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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
167-3.二面性
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「お嬢様、っつ」
「リオ……っ」
それに即座に反応したリオはクリスティーナの手を引いて後退を試みるが、催眠作用の薬剤が抜けきっていない弊害から大きな眩暈が生じ、体勢を崩しかける。
彼は何とか自力で踏み留まるも、僅かに生まれた隙は逃げるだけの余裕を失わせた。
このまま回避行動に出ようとしても間に合わない。
そう判断したリオはクリスティーナの正面へ回り込むと彼女を抱き寄せ、迫る植物から背で庇う。
無慈悲に襲い掛かる太く鋭い根。それは標的の中心へ真っ直ぐに飛び掛かる。
だがそれがリオの背に触れるかと思われた時。
その先端が小気味いい音と共に斬り落とされる。
更に次の瞬間、それだけでは足りないとでも言うように、更に広範囲の根が事細かに切り刻まれた。
想定していた攻撃がやって来ないことに気付いたリオは顔だけで後方へ振り返る。
その視界が捉えたのは細かな破片を散らす木の根と、それを切り刻んだであろうジルベールの背中。
リオと木の根の間に駆け付けたジルベールはその脅威を切り刻んでも尚警戒を緩めることはなく、低く腰を落としながら己の武器を構える。
そして地を蹴り、倉庫へと急接近をしながら蠢く植物らを何度も切断していく。
倉庫の扉へと彼が駆け付けた頃には扉の外へと這い出ていた植物らは余すことなく斬り落とされていた。
ジルベールは体当たりで荒々しく扉を閉めると自身の肩でそれを抑えつけたまま、閂を掛けた。
幸いにも扉を閉めてしまえば隠し部屋の時同様、それ以上動きを見せることはないようで、暫し警戒しながら様子を窺っていればやがて倉庫には静寂が訪れた。
ジルベールは倉庫内を埋め尽くした植物達に扉を突き破るような気配がないことを確認してから、安堵の息を漏らしつつ扉から離れる。
更に辺りに散らばっていた植物の残骸を『フレイム』で燃やし尽くし、周辺の様子を用心深く観察してから細剣の刃を消滅させた。
彼は剣柄を懐へしまい込みながらクリスティーナとリオの元へと近づく。
その表情はどこか冷たさを感じさせる様な感情の乏しい物であったが、二人の前へ辿り着くと同時にそれは一変する。
「お二方とも、お怪我はございませんか?」
漸く警戒を解いて気が緩んだらしい彼は眉を下げて心底心配そうにクリスティーナとリオを交互に見やったのだった。
「リオ……っ」
それに即座に反応したリオはクリスティーナの手を引いて後退を試みるが、催眠作用の薬剤が抜けきっていない弊害から大きな眩暈が生じ、体勢を崩しかける。
彼は何とか自力で踏み留まるも、僅かに生まれた隙は逃げるだけの余裕を失わせた。
このまま回避行動に出ようとしても間に合わない。
そう判断したリオはクリスティーナの正面へ回り込むと彼女を抱き寄せ、迫る植物から背で庇う。
無慈悲に襲い掛かる太く鋭い根。それは標的の中心へ真っ直ぐに飛び掛かる。
だがそれがリオの背に触れるかと思われた時。
その先端が小気味いい音と共に斬り落とされる。
更に次の瞬間、それだけでは足りないとでも言うように、更に広範囲の根が事細かに切り刻まれた。
想定していた攻撃がやって来ないことに気付いたリオは顔だけで後方へ振り返る。
その視界が捉えたのは細かな破片を散らす木の根と、それを切り刻んだであろうジルベールの背中。
リオと木の根の間に駆け付けたジルベールはその脅威を切り刻んでも尚警戒を緩めることはなく、低く腰を落としながら己の武器を構える。
そして地を蹴り、倉庫へと急接近をしながら蠢く植物らを何度も切断していく。
倉庫の扉へと彼が駆け付けた頃には扉の外へと這い出ていた植物らは余すことなく斬り落とされていた。
ジルベールは体当たりで荒々しく扉を閉めると自身の肩でそれを抑えつけたまま、閂を掛けた。
幸いにも扉を閉めてしまえば隠し部屋の時同様、それ以上動きを見せることはないようで、暫し警戒しながら様子を窺っていればやがて倉庫には静寂が訪れた。
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「お二方とも、お怪我はございませんか?」
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