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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』

153-1.古代魔導具取締局

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 クリスティーナは改めて自身の周囲を見渡す。
 古ぼけた質素な家具達。成人すらしていない様な子供も含まれた組織の形態。
 それらを見ればとても国が管理している組織の拠点とは思えない。

 だが、ディオンが嘘を吐いているとは思えないのも事実だった。

「発見した古代魔導具は一度適切な機関にて鑑定を行わなければならない法律がフォルトゥナにはある。そこで脅威なしと判断された物の所有権は発見者の元へと返還されるが……脅威ありと見なされたものに関しては回収される」

 魔法の技術に特化した国だからこそ、危険性のある魔導具に対する対処も厳格且つ適切に行われる。
 その取り締まりの厳しさと綿密さは他国以上だろう。

「そして国が定めた法にはもう一つ……『国から認められていない古代魔導具は所有、売買、譲渡の一切を禁止する』というものがある。これを犯せば他の法と同じ様に罪に問われる、立派な違法行為だ」

 呆れ混じりのため息が零される。
 ディオンは苦々しく笑いながら肩を竦めた。

「……けどなぁ、それでも集めたがる奴って言うのはいるもんだ。古代魔導具というのはそもそもが希少で、コレクターなんかからしたら喉から手が出るほど欲しい代物。勿論高値で売れるし、コレクターからすれば持ってるだけで他の愛好家共にマウントなんて取り放題だろう」

 己の心を満たす為、他者より勝っていることを知らしめる為に高価な物へ手を伸ばす者がいることはクリスティーナも知っている。彼女が公爵令嬢として暮らしていた頃、そういった者の姿を何度も目にしたことがあった。
 金や地位に目が眩む者、見栄を張りたがる者、プライドの高い者。己の出自や血統が重要視される貴族社会では自身の立場に威厳を持たせる為、特にそんな傾向に置かれる者が多い。

 そしてこの傾向はどの国でも似通っているはず。恐らくはフォルトゥナもそうだろう。
 古代魔導具の流通、その主なターゲット層は間違いなくコレクターの貴族達だろう。

「危険な行為だと理解しながらも多額な金銭を求める奴、自尊心を満たす為と物珍しさから集めることを止められない奴……そんな奴らのお陰で危険性を帯びた古代魔導具は常に社会の裏で行き来しちまっている」

 社会の表舞台である社交界に携わり続けてきたクリスティーナは裏社会について詳しく知らない。
 だが裏社会の者――法に背き、己の利益の為であれば手段を選ばない様な輩と、彼らと少なからず繋がりを持つ裕福層の者達。彼らの立場が決して褒められるものではないことだけは察しが付いた。

「公に禁止していても裏でこそこそと動く奴がいるなら意味がない。だからそんな奴らをひっ捕らえる為、社会の裏で暗躍する組織が必要となったのさ」

 つまりは治安維持の一端を担う組織という事だろう。
 それも秘密裏に結成された、裏社会専門の国家機関である。
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