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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
174-4.密接な関係
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「また、古代魔導具はその機能を失うことなく長い年月を過ごした道具。正しく使われず眠り続けていたのだとすれば、ジョゼフの手に渡った時点でその生命エネルギーは非常に脆弱であったと考えられる」
ここまで来ればその場の誰もがシャルロットと失踪者達の間に生まれた植物化の不自然な時差の理由に見当がついていた。
各々が自力で答えに辿り着いた事をその表情から察しながらディオンは結論を纏める。
「以上の事から、それはシャルロット嬢が古代魔導具の魔法を受けた時、件の古代魔導具の生命エネルギーは非常に脆弱な物であったと推測できる。故に本来行使できるはずの魔法がまともに機能せず、辛うじて影響を与える程度の規模の魔法が作用したんだろう」
ディオンは魔法の原理をわかりやすく説明した上で一貫して矛盾のない推理を披露した。
その事を内心称賛しつつ、クリスティーナは頷く。
「シャルロットの植物化が遅いのは魔導具の力が衰えていた初期に魔法を受けたからこその物……。であるならば、失踪した使用人達が彼女に比べて早くに植物となってしまったのは……」
「それだけ古代魔導具のエネルギーが充填され、本来の性能を取り戻しつつある為だろう」
オリオール邸で生まれた大きな疑問は一つ晴れた。
だがそうすると次に明らかになるのは今の状況がどれ程深刻な物であるかという事だ。
「生命エネルギーの枯渇、延いては保有魔力の枯渇は魔法の威力や影響を与える範囲等、その脅威性を大きく下げる要因となり得る。だが現在、件の魔導具が本質を取り戻しつつあるって言うのなら……その影響はどこまで行き届くか分かったもんじゃねぇ。早急に手を打つべきだ」
誰にも疑わらず何週間も屋敷に人を監禁することは難しい。それも繰り返しの犯行となると尚更だ。
今までぼろが出ず、同じ手段を取れていたという事はそれだけ事が円滑に運んでいたという証拠。
植物化の進行速度の上昇は相当な物だと考えるのが妥当だ。
そして順当に考えれば当然、進行速度以外の古代魔導具の性能も大きく向上しているという事になる。
更に放っておけばその脅威は膨らんで行く一方だ。
その深刻性を悟っていたからこそ、ディオンは終始難しい顔をしていたのだろう。
「……生物から為る魔導具とやらの特徴については大まかに理解したわ。それで、何かしらの手を打つに当たって今回の古代魔導具の詳細な特徴や明確な対策方法などに目星はついているのかしら? 植物化を回避する手段がなければ手を打つも何もあったものではないでしょう」
被害が拡大する前に早急に動く必要はある。だが具体的な対策がなければ『動く』事すらできない。
そんなクリスティーナの指摘に、ディオンは首を縦に振る。
「ああ。具体的な話をする為にまず、ここまでの情報を整理しよう」
最早個人を救うという問題には留まらない。
まだ明けない夜の最中、六人は膨れ上がる目先の脅威に対抗する策を講じる事となる。
ここまで来ればその場の誰もがシャルロットと失踪者達の間に生まれた植物化の不自然な時差の理由に見当がついていた。
各々が自力で答えに辿り着いた事をその表情から察しながらディオンは結論を纏める。
「以上の事から、それはシャルロット嬢が古代魔導具の魔法を受けた時、件の古代魔導具の生命エネルギーは非常に脆弱な物であったと推測できる。故に本来行使できるはずの魔法がまともに機能せず、辛うじて影響を与える程度の規模の魔法が作用したんだろう」
ディオンは魔法の原理をわかりやすく説明した上で一貫して矛盾のない推理を披露した。
その事を内心称賛しつつ、クリスティーナは頷く。
「シャルロットの植物化が遅いのは魔導具の力が衰えていた初期に魔法を受けたからこその物……。であるならば、失踪した使用人達が彼女に比べて早くに植物となってしまったのは……」
「それだけ古代魔導具のエネルギーが充填され、本来の性能を取り戻しつつある為だろう」
オリオール邸で生まれた大きな疑問は一つ晴れた。
だがそうすると次に明らかになるのは今の状況がどれ程深刻な物であるかという事だ。
「生命エネルギーの枯渇、延いては保有魔力の枯渇は魔法の威力や影響を与える範囲等、その脅威性を大きく下げる要因となり得る。だが現在、件の魔導具が本質を取り戻しつつあるって言うのなら……その影響はどこまで行き届くか分かったもんじゃねぇ。早急に手を打つべきだ」
誰にも疑わらず何週間も屋敷に人を監禁することは難しい。それも繰り返しの犯行となると尚更だ。
今までぼろが出ず、同じ手段を取れていたという事はそれだけ事が円滑に運んでいたという証拠。
植物化の進行速度の上昇は相当な物だと考えるのが妥当だ。
そして順当に考えれば当然、進行速度以外の古代魔導具の性能も大きく向上しているという事になる。
更に放っておけばその脅威は膨らんで行く一方だ。
その深刻性を悟っていたからこそ、ディオンは終始難しい顔をしていたのだろう。
「……生物から為る魔導具とやらの特徴については大まかに理解したわ。それで、何かしらの手を打つに当たって今回の古代魔導具の詳細な特徴や明確な対策方法などに目星はついているのかしら? 植物化を回避する手段がなければ手を打つも何もあったものではないでしょう」
被害が拡大する前に早急に動く必要はある。だが具体的な対策がなければ『動く』事すらできない。
そんなクリスティーナの指摘に、ディオンは首を縦に振る。
「ああ。具体的な話をする為にまず、ここまでの情報を整理しよう」
最早個人を救うという問題には留まらない。
まだ明けない夜の最中、六人は膨れ上がる目先の脅威に対抗する策を講じる事となる。
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