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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』

187-3.合流待ちの傍ら

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「ならアタシとニコラが行こう。仕事柄、アタシ達は似たような場面での交渉の経験があるし、ヴィートだと悪戯をしに来た子供程度にしか思われない可能性があるからな」
「失礼な! 言う程子供って訳じゃないんだけど!?」
「中身の話だ、中身の」

 ブランシュが名乗りを上げたそうに口を開くも、それを遮る様にヘマが組み分けを決める。筋の通っている人選の理由を聞いてしまえば自身の希望を無理に押し通すことは出来ず、彼女は小さく俯いた。
 その傍らでは不満げに口を尖らせるヴィートをオリヴィエが軽くあしらっている。

「ニコラなんか、中身も見た目も子供じゃん」
「何だと」
「やめろ二人共、みっともない。ほら、さっさと行くぞ」

 やがて口喧嘩に発展しそうな空気にヘマが割って入り、オリヴィエの首根っこを掴んだ。
 そして半ば引きずるようにしてその場を離れていく。

 オリヴィエとヘマはホールの入口に立つ警備員に声を掛け、いくつか会話を交えた後、難なく会場の中へと招き入れられる。
 残された五人が見守る中、二人の姿は扉の奥へと消えていった。

 それを遠目に見送った後、ヴィートは手を打つ。

「さーてと。じゃあおれ達は二人を待ってる間に周りの人の話を聞こうか」

 その提案に頷きを返しつつ、クリスティーナ達は辺りを見回す。
 ホール周辺はまばらではあるが人の姿があり、中には掲示板を興味深げに観察する者や開場を心待ちにするように時間を潰している、オークション目当てらしい者達の姿もある。

 だが、その中でクリスティーナの目を惹いたのは意外な存在だ。

「……女の子?」

 辺りを見回していたクリスティーナが動きを止めた事を不思議に思ったブランシュが、同じ方角を見やって呟いた。
 更に他の三人も彼女達の視線を辿る。

 人通りが多いわけではない夕暮れの通り。そこに五歳程度の幼い少女が立っていた。
 傍には母親らしき女性が付いており、どうやら帰りを促している様だがそれを少女の方が拒絶している。

 少女は何かを両手で抱えたまま、探し物をするように頻りに辺りを見回している。

「珍しいね。開場待ちって訳ではなさそうだし……話でも聞きに行ってみよっか」
「私も行くわ」
「あ、私も……!」

 クリスティーナがヴィートに続き、そこへ更にブランシュも歩き出す。
 三人を追いかける様にリオとエリアスも一歩踏み出すが、それに気付いたクリスティーナがすかさずその場に残る様伝える。

 大人数で少女を囲めば威圧的に感じさせてしまうかもしれない。三人でも多すぎるくらいだろう。
 そこに更に長身の男と体格の良い男が加われば少女を警戒させてしまう要因になり得ると考えたのだ。

 その意図を察してかリオとエリアスは頷きを返し、少し離れた場所で見守りに徹することとなる。
 二人が足を止めた事を確認してからクリスティーナはヴィート、ブランシュと共に親子の元へと足を進めたのだった。
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