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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
204-2.刃が齎す物
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視界が霞み、大きく歪み、平衡感覚すら覚束ない。
頭痛や眩暈から始まった不調は手足の痺れや吐き気まで引き連れ、オリヴィエを襲った。
(予想以上に毒が回るのが早い……)
「くそったれ……」
壁を伝いながらオリヴィエは先を急ぐ。
だが言葉を一つ吐き捨てた直後。胃がひっくり返るような感覚と共に彼は膝から崩れ落ちた。
胃液が逆流し、喉を通って外へ逃れようとする。
オリヴィエは堪らず嘔吐き、込み上げたそれを地面へと吐き散らした。
吐き出した傍から新たに波がやってきてはくぐもった声と共に吐物が吐き出される。
吐き出せるものが全てなくなるまでそれが続いた後、オリヴィエは息を乱しながら再び立ち上がる。
呼吸をする度痛めた喉が隙間風の様な弱々しい音を上げ、鉛のように重い体が限界を訴えるが、それを無視しながら足を進めた。
「っ、殺す気か……っ」
予想の数倍は効力があった毒に対し、オリヴィエは掠れた声で文句を零す。
死ぬ程の毒ではないはずだが、それにしたって限度がある。先を急ぐオリヴィエを妨げるように重く伸し掛かる不調。それを抱えた彼はこの速度で移動していれば間違いなく追手が追い付くだろうと悟っていた。
(……仕方ない。今日だけ魔法を使わせてもらおう)
毒と知っていながら受けた自分のせいであり、自分が蒔いた種ではあるが、捕まれば元も子もない。他者へ迷惑を掛ける事に抵抗はあったがオリヴィエには手段を選ぶ余裕が残されていなかった。
彼は拠点まで移動すべく魔法の使用を試みる。
だが、何も起こらない。
「な……っ」
魔力を消費している感覚はあるのにも拘らず魔法の効果が表れない。
オリヴィエは慌てて再度魔法の行使を試みるが、結果は同じ。
何度繰り返そうとも魔法は発動しなかった。
(毒の影響か……? まずい、今の状況で追いつかれたら……)
魔法が使えないのならば自らの足で進むしかない。しかし逸る気持ちで前進するオリヴィエを嘲るように進行方向から複数の足音がやって来る。
だが前方の曲がり角から姿を現したのはオリヴィエの予想した人物達ではなかった。
彼は鋭く息を呑む。事は彼が予測していたよりも絶望的であったのだ。
オリヴィエは口角を引き攣らせ、乾いた笑いを漏らす。
「――グルだったのか、お前ら」
オリヴィエの行き先を塞いだのはローブに身を包んだ魔導師――日中に対峙した男達であった。
頭痛や眩暈から始まった不調は手足の痺れや吐き気まで引き連れ、オリヴィエを襲った。
(予想以上に毒が回るのが早い……)
「くそったれ……」
壁を伝いながらオリヴィエは先を急ぐ。
だが言葉を一つ吐き捨てた直後。胃がひっくり返るような感覚と共に彼は膝から崩れ落ちた。
胃液が逆流し、喉を通って外へ逃れようとする。
オリヴィエは堪らず嘔吐き、込み上げたそれを地面へと吐き散らした。
吐き出した傍から新たに波がやってきてはくぐもった声と共に吐物が吐き出される。
吐き出せるものが全てなくなるまでそれが続いた後、オリヴィエは息を乱しながら再び立ち上がる。
呼吸をする度痛めた喉が隙間風の様な弱々しい音を上げ、鉛のように重い体が限界を訴えるが、それを無視しながら足を進めた。
「っ、殺す気か……っ」
予想の数倍は効力があった毒に対し、オリヴィエは掠れた声で文句を零す。
死ぬ程の毒ではないはずだが、それにしたって限度がある。先を急ぐオリヴィエを妨げるように重く伸し掛かる不調。それを抱えた彼はこの速度で移動していれば間違いなく追手が追い付くだろうと悟っていた。
(……仕方ない。今日だけ魔法を使わせてもらおう)
毒と知っていながら受けた自分のせいであり、自分が蒔いた種ではあるが、捕まれば元も子もない。他者へ迷惑を掛ける事に抵抗はあったがオリヴィエには手段を選ぶ余裕が残されていなかった。
彼は拠点まで移動すべく魔法の使用を試みる。
だが、何も起こらない。
「な……っ」
魔力を消費している感覚はあるのにも拘らず魔法の効果が表れない。
オリヴィエは慌てて再度魔法の行使を試みるが、結果は同じ。
何度繰り返そうとも魔法は発動しなかった。
(毒の影響か……? まずい、今の状況で追いつかれたら……)
魔法が使えないのならば自らの足で進むしかない。しかし逸る気持ちで前進するオリヴィエを嘲るように進行方向から複数の足音がやって来る。
だが前方の曲がり角から姿を現したのはオリヴィエの予想した人物達ではなかった。
彼は鋭く息を呑む。事は彼が予測していたよりも絶望的であったのだ。
オリヴィエは口角を引き攣らせ、乾いた笑いを漏らす。
「――グルだったのか、お前ら」
オリヴィエの行き先を塞いだのはローブに身を包んだ魔導師――日中に対峙した男達であった。
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