交互に休息を取る事とした。
夜も更けた頃。エリアスと見張り番を交代したリオは呆れた様にエリアスを見やる。
「またですか」
「ん?」
剣を持ち、ドアノブに手を掛けるエリアスはその声に不思議そうに振り返った。
彼は初めこそ何がまたなのか、と聞きたそうな顔をしたものの、すぐにその答えに行きついた様だ。
「ああー、もう癖でさ。触ってないと鈍るし、何か不安になっちまうんだよなぁ」
「無理はなさらないでくださいよ。お嬢様は此度の件、自ら降りるつもりはなさそうですから。であるならば必ず貴方の力が必要になるでしょう」
「お……。頼ってくれてるって事? なんだぁ、そっかぁ」
「大変な時に足を引っ張られると困るという話ですね」
「あ、はい」
照れ臭そうに鼻の下を擦っていたエリアスは、リオの容赦ない言葉に肩を落とす。
しかしすぐに気を取り直したように笑うと今度こそ扉を開けた。
「ま、程々にしておくよ。体力尽きてたら元も子もないからなぁ」
「そうしてください」
エリアスは手を振って廊下へ出ると、鍛錬をすべく宿の外へと向かった。
隙を見せたオリヴィエの鳩尾へ、主導者は己の拳を突き出す。
それは弱っていたオリヴィエの意識を的確に刈り取った。
オリヴィエは胃液を逆流させ、口から零しながらうつ伏せに倒れ込む。
「任務完了だ。オリオール卿に報告をしたらすぐグロワールへ戻ろう」
主導者がオリヴィエの体を抱き上げる。
そして仲間達を引き連れて移動を開始しながら、今後の予定について話し合う。
「学院の不審死事件も未だ相次いでいると聞く。早くそちらの助力へ――」
(学院……不審死……? 何の話だ……)
徐々に遠のく意識の中、オリヴィエの耳にも魔導師達の会話が耳に入る。
頭は上手く働かず、閉じていく瞼を持ち上げる事も、魔導師達の会話に口を挟む気力も残されてはいない。
だがそれでも嫌な予感がじわじわと広がっていくのを感じた。
(――ノア、レミ)
学院へ残した友の姿を思いながらオリヴィエは完全に意識を手放した。
***
クリスティーナ達は宿へ辿り着いた後、食事を終えて客室へ戻って来た。
ここ二日は夜中に取締局へ赴いてから就寝、日中に行動という生活であった為睡眠があまりとれておらず、クリスティーナは疲労を感じていた。
気掛かりなことは多くあれど、一先ずは疲労を取ってしまいたいという気持ちからクリスティーナはやや早い時間からベッドへ横になった。
暫くは物思いに耽っていたが、やがて疲労に負けた彼女は緩やかに眠りへと誘われていく。
主人が眠りについたのを確認してからリオとエリアスは見張りの順番を決めて交互に休息を取る事とした。
夜も更けた頃。エリアスと見張り番を交代したリオは呆れた様にエリアスを見やる。
「またですか」
「ん?」
剣を持ち、ドアノブに手を掛けるエリアスはその声に不思議そうに振り返った。
彼は初めこそ何がまたなのか、と聞きたそうな顔をしたものの、すぐにその答えに行きついた様だ。
「ああー、もう癖でさ。触ってないと鈍るし、何か不安になっちまうんだよなぁ」
「無理はなさらないでくださいよ。お嬢様は此度の件、自ら降りるつもりはなさそうですから。であるならば必ず貴方の力が必要になるでしょう」
「お……。頼ってくれてるって事? なんだぁ、そっかぁ」
「大変な時に足を引っ張られると困るという話ですね」
「あ、はい」
照れ臭そうに鼻の下を擦っていたエリアスは、リオの容赦ない言葉に肩を落とす。
しかしすぐに気を取り直したように笑うと今度こそ扉を開けた。
「ま、程々にしておくよ。体力尽きてたら元も子もないからなぁ」
「そうしてください」
エリアスは手を振って廊下へ出ると、鍛錬をすべく宿の外へと向かった。
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