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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
200-2.ショーの下準備
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客席が暗転したかと思えば舞台上にスポットライトが当たり、司会者が声高らかにオークションの開催を宣言する。
司会者が挨拶を終えればいよいよ競りが始まる。次々と壇上に運ばれては落札されていく光景を暫し眺めた後、オリヴィエは静かに席を立った。
「失礼、すぐに戻るよ」
「わかったわ。いってらっしゃい」
オリヴィエは不思議そうに首を傾けるヘマに小声で声を掛ける。
彼女は淡く微笑みを浮かべながらも、その瞳を鋭く光らせる。任務が本格的に始まろうとしている事を悟った視線。それに小さく頷きを返してからオリヴィエはゆったりと余裕のある足取りでホールを出た。
ホールとロビーを隔てる扉を後ろ手に閉め、オリヴィエは一つ息を吐く。
(人は警備程度。当たり前だな)
ロビーにはオークション関係者の姿がまばらに見える程度。オークション目当てで来ている客の姿が見えないのは当然の事だ。
つまり予想外の事は何もない。いつも通りに任務を熟せばいいだけ。
「おや、どうかなされましたか?」
ロビーへと出た客に関係者の一人が声を掛ける。
しかし彼がオリヴィエへと距離を詰めるより先、オリヴィエは懐から煙玉を三つ転がした。
「な……っ!」
「失礼、少々急用がありまして」
立ち込める煙はたちまちロビーの様子を不明瞭にする。
オリヴィエは不敵に笑いながら隠し持っていた仮面をつけた。
「私の事はどうぞお気になさらず」
煙が退いた時、そこにオリヴィエの姿はなかった。
煙に咳き込みながら辺りを見回した関係者らはすぐに事の重大さに気付く。
「っ、『遊翼』だ……! 探せ!」
「くそ……っ、大きな騒ぎにはするな。ホールの混乱を避けるんだ!」
ホールではオークションが続いている。『遊翼』の齎した騒ぎがホールへ届けば場は混乱する事だろう。
更に今晩のオークションは領主であるジョゼフが出品した大目玉もある、重要な催し物だ。その最中に『遊翼』を見逃してしまったミスが公になれば当事者らは当然その責任を問われることになる。
自分達のミスで大きな催し物が破綻することを恐れた関係者は保身に走りながらも『遊翼』の姿を探して散開する。
それすらも予測されている事だとは誰も思ってはいなかった。
舞台裏へ通ずる関係者用の廊下をオリヴィエは駆け抜ける。
「止まれ!」
偶然にもオリヴィエの前方に立っていたスタッフ数名はすぐさま異変に気付いてその進路を塞ぐ。
だがそれでは彼の動きを止めることが出来ない。
オリヴィエは薄く笑みを浮かべたまま身を屈み、彼らの脇をすり抜けた。
すれ違い様、彼は相手の肩や腰へ軽く触れ、スタッフ達の背後まで辿り着くと呟いた。
「”跪け”」
刹那。彼へ立ち塞がっていた者達が次々と地面へ膝をついたのだった。
司会者が挨拶を終えればいよいよ競りが始まる。次々と壇上に運ばれては落札されていく光景を暫し眺めた後、オリヴィエは静かに席を立った。
「失礼、すぐに戻るよ」
「わかったわ。いってらっしゃい」
オリヴィエは不思議そうに首を傾けるヘマに小声で声を掛ける。
彼女は淡く微笑みを浮かべながらも、その瞳を鋭く光らせる。任務が本格的に始まろうとしている事を悟った視線。それに小さく頷きを返してからオリヴィエはゆったりと余裕のある足取りでホールを出た。
ホールとロビーを隔てる扉を後ろ手に閉め、オリヴィエは一つ息を吐く。
(人は警備程度。当たり前だな)
ロビーにはオークション関係者の姿がまばらに見える程度。オークション目当てで来ている客の姿が見えないのは当然の事だ。
つまり予想外の事は何もない。いつも通りに任務を熟せばいいだけ。
「おや、どうかなされましたか?」
ロビーへと出た客に関係者の一人が声を掛ける。
しかし彼がオリヴィエへと距離を詰めるより先、オリヴィエは懐から煙玉を三つ転がした。
「な……っ!」
「失礼、少々急用がありまして」
立ち込める煙はたちまちロビーの様子を不明瞭にする。
オリヴィエは不敵に笑いながら隠し持っていた仮面をつけた。
「私の事はどうぞお気になさらず」
煙が退いた時、そこにオリヴィエの姿はなかった。
煙に咳き込みながら辺りを見回した関係者らはすぐに事の重大さに気付く。
「っ、『遊翼』だ……! 探せ!」
「くそ……っ、大きな騒ぎにはするな。ホールの混乱を避けるんだ!」
ホールではオークションが続いている。『遊翼』の齎した騒ぎがホールへ届けば場は混乱する事だろう。
更に今晩のオークションは領主であるジョゼフが出品した大目玉もある、重要な催し物だ。その最中に『遊翼』を見逃してしまったミスが公になれば当事者らは当然その責任を問われることになる。
自分達のミスで大きな催し物が破綻することを恐れた関係者は保身に走りながらも『遊翼』の姿を探して散開する。
それすらも予測されている事だとは誰も思ってはいなかった。
舞台裏へ通ずる関係者用の廊下をオリヴィエは駆け抜ける。
「止まれ!」
偶然にもオリヴィエの前方に立っていたスタッフ数名はすぐさま異変に気付いてその進路を塞ぐ。
だがそれでは彼の動きを止めることが出来ない。
オリヴィエは薄く笑みを浮かべたまま身を屈み、彼らの脇をすり抜けた。
すれ違い様、彼は相手の肩や腰へ軽く触れ、スタッフ達の背後まで辿り着くと呟いた。
「”跪け”」
刹那。彼へ立ち塞がっていた者達が次々と地面へ膝をついたのだった。
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