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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
175-1.見え始めた糸口
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ディオンは指を二本立て、認識に齟齬がない事を確認する様に五人の顔を見回す。
「まず、古代魔導具には少なくとも他者を『魅了』させる精神に作用する魔法と他者を植物へと変えてしまう魔法が存在する」
闇魔法は人族にとってあまりに遠い存在。更にその殆どは邪悪な物と忌避し、退けられてきた物だ。
魔族と対峙した経験があるとはいえ、目の当たりにする機会が殆どなかったクリスティーナ達にとって、闇魔法が今も未知なる脅威であることに変わりない。
だが、どうやらディオンにとっては違う様だ。
「『魅了』を始めとした、精神へ影響を与える類の魔法は一定の範囲内に足を踏み入れた対象であれば使うことが出来るが、精神系の魔法は何も使われたら必ず影響を与えるような万能な物じゃあない」
流石、魔法の国でも指折りの魔導師と言うべきだろう。彼は魔導師としての知識を簡単に披露した。
「精神系の魔法が成立するのはいつだって対象に心の揺らぎがある時だ。恐怖や不安、悩み、疑念……まあ要するに衝かれれば動揺を誘われる様な精神的な『弱み』だな」
「つまり、強い精神力を保つことが出来ればそもそも不発で終わる……と」
「そういうことだ」
「弱み……」
隠し部屋に保管された魔導具に闇魔法が絡んでいると説明された時から薄々感じていた事がクリスティーナにはあった。
ディオンとリオの会話に耳を傾けながらも彼女の脳裏を過るのは迷宮『エシェル』の最深部で見た、広がる『闇』の光景。
一度目、リオ達前衛へ襲い掛かった時と二度目のノアへと迫った時の情景を思い返したクリスティーナの中に、一つの予測が生まれる。
(……そう。きっとあれは――)
「どうした、嬢ちゃん。何か気になる事でもあったか?」
「……いいえ」
だがディオンの声掛けによってクリスティーナの意識は現実気引き戻される。
我に返った彼女はゆっくりと首を横に振った。
それに対しディオンが特別気にした素振りはなく、彼はただそうかいと頷くと話を続けた。
「まあ、人ってのは複雑な感情を抱えて当たり前の生き物だからな。仕組みが分かっていても実行できる奴は少ない。精神力っての強弱には個人差があるからな。元から神経の図太い奴もいるにはいるが、そういう輩ってのは更に稀だ。だからこそ、この手の魔導具を相手にする際は人選を慎重に考える必要がある」
クリスティーナはリオとエリアス、オリヴィエの顔を盗み見る。だがリオとエリアスはすぐにその視線に気付き、どうかしたのかと不思議そうに視線を返した。
一方でオリヴィエは難しい顔のままディオンの方を見やったままクリスティーナのことに気付きはしない。
クリスティーナは何でもないと首を横に振りつつ、再びディオンを見やった。
「まず、古代魔導具には少なくとも他者を『魅了』させる精神に作用する魔法と他者を植物へと変えてしまう魔法が存在する」
闇魔法は人族にとってあまりに遠い存在。更にその殆どは邪悪な物と忌避し、退けられてきた物だ。
魔族と対峙した経験があるとはいえ、目の当たりにする機会が殆どなかったクリスティーナ達にとって、闇魔法が今も未知なる脅威であることに変わりない。
だが、どうやらディオンにとっては違う様だ。
「『魅了』を始めとした、精神へ影響を与える類の魔法は一定の範囲内に足を踏み入れた対象であれば使うことが出来るが、精神系の魔法は何も使われたら必ず影響を与えるような万能な物じゃあない」
流石、魔法の国でも指折りの魔導師と言うべきだろう。彼は魔導師としての知識を簡単に披露した。
「精神系の魔法が成立するのはいつだって対象に心の揺らぎがある時だ。恐怖や不安、悩み、疑念……まあ要するに衝かれれば動揺を誘われる様な精神的な『弱み』だな」
「つまり、強い精神力を保つことが出来ればそもそも不発で終わる……と」
「そういうことだ」
「弱み……」
隠し部屋に保管された魔導具に闇魔法が絡んでいると説明された時から薄々感じていた事がクリスティーナにはあった。
ディオンとリオの会話に耳を傾けながらも彼女の脳裏を過るのは迷宮『エシェル』の最深部で見た、広がる『闇』の光景。
一度目、リオ達前衛へ襲い掛かった時と二度目のノアへと迫った時の情景を思い返したクリスティーナの中に、一つの予測が生まれる。
(……そう。きっとあれは――)
「どうした、嬢ちゃん。何か気になる事でもあったか?」
「……いいえ」
だがディオンの声掛けによってクリスティーナの意識は現実気引き戻される。
我に返った彼女はゆっくりと首を横に振った。
それに対しディオンが特別気にした素振りはなく、彼はただそうかいと頷くと話を続けた。
「まあ、人ってのは複雑な感情を抱えて当たり前の生き物だからな。仕組みが分かっていても実行できる奴は少ない。精神力っての強弱には個人差があるからな。元から神経の図太い奴もいるにはいるが、そういう輩ってのは更に稀だ。だからこそ、この手の魔導具を相手にする際は人選を慎重に考える必要がある」
クリスティーナはリオとエリアス、オリヴィエの顔を盗み見る。だがリオとエリアスはすぐにその視線に気付き、どうかしたのかと不思議そうに視線を返した。
一方でオリヴィエは難しい顔のままディオンの方を見やったままクリスティーナのことに気付きはしない。
クリスティーナは何でもないと首を横に振りつつ、再びディオンを見やった。
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