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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』

182-1. 廃棄物の再利用

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 オリヴィエの言葉に目を丸くするクリスティーナとエリアス。
 クリスティーナは怪訝そうに顔を顰めてオリヴィエを見やった。

「……どういうこと? 古代魔導具の管理は国家魔導師が行うのでしょう? その前提の基、国が定めたはずの組織が国家魔導師で形成されていないと言うの」
「その通りだ。組織で国家魔導師の資格を持つのはボスだけだ。それに……僕の立場についてはお前も知っているだろう」

 オリヴィエは魔法学院を休学中の生徒だ。仮に年齢という縛りがないとしても、学生という学びの過程に立つ者が国有数の魔導師として認められるのは至難の業だろう。
 魔法学院の生徒が国家魔導師を兼ねる事は普通に考えれば不可能であり、それはオリヴィエでも例外ではない。彼がそう言いたいのだろうことはクリスティーナにも察しがついていた。

「貴方は特例なのだと思っていたわ」

 オリヴィエが国家魔導師である線が薄い事はクリスティーナも思い至っていた。
 だが大陸全土でも名門の魔法学院を卒業すれば国家魔導師となる道は存在するはず。故に未来の国家魔導師という名目で目を瞑られている等の事情があるのだとクリスティーナは考えていたのだ。
 だが彼の発言から推測するに、どうやらそうではないらしい。

「国家魔導師という称号がそう易々と手に入らない物であることくらいはわかるだろう。国は日頃の治安維持に当たっている国家魔導師の数を減らしてまで社会の裏に干渉する事はできない。そこまでの人手や余力がないんだ」
「だからこそ、国家魔導師の中でも随一の才を持つ魔導師一人を取締局の監督役とし、組織の統括や現場での判断等、組織の大半の機能を一任した。それに選ばれたのがディオンさんだ」

 そこでヘマは口を閉ざす。彼女の視線は自身の周囲へと向けられる。
 どうかしたのかとクリスティーナが言いかけた時、彼女達の脇を通行人が通り過ぎて行った。
 取締局の存在は国の機密事項。声を潜めているとはいえ横をすり抜ける者が居れば会話の一部が聞こえてしまう。
 故にヘマは一度話を止めた様だ。

 話をしながらも周囲を気にする事を彼女は忘れていないらしい。
 通行人が離れていったことを確認してから彼女は話の続きを語った。

「アタシ達は古代魔導具の処理に適している人材として国や国家魔導師、もしくはディオンさんに認められただけに過ぎない」
「国に認められた人材……それだけ腕利きの魔導師ということね」
「選別方法はそれだけじゃない。国が認めた魔導師というだけの立場ならそれこそ国家魔導師に任命されるだろうさ」

 ではどんな人物達が集められるというのか。その疑問が漏れるより先、ヘマは視線を落として呟いた。

「ディオンさんの元に集められたのはその身が危険に晒され、時に命散ることになろうとも、国の痛手にならない存在――罪人だ」
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