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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』

174-3.密接な関係

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 ジルベールは神妙な面持ちのまま顎に手を当てる。
 返された頷きを視界に捉えながら、彼は難しい顔付きのまま無言でディオンに話しの続きを促した。

「腹が減ったけど飯が食えねぇ。飯が食えねぇと生きる為の体力が持たねぇ。そういう状態が限界まで達した時は臨時のエネルギーとして魔力を生命エネルギーに補完することで生き長らえようとする。……ま、あくまで応急措置的な物だ。魔力を使い尽くした上で生命エネルギーが尽きた場合にゃ死ぬ訳だが」

 魔力の枯渇が生死を分ける肝になることもある。
 魔力枯渇が命に関わる事であることは知識として知っていたクリスティーナであったが、国屈指の魔法の専門家から繰り返し告げられる事実は魔導師にとってそれだけ重要な事であるのだと暗に示していた。

 ディオンはクリスティーナ達五人を順に見やる。
 特にオリヴィエとジルベールには思うところがあるらしく、より一層鋭い視線が彼らへ向けられたが、オリヴィエはその視線に気付いていないかのように片耳に小指を突っ込んで余所を向く。一方のジルベールはその場凌ぎのぎこちない笑みを浮かべていた。

 彼らの反応に対しディオンは不服そうに首を振った後、話の軌道を修正する為に咳払いを落とす。

「生命エネルギーが足りなければ魔力を減らすしかない。でも魔力が不足してれば消費魔力の少ない魔法しか使えない……。で、それはクリス様達が見つけた古代魔導具にも言えるって訳かぁ」
「ああ。それが生命エネルギーと魔力の関係が密接故の問題点だ」

 エリアスの呟きをディオンは肯定する。
 その後、彼が一つ息を吐けば、自然とその空間には静寂が訪れた。

 どうやら話に一つの区切りがついたらしく、彼は一度大きく伸びをして間を作る。
 そして再び姿勢を戻すと、眉間に皺を寄せ、緊張した面持ちで口を開いた。

「そしてこっからが本題だ。シャルロット嬢と失踪した使用人の間に生まれた植物化の進行速度の不自然な差……。それこそが今回の古代魔導具が生物から成る魔導具である裏付けになる」

 クリスティーナ達が抱いていた疑問の一つ。それの答えに目星が付いていると彼は言った。
 彼の纏う雰囲気につられるようにしてクリスティーナ、リオ、ジルベールは一層の緊張感を以てディオンの言葉へ耳を傾けた。

「本来持続的に他者へ影響を与える魔法というのは多少の個人差があれど、魔法を受けた後の時間が長ければ長い程、その影響を多分に受ける。だが今回はそうではない」

 そこまではわかっているだろうと問う様に向けられる視線に三人は頷く。エリアスとオリヴィエもディオンの指摘からその不自然さに気付きを得たらしくやや遅れて目を丸くした。
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