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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』

171-1.魅了の魔術

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 クリスティーナ達はオリオール邸で見た物や生まれた推測、疑問を全てディオンへと報告する。
 その場にはオリヴィエも残り、彼は腕を組んだまま静かに耳を傾けていた。

 一行からの説明が一通り終わった頃、難しい顔をしていたディオンが静かに目を伏せる。

「……そうか」

 ディオンは机を指で小突きながら暫く黙り込む。
 考えを整理しているのか、彼が口を閉ざしたまま暫く時間が経過したが、やがて低く呻く声が漏れる。

「参ったな。予想以上に厄介だ」
「……僕が携わってきた物でもここまで脅威的な物はなかった」
「そうなのですね」

 ディオンの言葉にオリヴィエが同意を示す。
 二人の深刻な面持ち、そして彼らの発言から改めて事の重大さを認識したジルベールは顔を曇らせた。

「人を植物化させるという点もだが……。恐らくお前さん達が確認した古代魔導具の効果は一つじゃない」
「複数の機能を兼ね備えていると?」
「ああ。現代の魔導具でもそういった類のもんはあるだろう? 光を灯したり消したりする機能と明るさの調節する機能を兼ね備えたランプだとか。古代魔導具にもあるのさ。それも非常に複雑な術式を複数用いた様なもんがな」

 ディオンが推測する『複数の機能』。その内一つは人を植物化するという物であるとして、他の機能として思い当たる様な現象は思いつかない。
 クリスティーナ達はディオンの見解を問う様に彼へ注目した。

「古代の魔法の在り方を知ってるってなら、魔術が六つの属性に縛られないっていう話は大丈夫だな?」
「ええ」
「六つの属性に縛られない……。つまり術式と必要な道具、そして魔力さえあればどんな魔法だって実現する。勿論組み込んだ術式がどのような効果を齎すのかという知識は必要だし、新たな魔法を生むには相応の時間や労力が必要となるが」
「つまり、何が言いたいの?」

 今回発見した古代魔導具に六属性以外の魔術が組み込まれているだろうことは人を植物化させる効果を知った時から察しが付いている。
 植物に絡む魔法は現代の人類は扱うことが出来ない――六属性に存在しないものであるからだ。
 そしてディオンの口振りでは二つ目の機能として予測している魔術もまた、六属性に当たらない物であると言っている様である。
 その答えを急かす様にクリスティーナは問い掛ける。

 彼はその唇を重々しく動かした。

「つまり、闇魔法も扱えるという事だ」
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