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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
154-3.協力の要請
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「オレ達も一般的な魔導具と古代魔導具を見抜く技術は持っている。その内に隠された脅威を計ることもできる。……だが、調べるのにはそれ相応の時間を要する。潜伏という手段を取るにしても一度で終わるかもわからない。何度も繰り返している内に領主に感づかれる可能性も大いにある。だから……」
「『リスクが高い』のよね。その上潜伏が一度でも悟られれば二度と同じ手段は使えない……それを鑑みれば、踏み切るのを躊躇せざる得ないのも理解できるわ」
「察しが良くて助かるな」
クリスティーナは今までのディオンの言葉、そして彼と初めて遭遇した時のことを思い返す。
懐中時計の形をした魔導具。それを回収するまでに踏んだ過程にはそれが危険な古代魔導具であると確信するだけの情報収集や調査に時間を費やしたから。ディオンの言葉を信じるのであればそういう事だろう。
いくら古代魔導具に通ずるものであっても一度目にしただけで秘められた脅威がわかるわけではないらしい。
だからこそ懐中時計を一瞥しただけで追って来たクリスティーナに興味を持ち、自分達に必要な人材かもしれないという考えに至ったのだろう。
「オレには嬢ちゃんの『直感』がどこまで優れたもんなのかはわからない。それにこちら側へ首を突っ込むという事は危機に瀕する可能性もあるという事。だから、最終的な判断はお前達本人に任せる」
ディオンは笑みを消すとクリスティーナ達へ向かって頭を下げた。
「ここまでの話を聞いて、自身の才がこの状況を打破するだけのもんであると自負するのならば……危険を承知で、尚もこの件の解決に奔走したいという気持ちがあるのならば……どうか、オレ達に力を貸して欲しい」
「いいえ。お約束通り、皆様に迫る危機の一切は私が必ず断ちます。ですから私からも再度、お願い申し上げたいのです。……どうか、シャルロット様をお救い頂く為にもお力をお貸しいただけませんか」
ディオンに続いて口を開いたのはジルベールだ。
彼は席を立ち、その場に膝を突くと深々と頭を下げた。
強い意志を持った二つの視線がクリスティーナ達へ向けられる。
リオやエリアスへ視線を向けるも、彼らは小さく笑みを返すだけだ。即座に拒絶を示さないところを見ると、話しを聞くにあたってディオンに対する警戒心もそれなりに落ち着いて行ったらしい。
それを確認してからクリスティーナはディオンとジルベールを順に見つめ返す。
そしてゆっくりと口を開いたのだった。
「『リスクが高い』のよね。その上潜伏が一度でも悟られれば二度と同じ手段は使えない……それを鑑みれば、踏み切るのを躊躇せざる得ないのも理解できるわ」
「察しが良くて助かるな」
クリスティーナは今までのディオンの言葉、そして彼と初めて遭遇した時のことを思い返す。
懐中時計の形をした魔導具。それを回収するまでに踏んだ過程にはそれが危険な古代魔導具であると確信するだけの情報収集や調査に時間を費やしたから。ディオンの言葉を信じるのであればそういう事だろう。
いくら古代魔導具に通ずるものであっても一度目にしただけで秘められた脅威がわかるわけではないらしい。
だからこそ懐中時計を一瞥しただけで追って来たクリスティーナに興味を持ち、自分達に必要な人材かもしれないという考えに至ったのだろう。
「オレには嬢ちゃんの『直感』がどこまで優れたもんなのかはわからない。それにこちら側へ首を突っ込むという事は危機に瀕する可能性もあるという事。だから、最終的な判断はお前達本人に任せる」
ディオンは笑みを消すとクリスティーナ達へ向かって頭を下げた。
「ここまでの話を聞いて、自身の才がこの状況を打破するだけのもんであると自負するのならば……危険を承知で、尚もこの件の解決に奔走したいという気持ちがあるのならば……どうか、オレ達に力を貸して欲しい」
「いいえ。お約束通り、皆様に迫る危機の一切は私が必ず断ちます。ですから私からも再度、お願い申し上げたいのです。……どうか、シャルロット様をお救い頂く為にもお力をお貸しいただけませんか」
ディオンに続いて口を開いたのはジルベールだ。
彼は席を立ち、その場に膝を突くと深々と頭を下げた。
強い意志を持った二つの視線がクリスティーナ達へ向けられる。
リオやエリアスへ視線を向けるも、彼らは小さく笑みを返すだけだ。即座に拒絶を示さないところを見ると、話しを聞くにあたってディオンに対する警戒心もそれなりに落ち着いて行ったらしい。
それを確認してからクリスティーナはディオンとジルベールを順に見つめ返す。
そしてゆっくりと口を開いたのだった。
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